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29-4

 夜が近い時間帯になって、コウエン氏が事務所を訪れた。仕事帰りに寄ったらしい。


「お時間を割いていただいているわけですから」


 と言いつつ、コウエン氏は茶封筒をテーブルに置いた。わたしは腕を組み「ふーむ」と唸った。


「どうかされましたか?」

「いえ。報酬をいただくほどのことはしていないなと思いまして」

「でも、受け取ってください。なんだかご迷惑をかけてしまっているようですし」

「迷惑だなんて考えていませんけれど、わかりました。頂戴します」

「そうしてやってください。それで、女房は何か言っていましたか……?」

「早速、申し上げますね。奥様は不倫されているようです」

「えっ」

「まあ、驚かれるのも無理はありません」

「本当なんですか?」

「ええ。お相手は隣に住まう男性だそうです」

「そうでしたか……」

「何か、その素振りみたいなものはなかったんですか?」

「まったく気付きませんでした」

「貴方がくだんのポールダンサーにうつつを抜かしていたからかもしれませんね」

「否定はできません。あの、やっぱりもう、引き返せる段階は過ぎていますよね?」

「わたしはそう思います。結婚したことがない小娘に何がわかるんだ。奥様にはそんなふうに言われてしまいましたけれど」

「女房がそんなことを? それはすみません」

「いいんですよ。事実ですから」

「決断しました」

「離婚されるんですね?」

「はい。お互いのためには、それが一番いいでしょうから」

「昨日は平手を見舞ってしまい、申し訳ありませんでした」

「いえ。なんにせよ、私に落ち度があったと考えています。私がまっとうな夫でありさえすれば、こんな事態にはならなかったはずですし」

「そうかもしれません。ところで、ぶってしまった罪滅ぼしと言ってはなんですけれど、そのポールダンサーさんが勤務されているところにご一緒しましょうか?」

「えっ。それは、またどうして」

「わたしがいれば、なんらかの形で後押しをできるんじゃないかな、って」

「そうかもしれませんね。何から何まですみません」

「離婚の協議に決着がついたら、またお越しになってください」

「わかりました。その際はまた、よろしくお願いいたします」


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