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EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~  作者: 青空顎門
第一章 未来異星世界

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060 消去の断片

「ところでクリルさん。いくつか先史兵装(PTアーマメント)を購入したいのですが……」

「ん? ……構わんが、我の店で取り扱っているものは値が張るものが多いぞ?」

「この前のルクス迷宮遺跡探索と、未踏破領域での追加依頼の報酬がかなりおいしかったので多分大丈夫かと」

「ふむ。それで、何が欲しいのだ?」

「まずアテラ用に盾のようなものと、銃のような遠距離武器を」


 マグの返答を受け、クリルは後ろに控えるアテラを一瞥してからフィアとドリィに視線を移し、納得したように頷いた。


「アテラがシールド外に出る際の身の守りと、シールド内からの攻撃手段か」

「はい。特に前者はドリィのレーザーにも耐え得るものだと尚いいのですが」


 今後アテラが【アクセラレーター】を使用して戦う時には、まず間違いなくあの光線が戦場に張り巡らされているはず。

 そんな危険の中をアテラは動き回らなければならない訳だが……。

 さすがに時間まで操作した速度に、ドリィの方で対応して貰おうというのは酷だ。


「どうでしょうか」

断片(フラグメント)持ちの攻撃に耐え得るとなると、同じく断片(フラグメント)を内在したものでなくば防ぎ切れん。さすがにそれは金で買えるものではないぞ」


 難しい顔で言ったクリルは、しかし、少し考えるような素振りを見せた。

 しばらくして彼女は作業部屋の隅に置かれた棚――【コンプレッシブキャリアー】と似た収納力がある――に黙って近づくと、分厚い板状の物体を三枚程取り出す。

 その内、二枚は金属光沢があり、一枚はダークグレーでつやつやしていた。


「それは?」

「ちょっとした実験を行ってみようかと思ってな」


 クリルはそう曖昧に答えながら、それらを押しつけるようにアテラに渡す。


「フィアはシールドを張り、ドリィはそれをレーザーで撃て。アテラは【アクセラレーター】を使い、板を一枚ずつレーザーに差し込んで違いがあるか試してみろ」


 そんなクリルの一方的な指示に、三人は判断を仰ぐようにマグを見る。

 対してマグが頷いて応じると――。


「承知いたしました」

「分かりました!」

「まあ、いいけど」


 クリルに返事をし、各々求められた行動を取った。


「終わりました」


 一瞬姿がぶれた後にアテラが言う。

 いつの間にか彼女が手に持っていた板は全てに切り込みが入っていた。


「どうだった?」

「こちらは私の主観時間で貫かれるまで一秒強というところでした。こちらはその約半分以下。こちらも同程度です」


 アテラは金属、金属、濃い灰色の物体の順で掲げながら答えた。


「成程。そうなったか」

「ええと、耐熱温度が違う素材、とかですか?」

「それも一要素ではあったが、その違いは実験結果に影響していないようだ。レーザーとは言うが、ドリィのそれは高温で焼き切っている訳ではないらしい」


 クリルの結論に首を傾げていると、彼女は喜々として更に説明を重ねる。


「この灰色のは四千度以上の高温にも耐え得る耐熱セラミックス。これと同じぐらい速く貫かれているのは鉛。最も耐えたのはタングステンだ」

「三百度と少しで溶ける鉛と四千度以上に耐えるセラミックスが同等となると、確かに熱エネルギーが関わっているとは思えませんね」


 納得と共に補足を加えてしまったアテラに対し、クリルは少しだけ不満げに「うむ」と肯定してから続ける。


「加えてタングステンが最も優れているとなると、ドリィのレーザーへの耐久力は物体の密度で決まるようだ。この特殊なセラミックスの密度は鉛と同等だからな」

「密度……」


 単純に言えば、同じ空間にどれだけものが詰まっているか。

 よくよく考えてみれば、ドリィの力は断片(フラグメント)の影響だ。

 排斥の判断軸(アクシス)・消去の断片(フラグメント)

 その字面からして、対象を破壊しているというよりも物体を直接的に消去してしまっていると言った方が適切なのかもしれない。

 であれば、密度の高さが防ぐのに重要なのも頷ける。

 もっとも超スローモーションの中でようやく認識できる程度の差のようだが。

 ともあれ――。


「このタングステンで盾を作れば、【アクセラレーター】使用中に限り射線を一瞬遮るぐらいはできるだろう。強度も高い故、普通の盾としても有用だ。重いがな」

「単純に密度だけならオスミウムという手もありますが、あちらは希少金属な上に硬いだけで脆いですからね。……ですが、余り重いのはちょっと」

「うむ。分かっている。だが、それこそ出土品(PTデバイス)で解決すればいい話だ」


 アテラの懸念にクリルはそう答えると、作業部屋を出ていった。

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