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EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~  作者: 青空顎門
第二章 ガイノイドが管理する街々

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084 一時停止

「最後の最後まで機獣は出てこないようですね」


 共生の街・自然都市ティフィカ近郊で発見された迷宮遺跡の最深部。

 各種環境のシミュレートを観察しているかのようなモニタールームの中。

 しばらく警戒と共に内部を注意深く観察していたマグ達だったが……。

 アテラが呟いた後も特に変化や異常は生じなかった。

 どうやら、これまでの迷宮遺跡にいたような中枢の守護者は存在しないようだ。

 結局のところ、侵入者を排除するシステムはここには設けられていないらしい。

 環境シミュレーションを繰り返す機能が、結果的に罠として作用している感じだ。


「……こういうところもあるんだな」


 そんな迷宮遺跡の最奥の状況に、割と消耗していたマグは正直ホッとしていた。

 機獣に襲われることこそ一度としてなかったものの、一部屋ごとに環境が一変していく状況に精神的な疲れを感じずにはいられなかったからだ。

 もし【エクソスケルトン】のような環境に適応するための装備を持たずに挑んでいたら、肉体的な負担も相当のものだったはずだ。

 最初の砂漠の時点で尻尾を巻いて逃げ帰らざるを得なかったに違いない。

 その上で更に機獣が跋扈していたり、この最深部にドリィ並みの敵が待ち受けていたりしたら、迷宮遺跡の攻略難度は跳ね上がっていたことだろう。

 ああいった特殊環境での戦いを余儀なくされる状況は可能な限り避けたい。


 いずれにしても。この迷宮遺跡。

 生半可な敵対者よりも大自然の方が余程人類にとって脅威となる。

 そのことを思い出させようとしているかのようにマグには感じられた。


「さっさと機能を停止させて帰りましょ」

「ドリィちゃん。一時停止、ですよ」


 飽き飽きした様子で告げられたドリィの言葉に、フィアが訂正を入れる。

 この街の管理者たるタリアが望んだのは恒久的な機能停止ではない。

 あくまでも一時的なものだ。

 問題なく、過不足なく再起動できるような形でなければならない。


「この類のものなら、私の力でうまくシャットダウンさせられそうデスが……」


 そこへオネットが自己主張するようにアテラの中から声を発する。

 支配の判断軸(アクシス)・統率の断片(フラグメント)によって強化された彼女の超越現象(PBP)は、出土品(PTデバイス)やその他装置を自らの制御下に置くことができるものだ。

 勿論、何でもかんでも操作可能な訳ではない。

 オネット自身が対象の仕組みを把握できているものに限られる。

 この迷宮遺跡の中枢のON、OFFぐらいは可能なようだが……。

 これが時空間転移システムともなると彼女も原理には精通していないし、強制停止したら最悪世界が吹っ飛ぶ可能性もある。

 リスクを抑えて操作するには、理解に特化した超越現象(PBP)が必須だ。

 だからこそ、秩序の街・多迷宮都市ラヴィリアの管理者たるメタはその類の断片(フラグメント)を探している訳だ。オネット達の属する勢力もまた。

 ……それはともかくとして。


「そうするとオネットの存在がバレかねません」


 アテラが言った通り、この場では彼女の力の痕跡を残すのは芳しくない。

 その能力をアテラが得たと見なされるのも避けたい。

 今回は別の方法を取る必要がある。

 だからマグは、自分達が持つ力や先史兵装(PTアーマメント)を頭の中に並べて思考を巡らせた。


「…………物理的に破壊するのが手っ取り早いか」


 余りスマートとは言えない気もするが、一番単純で一番簡単だ。

 パーツの大部分が残ってさえいれば、マグの超越現象(PBP)で復元できる。

 再起動可能というタリアからの要求も満たせるはずだ。

 その判断の是非を問うように全員を見回す。

 すると彼女達は首を縦に振って応え、マグは頷きを返した。


「オネット。自己修復機能は――」

「ここも他の迷宮遺跡と同じく、中枢が停止すればとまるデスよ」


 迷宮遺跡中枢から情報を読み取っていたらしく、先回りして答えるオネット。

 どこか別の場所に隔離されているといったことはないらしい。

 ならば、後は徹底的に破壊するだけだ。


「じゃあ、アテラ、フィア。頼む」

「承知しました」

「はい! おとー様!」


 マグの要請を受け、二人は即座に頷いて早速行動を開始した。

 アテラが【フロートバルク】でスカート(装甲板)を分離して浮かせると同時に、フィアが部屋の中に存在する物体を押しのけるようにシールドを拡張させていく。

 ドリィは見学。

 単純に破壊するだけなら最も適しているが、彼女の力は対象を消滅させる。

 さすがに中枢全体からすると僅かだろうから割合的には問題ないはずだが、復元できなくなるリスクは少ない方がいい。


「では」


 そしてアテラの小さな呟きを合図にタングステンの板が空間を舞い、コントロールルーム染みた最奥の部屋の悉くを破壊していく。

 自己修復はシールドによって阻まれ、徐々に破壊の爪痕が大きくなっていく。

 やがて。空間に響いていた駆動音がやみ、自己修復機能も停止したようだった。


「ミッション達成、デス」


 自身の超越現象(PBP)を以って調べたらしく、保証するように告げるオネット。

 合わせて頷くアテラを見て、それが間違いないことを確認する。


「よし。帰ろうか」


 特に出土品(PTデバイス)が生産されている様子もない以上、長居をする理由はない。

 さっさと来た道を戻っていく。

 すると、各部屋の温度や湿度はまだ大きく変化していなかったものの、暴風雨やブリザードは完全にとまっていた。

 おかげで往路の半分以下の時間で迷宮遺跡の出入口に至る。

 そのまま恵みの森に出ると……。


「うお、眩しっ」


 木漏れ日にもかかわらず、最初の砂漠の部屋を思い出すような強烈な日差しを受けてマグは思わず手でひさしを作った。

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