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EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~  作者: 青空顎門
第一章 未来異星世界

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070 稼いだ時の果て

 メタから時間稼ぎの指示を受けたマグ。

 そして、マグ達を足どめせんとしている様子のオネット。

 図らずも互いに方向性が一致しているような状態だが、眼下では今も尚、無数の機獣が城壁を突破しようと防衛隊を攻め立てている。

 また、オネットが実際に己の意思をどこまで明らかにしているか分からない。

 いつ方針を転換して無秩序に暴れ出し、周囲に被害を撒き散らすか知れない。

 目の前に立ちはだかるこの機械仕かけの竜。

 倒すことができるのであれば、それに越したことはないだろう。


「さあ、ティアマトとたくさん踊ってあげて欲しいのデスよ」


 空に響くオネットの煽るような言葉。

 それを合図に、滞空していたティアマトが翼を羽ばたかせ始めた。

【フロートスラグ】と似た効果を持つ出土品(PTデバイス)を利用して浮遊していると思われる以上、その行動に機能的な意味はないはずだ。

 こちらもまた、今から戦闘を再開するという意思表示に違いない。


「KIIIAAAAAAAAAA!!」


 その証明の如く、ティアマトは機械的な咆哮と共に空を翔けた。

 巨体に似つかわしくない機動性でマグ達に迫ってくる。

 鱗状の反射板もまた周囲に展開され、本体との位置関係を保って追従してくる。

 あれらが存在する限り、ドリィのレーザーで牽制することは難しい。

 彼女自身もまた攻撃を躊躇い、相手を睨みつけることしかできずにいた。


「アテラ!」

「はい! 旦那様!」


 となれば、光線ではない遠距離攻撃。

 エネルギーの塊。あるいは実体弾しかない。

 そうした意図を込めた呼びかけに、アテラは即座に理解を示して武器を構えた。

 花束を模したような銃、先史兵装(PTアーマメント)【ガンローゼス】。

 ハンドガンを一回り大きくしたぐらいの見栄え重視の形状だが、対物ライフルを遥かに超える速度で劣化ウラン弾以上の硬度を有する実体弾を撃ち出せる。

 そう表現するとマグとしては凄い逸品に思えたが、これが製造された当時としてはハンドガンのカテゴリーの中では割と普通の性能らしい。

 恐らく、反動に耐えられる【エクソスケルトン】的な強化外骨格を装備した兵士やアンドロイドが使用する前提で設計されているのだろう。

 想定される攻撃対象もまた。


「シールド、瞬間限定同期します!」


 フィアの声を受け、即座に引き金を連続して引くアテラ。

 先んじて先史兵装(PTアーマメント)【アイテールスラッグ】で原炎(アイテール)の塊を撃ち放ったマグの隣で、発砲音と言うには余りに馬鹿げた轟音と共に弾丸が射出される。

 しかし――。


「甘いデス」


 対するティアマトは再び反射板を射線上に動かし、銃撃を防いでしまった。

 そればかりか、【ガンローゼス】の弾丸を跳弾させてマグ達を狙う。


「……おや? 中々やるデスね」


 しかし、それは光の膜に阻まれて届かない。

 フィアはアテラが撃った銃弾が通過する瞬間だけ通り道の同期を行い、その後すぐに同期を解いて跳弾に備えていたようだ。

 超音速とは言え、レーザー光線に比べれば遥かに遅いが故に可能な方法だろう。


「デスが、弱いデス。すぐに追いついてしまうデスよ!」


 アテラは足場となっているタングステンプレートを【フロートスラグ】で操り、迫り来る機竜から逃げながら射撃を続ける。

 だが、攻撃の威力が足りない。

 一応反射板の表面を傷つける程度はできていたが、すぐ無傷のそれが入れ替わる。

 傷を負ったものは本体に戻り、そこで修復されている様子。

 結局【ガンローゼス】では何枚かの反射板の配置を変えることができるだけだ。

 それでも……。


「そこだ!」


【アイテールスラッグ】ならば鱗状の盾を大きく弾き飛ばすことができ、二人の攻撃を連携させれば射線を確保することも不可能ではない。


「ドリィ!」

「ええ!」


 ティアマトへと続く一筋の道に、レーザービームライトが煌めく。

 それによってティアマトの首が切断され……。

 付近に貯蔵されていたらしい可燃性の燃料が放出され、空に炎の花を咲かせた。

 一瞬、その爆炎に視界が遮られる。


「やったか?」


 思わず呟いた言葉はフラグ以外の何ものでもない。

 頭部を失った機竜は炎の中を潜り抜け、速度を緩めず突っ込んできた。

 相手はあくまでも機械。生物ではない。

 頭を潰せば終わりとは限らない。


「うあっ!?」


 直後、シールドに衝撃が走る。

 ティアマトがマグ達の眼前に躍り出て、その両手でシールドを挟み込んでいた。


「頭は単なる武器デスよ。中枢がどこにあるかは……まあ、見れば分かるはずデス」


 ヒントを与えるように告げるオネット。

 マグは体勢を立て直し、頭をなくした機械の竜を改めて観察した。

 近くから見ると、明らかに鱗が反転して鏡面が表になっている部分があった。

 即ち、ドリィのレーザーから守らなければならない場所だ。

 そこにティアマトの中枢があると見て間違いない。


「…………それにしても、遅いデスね。何かイレギュラーが生じたのかもしれないデス。そろそろ足どめは終わりにしないといけないかもデス」


 オネットは存在しない竜の顔を街の方へ向けるようにしながら呟く。

 意味は分からないが、どちらにしても戦況に有利に働く話ではないだろう。

 マグはそう判断し、攻撃を優先して【アイテールスラッグ】を構えた。

 原炎(アイテール)の塊でなら中枢に衝撃を通すことができるかもしれない。

 しかし、引き金を引かんとした正にその瞬間。

 シールドを掴んだままティアマトが急加速し、照準が大きくブレてしまう。


「ちょっと揺さぶらせて貰うデスよ」


 それから機竜はシールドを両手で掴んだまま激しくシェイクし始めた。

 中のマグ達はなす術もなく光の膜に叩きつけられ、容器に入ったピンポン玉のように何度となく跳ね飛ばされてしまった。

 姿勢を制御することができない。

 衝撃と急激なベクトルの変化に意識が朦朧としてくる。

 そんな中。

 視界の片隅で端末が新たなメッセージを表示した。


「しょ、衝撃に、備えろ?」

「……何を言ってるデス?」


 そして途切れ途切れのマグの言葉に、オネットが不審そうに問うた直後。

 火山が噴火したかの如く巨大な砲撃音がした。

 かと思えば、ティアマトが中枢付近から爆発四散して……。

 マグ達はそれに巻き込まれ、シールドごと吹き飛ばされてしまったのだった。

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