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28-3

 夜。初老とおぼしき男性のダンボールハウスに迎え入れてもらった。ハウスの中央にはどこかで拾ってきたのだろう、ボロの丸いちゃぶ台が置かれていて、その上ではろうそくが灯っている。


 わたしはテーブルの前に座った。向かいには男性。


「災難だよ、まったく。世間様には迷惑をかけないように生きているつもりなんだけどなあ」

「安心してください。また現れるようなら、わたしがぶちのめしてやりますから」

「メイヤちゃんはそんなに強いのかい?」

「ええ。強いですよ」

「確かに、がっしりしてるもんな」

「その点は少し気にしています。鍛えているうちに腕も太くなっちゃいましたし、太もももふくらはぎもガチガチですから」


 外から「おらぁっ! じじいども。今日も来たぜぇっ!」という大声。おいでなすったらしい。途端、男性は部屋の隅に引っ込み、頭を抱えた。ぶるぶると震え出す。


 わたしはゆっくりと外に出た。ホームレス狩りとでも呼ぶべきか。そんな連中と対峙する。


「んだあ、テメーはっ!」


 先頭に立つ若造が怒鳴るように言った。男ばかりで計五人。いずれも角材を手にしている。


 彼らのうちの一人が、「おっほ、綺麗なねーちゃんじゃねーか」と言った。「ヤらせろよ。そしたらじじいどものことは勘弁してやんよ」と阿保みたいなことを述べた。


「貴方達みたいな馬鹿にヤらせてあげるつもりなんてないわよ」

「言ってくれるじゃねーか。こちとら、角材持ってるのが五人だぜ?」

「それでも貴方達は負けるのよ」


 五人は、わっと襲い掛かってきた。先頭の一人を殴り飛ばす。次の瞬間だった。横に回り込んだ男に角材で頭をぶたれた。死角に入っていたので防ぎようがなかった。ボルサリーノが落ち、側頭部からだらりと出血する。


 ぶってくれた男の顔にはにやにやとした笑みが貼り付いていたのだけれど、わたしにローキックを見舞われると、「ぎゃああっ!」と叫んで地面に転がった。ちょっと力の加減を間違ったかもしれない。折れたかもしれない。


 残りは三人。うち、二人をあっという間に駆逐する。最後の一人はしりもちをつき、臆した様子で後退する。


「わ、わかったよ。わかった。もうじじいどもを襲うのはやめる。だからゆるしてくれよ」


 懐から抜き払ったオートマティックを、わたしは敵に向けた。


「や、やめろよ。やめてくれよ」


 震える声でそう訴えてくる若造に向け、わたしは「バァンッ!」と発砲音を模した声をはなった。途端、相手は気絶した。集団でなければ喧嘩もできない。そんなヤツ、わたしは大嫌いだ。


 銃を懐におさめると、心配顔を浮かべるおじさま達が近付いてきた。そのうちの一人が言った。


「メ、メイヤちゃん、大丈夫かい?」


 わたしは左の側頭部に手をやる。やっぱりどろりと血が出ていた。


「大丈夫です。鍛えていますから」

「頭は鍛えようがないだろう?」

「あはは。そうですね」

「早く病院に行ったほうがいい」

「こんな時間にやっていませんよ。明日にでも診てもらいます」

「メイヤちゃんは神様みたいなヒトだね」

「そうですか?」

「ああ。わしらにとっちゃ、間違いなく神様だ」


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