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EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~  作者: 青空顎門
第二章 ガイノイドが管理する街々

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093 魂という名の情報群

「一体どこで、どんな……?」

「それを明かしてしまったら報酬にならないのである」


 マグが思わず呟いた問いを受け、ローフェが若干苦笑気味に言う。

 当たり前のことだ。

 しかし、個人的な一大目標だっただけに無意識に口から出てしまった。

 そう自分自身で理解して尚、情報を知りたいと逸る気持ちは募るばかりだが。


「ですが、それが本当に私達の望む情報かどうか、確度は如何程でしょうか」

「ふむ…………まあ、概要程度であれば伝えても構わないであろう。それを以って君達の方で判断して欲しいのである」


 マグの代わりに尋ねたアテラに、ローフェは少し考えてからそう告げた。

 一言一句聞き逃さぬように、一層意識を集中させる。

 そんなマグに一度視線を向けてから、ローフェは再び口を開いた。


「その研究とは、人間から電子頭脳へ、電子頭脳から人間への魂の移動である」

「た、魂……?」


 いきなり何とも胡散臭い言葉が飛び出てきて、マグは眉をひそめてしまった。

 少なくとも元の時代では、そうした霊的な要素は信用性が失墜していたからだ。


「ああ……魂と言うと誤解を招くかもしれないのである。個を個たらしめる情報群と言った方が適切であるかもしれぬな」


 言い換えたローフェに、そういう意味ならばと頷いて理解を示す。

 人格。記憶。物事の判断基準。

 自分を自分として定義できる何かを網羅したもの全て。

 それを既に存在していた単語と照らし合わせ、魂と呼んだ訳だ。


「そう言えば、私達の時代には脳とそれに近い機能を持つ電子頭脳は本来観測困難な波動生命体を捉えて閉じ込める、なんて説もありましたデスね」


 オネットが思い出したように告げたそれはある種の空想に過ぎないだろう。

 だが、ローフェが口にした定義であれば、人間には人間の、アンドロイドにはアンドロイドの魂が存在すると言っていいのかもしれない。


「何にせよ、その街では魂なるものの研究が行われ、人間を機人にする、あるいは機人を人間にする技術を再現する研究が行われているのである」

向学の街・学()園都市メイア()では行われていないのですか?」

「勿論、我が学園でも同様のテーマを取り扱っている者もいるにはいるが……かの街に比べるとさすがに盛んではないのである」


 どうやら、そもそも研究の規模が小さいようだ。

 学園都市を名乗るからには、学問に特化した街であることは間違いない。

 しかし、広く様々な分野を網羅しているがために、ある特定の内容に限定すると最先端とは言いがたい状況に陥っている部分もあるのだろう。

 世の中の需要という要素もある。

 それを裏づけるように。


「今の時代、研究と言えば原炎擬装(PTRデバイス)に関するものがほとんどデスからね」


 オネットがそう補足を加えた。


原炎擬装(PTRデバイス)?」

出土品(PTデバイス)を分析し、現存する技術のみで再現した装置のことである。迷宮遺跡に頼り切りでは、万一機能停止した時に目も当てられないことになるからな」


 確かにとマグは納得を示した。

 誰かが仕組みを十全に理解して製法を確立していなければ、オーパーツのように成り果ててしまい、後の世に継承していくことができなくなる。

 半端に未来の技術を残したこの時代、この世界。

 かつての文明の残滓を全て取り払われてしまったら、大きな混乱が生じてしまうことは目に見えている。


「ともあれ、報酬は君達の望む技術を研究している街の情報と紹介状でよいであろうか。あそこは少々排他的であるからな」


 逸れた話題の軌道修正をするように、ローフェが改めて問いかけてくる。

 人間から電子頭脳へ、電子頭脳から人間への魂の移動に関する研究を行う街。

 もっとも、あくまでも研究段階。そうである以上、そこに行けば即座に目的を達成できるという訳ではないのは間違いない。

 それこそ、先程話題に出た原炎擬装(PTRデバイス)の製作のような状態だろう。

 とは言え、その機能を有した出土品(PTデバイス)の情報を持っている可能性がある。

 だから、マグ個人としては今すぐ場所を聞き出して向かいたいぐらいだった。


「報酬は問題ありません。ですが、攻略する迷宮遺跡についてもう少し詳しく教えて下さいませんか?」


 そうしたマグの心情を察してか、依頼を受ける方向で慎重に中身を問うアテラ。

 対してローフェは一つ頷いてから口を開き――。


「あそこは侵入者が有する超越現象(PBP)先史兵装(PTアーマメント)を尽く再現した機獣が襲いかかってくる、恐るべき迷宮遺跡である」


 そう重々しい口調で告げた。

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