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EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~  作者: 青空顎門
第一章 未来異星世界

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054 ドリィ

 状況を把握できず、動揺の色濃い少女型ガイノイド。

 そんな彼女に、まず何から説明すればいいかマグが考えていると……。


「落ち着いて下さい!」


 フィアが存在をアピールするように手を挙げ、大きな声で注意を引いた。

 対して人形の少女はそこで初めてフィアに気づいたのか、まじまじ彼女を見た。


「アンタ、旧式の護衛ロボットじゃない。アタシと同じメーカーの」

「はい! DFSV-7G-12Fのフィアです!」

「そうよね? 資料で見たことあるわ。でも、実際に動いてるとこは初めて見た」

「貴方はフィアより後の機体ですよね?」

「ええ。アタシは、軍用人型汎用戦闘ロボットMTSV-10G-15F-PR個体名ドリィ。アンタの三世代後の軍用機体…………の広報用カスタム機よ」


 ドリィと名乗った少女型ガイノイドは途中までは勢いよく、しかし、最後の部分はどこか恥ずかしそうにつけ加えた。


「広報用カスタム機?」

「そ。……でも、武装が全てイベント用のレーザービームライトに置き換わってて非武装であること以外は、通常の機体と何ら変わらないわ」


 フィアの問いかけに、誤魔化すように少し早口になるドリィ。

 だが、彼女の自己申告とマグ達が目にした性能は、大きくかけ離れている。

 あのレーザーは明らかにイベントで見かけるような演出用の機材ではなく、凶悪な殺傷力を持つ兵器以外の何ものでもなかった。

 それこそが断片(フラグメント)の持つ恐るべき能力なのだろう。


「何よ。その微妙な反応」

「ええと、その……」


 訝しげな視線を向けるドリィに、フィアは困り果てた子供が親に助けを求めるようにマグとアテラに視線を向ける。


「ん……まあ、いいわ」


 そんな先々々代の姉妹機のような存在の反応を目の当たりにして、ドリィはとりあえずマグ達が自身に害をなす存在ではないと判断したのだろう。

 彼女は少しだけ表情から警戒感を薄れさせ、それから復元されて最初に抱いた疑問に立ち返ったようだった。


「と言うか本当に、ここはどこなのよ。アタシ、MTSV-10G-15Fのコンペティションに向かう最中だったはずなんだけど」

「あ、あの、えっと……フィアと情報を共有することはできますか? 口で説明するよりも早いと思うんですけど」

「あー、そうね。ええ、大丈夫なはずよ。下位互換はあるから。お願いするわ」

「はい! じゃあ、早速!」


 同意を受け、フィアが嬉しそうに応じながら目の奥で光をチカチカさせ始める。

 すると、ドリィは一瞬遅れて「え?」と呆けたような声を出した。


「ちょ、これ本気なの?」

「改竄なしの生データです!」

「……ええ。ええ、そう。そうよね。三世代も前のアンタが、曲がりなりにも最新鋭機のスペックを持つアタシを欺けるはずないし」


 どこか混乱したように視線を揺らしながらも、最後には己の中の論理と照らし合わせて事実を受け入れるドリィ。

 彼女はフィアから得た情報を改めて吟味するようにしばらく目を閉じ、それから小さく嘆息しながら口を開いた。


「操られて暴走してたアタシを、アンタ達が救ってくれたのね。ありがとう」

「…………大丈夫か?」


 感謝を口にしたドリィの表情は切なげで、マグは心配になって尋ねた。


「まあ、さすがに知ってる人が誰もいないのは少し来るものがあるわ」


 彼女はそれに小さくフッと微笑んで寂しげに応じる。

 胸を掻き毟られるようなその表情を、誰も機械仕掛けの人形とは思わないだろう。

 マグは咄嗟に慰めの言葉をかけようとしたが……。

 この場ではより適任がいた。


「ドリィちゃん、フィアがいます! お姉ちゃんだと思って頼って欲しいです!」


 俯き気味のドリィの手を取って強く告げるフィア。

 見た目からすると明らかにフィアの方が小さく幼く、年下にしか見えない。

 単純なスペックでも劣っている。

 しかし、先に生まれた者として年長者の意識があるようだ。

 そんなフィアの言葉にドリィは一瞬キョトンとし、それから声を出して笑った。


「そうね。何より、助けてくれた恩には報いないとね」

「それは、俺達の仲間になってくれるってことでいいのか?」

「あら? つれないわね。そこは家族じゃないの?」

「……フィアが姉なら、私は母で旦那様は父ですが」


 悪戯っぽく問い返したドリィに、アテラが真面目な口調で口を挟む。

 対してドリィは一層楽しそうな笑顔を見せ……。


「勿論、分かってるわ。お母さん、お父さん。三人の行く手を阻む障害は、アタシがこの断片(フラグメント)? の力で全部排除して上げるわ」


 それから彼女は、そう自分自身に誓約するように宣言したのだった。

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