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EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~  作者: 青空顎門
第二章 ガイノイドが管理する街々

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081 お飾りと案内人

「これ、ウィード。失礼じゃぞ」


 不愉快そうにアテラを睨みつける男に、タリアは眉をひそめて苦言を呈す。

 しかし、その口調にはどことなく弱さのようなものが感じられた。


「他にいなかったのか?」


 対するウィードは全く反省する素振りを見せることなく、街の管理者であるはずのタリアに荒っぽく尋ねる。

 まるで自分の方が立場が上とでも言わんばかりだ。


「可及的速やかに迷宮遺跡を停止したいと言ったのは、お主じゃろう?」

「……ふん。まあいい」


 困ったようなタリアの問いかけに不機嫌そうに鼻を鳴らした彼は、今度はマグを睨みつけて口を開いた。


「この街に自然に反したものは必要ない。あの薄汚い迷宮遺跡を潰したら、その鉄屑を連れてとっとと出ていって貰う」

「な――」


 その言い様に、瞬間的に頭に血が上る。

 拳を握り締める。


「旦那様」


 だが、アテラにとめられ、マグは深呼吸して自分の感情を抑えた。

 彼女もまたディスプレイを赤く染めて怒りを滲ませてはいるが、この手の存在とは正面切ってやり合うべきではない。

 平行線のまま拗れるだけだ。

 過去、パワハラ上司相手に失敗して不利益を被った者達を実際にマグも見てきた。

 反撃しようとするのなら、相手の隙やウィークポイントを見出して第三者を利用しなければならない。逆恨みへの対処も不可欠だ。

 ……勿論、分かっていても中々スマートにできることではないが。

 それはともかくとして。


「喧嘩腰になるでない。外の者に依頼を出す際に飲み込んだことじゃろう」


 どこか焦ったようにタリアが注意をする。


「……裏門で待つ。お前達は黙って仕事を果たせばいい」


 しかし、ウィードはそれを無視し、拝殿を出ていってしまった。

 全く以って街の管理者に対する敬意というものが感じられない。

 一体どうなっているのかと視線でタリアに問う。


「あ奴は、この街の実質的なリーダーなのじゃ」

「リーダー? タリアさんは……」

「妾は飾りに過ぎん。いつの頃からだったか、この街に暮らしていた住民は機械的なものを徹底的に厭うようになってな。思想も先鋭化してしまったのじゃ」


 緑に溢れた環境で緩やかな暮らしを行う。

 その中で機械の類を削ぎ落とせるだけ削ぎ落していったのだろう。

 それに合わせて思想が変化していったのか、元々そうだったのかは分からないが。


「それじゃあ、アンタも排除されちゃうんじゃないの?」

「いずれはそうなるかもしれぬ。じゃが、今のところはこうしてここにいることを認められている。長く街を管理してきた妾を尊重してくれる住民もおるのでな」


 彼女を蔑ろにしたら、コミュニティ内の不和に繋がりかねないというところか。

 ウィードにとっては、目の上のタンコブのような存在かもしれない。

 彼があのような態度を取る理由はそこにあるのだろう。


「そんな街、離れちゃえばいいのに」

「そういう訳にはいかぬ。人間の生活を見守ることが妾の役目じゃからな。お主とてガイノイドの身。理解できるじゃろう?」

「…………そうね。ま、アタシの場合は目覚めた時には本来の役目は果たせない状態だったけど。逆に少しでも何かが残ってたら、頑なに拘ってたかもしれないわ」


 ドリィはタリアの問いかけにそう応じると、マグ達を見て「今はここがアタシの居場所で、皆の敵を排除するのが役目よ」と続けた。

 それこそが新たに己に定めた存在意義と告げるように。

 そんな彼女に微笑んで頷く。

 タリアはその様子をどこか羨むように眺めていたが、区切りをつけるように一つ深く息を吐く真似をしてから再び言葉を発した。


「……そろそろウィードの奴が痺れを切らす頃じゃ。あ奴の後に続いて迷宮遺跡に向かってくれ。今回の件、頼んだぞ」

「はい。では、失礼します」


 軽く頭を下げてから彼女に背中を向けたマグ達は、拝殿を出ようとした。

 その直後。


「たとえ全て幻想に過ぎぬと突きつけることになろうとも、それが人間の選択ならば是非もない。妾の言葉など今更届かぬだろうからな」


 意味深な呟きが耳に届いたが、マグ達はそのまま裏門へと向かった。

 その意図について教えてくれるのは、全てが終わってからのことだろう。

 そうして街の出入り口に至ると、ウィードがイラついた様子で待っていて……。


「遅い。とっとと行くぞ」


 彼は一つ文句を言うと、マグ達の返事を待たずに街の外へと出ていった。

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