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EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~  作者: 青空顎門
第二章 ガイノイドが管理する街々

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097 抜け道

「おとー様っ! 全力稼働します!!」


 どうやら断片(フラグメント)の劣化コピーは、数を束ねることによってオリジナルに迫るような威力を出すことができるらしい。

 その負荷を直に受けとめたフィアは焦燥に塗れた声で叫び、軋み上げるような甲高い高周波音が発生する程に胸のジェネレーターを駆動させ始めた。


「リミッター解除! 出力全開!!」


 合わせて、マグ達を守るシールドの輝きが急激に増して強固になっていく。

 とは言え、この状態は長く維持させることはできない。

 フィアの冷却能力が追いつかず、下手をすれば熱暴走してしまうためだ。

 だからマグは即座に彼女の傍に寄り、肩に手を触れて超越現象(PBP)を発動させた。

 そして、その復元の力を応用してフィアの身体を万全な状態に戻し続け、安全稼働できる限界以上の出力を無理矢理継続させる。

 おかげで、数十体の人型機獣から一点集中するようにして放たれた光線によってシールドを破られることなく、一先ず均衡を作り出すことができた。

 しかし――。


「……まずいわね」


 その状況を前にして、ドリィが険しい表情と共に告げる。

 同期を逆手に取られる攻撃を防ぐための対策、レーザービームライトの波長を絶え間なく変えるという手段も破られ、攻撃することができない状況。

 しかも、敵もまた相応のシールドで守られているため、断片(フラグメント)による影響を受けていない攻撃の有効性は極めて低い。

 膠着を保とうとしてもジリ貧になってしまうだけだ。

 実際、人型機獣達はシールドを稼働させてにじり寄ってくる。

 シールド同士をぶつけ合わせてフィアを消耗させ、レーザーを防ぐのに割くことのできるリソースを減らそうと言うのだろう。

 そのようなことになれば、敵の攻撃を防ぎ切れなくなってしまう可能性が高い。

 あるいは、退路がある内に撤退を選ぶべきかもしれない。


「…………近くに大型のエレベーターがあったデスね」


 そんな中、オネットが確認するように小さく呟く。


「この機獣達を運搬するためのものでしょう」

「なら、アテラさん」

「…………成程。この状況では、それが最善ですね」


 迷宮遺跡の管理コンピューターに内容を気取られないようにするためだろう。

 二人は要となる部分を互いの電子頭脳内でのみやり取りをし、それからアテラは納得したように一つ頷いてマグに視線を向けた。


「旦那様。私に任せて下さいますか?」

「策があるのか?」

「はい」

「……危険な橋を渡る訳じゃないよな?」

「状況が状況なので危険ではないとは言えません。しかし、旦那様のものであるこの身を傷つけるような真似はしません」


 マグの問いかけに、アテラは当然のこととして落ち着いた口調で応じる。


「……分かった。頼む」

「承知しました」


 彼女が頷いた直後、頭部に備えられた歯車が回転し出した。

 先史兵装(PTアーマメント)【アクセラレーター】。

 使用者の時間を加速させる装置だ。


「フィア。同期を」

「はい! おかー様!」


 そしてアテラの指示にフィアが答えた瞬間。

 アテラの姿がぶれ、目の前から消え去る。

 どうやらマグ達を覆うシールドの範囲から出たようだ。

 この大広間に来るまで【アクセラレーター】は使用していない。

 人型機獣も、この迷宮遺跡の管理コンピューターも、今この瞬間だけは彼女の姿を追うことはできないはずだ。

 ……しかし、彼女が持つ武装では人型機獣達の防御を突破することはできない。

 どれだけ加速しようとその事実が変化することはない。

 よしんば破壊することができたとしても、また新たな人型機獣が大量に生産されて襲いかかってくるだけだ。


「どうするつもりなんだ? アテラ……」


 信頼はある。

 だが、敵を欺くために情報共有ができず、どうしても心配が声色に滲む。


「ん?」


 数秒後。唐突に光線がやんだ。

 何があったのかと目を凝らす。

 すると、人型機獣達は一斉に一方向へと移動しようとしていた。

 目の前の侵入者よりも重大な脅威に感づいたかの如く。

 しかし、それらはまたすぐさま行動を変える。

 突如として動きをとめ、ぐるりと再びマグ達の方を向き――。


「な、何だ? 一体……」


 忠誠を誓う騎士の如く一糸乱れぬ動きで跪いた。

 その異様な光景を前にして、マグは戸惑いを抱かざるを得なかった。

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