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心配させまいと

 じゅうじゅうと食欲のそそる音を立てながら、焚火の傍に刺した肉串を時たま回転させるサウル。

 塩と香辛料を振りかけてあるだけの野趣あふれる食べ方ではあるが、もしかしたらこれがいちばん美味しく食べられる方法だと思えてしまう俺もまた、ヴェルナさんと良く似た思考をしているのかもしれないな。


「やっぱ、この食い方がいちばん楽でうめぇな!」

「調理人としては否定したいところだが、確かに美味いよな。

 いっそ炭くらいは持ち歩くべきだろうか……」

「ハルトもじゃんじゃん食えよ!

 そんなんじゃ喧嘩売られまくるぞ!」

「もう2度も売られたよ。

 うち1組からは殺意を向けられた」


 イノシシ肉を味わいながら話すと、呆れたようにふたりは答えた。


「なんだ、経験済みかよ。

 っていうか、お前に喧嘩売る馬鹿がいたんだな……」

「まぁ、見た目で言えば強そうに見えない優男だからな、ハルトは。

 もっと俺みたいに筋肉をがっつり付けねぇと舐められんぞ」

「俺の顔で体に筋肉つけたら舐められないのか想像してみろよ」

「「ぶはははは!!」」

「だろ?」


 豪快に笑われたが、その姿を連想するだけで俺も爆笑するだろうな。


「まぁ、必要以上の筋肉は動きの邪魔になるからな。

 俺は速度重視を維持したいから、つけられないんだよ」

「人にはそれぞれ合う"型"ってのがあるからな。

 アタシは攻撃と速度を重視した上で持久力も高めたが、サウルはゴリゴリの脳筋剣士だから速度を捨ててるよな」

「捨てたわけじゃねぇ。

 出せなくなっただけだ」

「それ、同じじゃないか?」

「そうとも言うが、これはこれで対人戦には効率いいんだぞ」

「アタシはサウルと違って殺意向けられた時点で捕縛を考えなくなる。

 そうなるとギルドでお小言が待ってるし、いいことも少ねぇんだよな……」

「悪党ってのは可能な限り捕縛できねぇと色々と問題になるからな。

 ヴェルナの行動も間違いじゃねぇが、残党を取り逃がす可能性も相当高まる。

 できれば敵対した時点ですべての連中を捕縛する必要があるんだよ」


 そうしなければ新たな犠牲者が生まれるからな。

 サウルさんは真剣な表情に変えながら言葉にした。


 人と対することとは無縁の旅をしたいと思ってるが、すでに2度襲われている。

 3度目は未遂だったが、今後もないとは言い切れるはずもないからな。

 町の外では十分に警戒をしながら進んだほうがいいだろう。


 とりあえず、パルムまではふたりがいてくれるからな。

 対人戦に心得があるならこれほど心強いものはない。



 肉を摘まみながら色々な話をしていると、思わず眉間にしわを寄せる内容をサウルさんが話した。


「……じゃあ、リクさんがメッツァラを目指してた理由って……」

「名前までは知らないが、十中八九、間違いないだろうな。

 まさかトルサからの馬車で乗り合わせたとは思わなかったが」


 随分と衝撃的な話だ。

 いや、だからこそ俺は"リクさんの力にはなれない"と確信した。


 "俺もちょいと関わっちまってな"、か。

 そんな程度ではなかったことくらいは気配を読めば理解できたが、彼自身が助けを求めていない以上は力になれないと思っていた。


 だがどうやら彼は、そういったことを含めて俺に心配させまいとしていたのか。

 "俺自身が"着かないといけねぇ"、とも言っていたが、これで納得がいった。


 彼は彼自身の手で"落とし前をつけに"行ったのだろう。

 そこに他者が介入する行為は土足で踏み入るのと同じになる。


「……まさか、そんなことになってるとは……」

「良くある話ってわけじゃねぇけどよ、アタシも思い当たる節があるよ。

 武術習ってりゃ、その力を別のものにぶつけたくなる馬鹿が出てくるんだ。

 アタシらは武術家で、そのおっさんは鍛冶師だった。

 そんな小さな違いしかねぇと、アタシは思うよ」


 焚火にあてた肉串を引き抜き、口へと運びながら美味い美味いと言葉にするヴェルナさんだが、その瞳はとても物悲しい色をしていた。


 彼女も似たような話を聞いたんだろう。

 いや、ヴェルナさんじゃないが、武術を習っていれば耳にする話だ。

 力の使い方を間違えた馬鹿を正すのも、その流派の門下か師だからな。

 それが彼の場合は鍛冶の師匠と弟子に変わっただけのこと。


「……弟子の不手際は、師匠の責任だからな……」

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