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EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~  作者: 青空顎門
第一章 未来異星世界

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042 要人警護用の力

「ふむ。それはマグ達と共に危険な地に赴く覚悟があるということでよいかな?」

「当然です! たとえ火の中水の中。フィアはおとー様とおかー様と一緒です!」


 横から問いかけたクリルに、若干舌足らずな口調でハッキリと答えるフィア。

 そうしてから、彼女はキョロキョロと周囲を見回してコテンと小首を傾げた。


「……ところで、ここはどこでしょう?」

「ここは秩序の街・多迷宮都市ラヴィリアだ」

「ラヴィリア?」


 一層疑問を深めたように首を更に深く傾けるフィア。

 体全体も微妙に斜めになってしまっている。

 外見相応。実に子供らしいリアクションだ。


「そう言えば、ネットワークに繋がっていないのだったな。端末をつけるといい」


 対してクリルは腕輪型のそれを取り出すと、フィアに差し出した。


「ええと……おとー様、おかー様?」


 フィアは確認するようにマグ達を見て、二人が頷くのを確認してから受け取る。

 そして、それを手首にはめ込んだ瞬間。


「あ……」


 彼女は呆けたような声を出し、虚空を見上げた。

 どうやら端末にはフィアの機体に組み込まれた通信規格と互換性があるらしい。

 目の奥がチカチカと光り、データのやり取りを行っていることが視認できる。


「時空間転移システムの暴走……惑星ティアフロント……稀人……」


 若干システム音声に近い平坦な調子で現代のキーワードを呟いていくフィア。

 やがて、ある程度の情報を取得できたのか、瞳の明滅が終わる。


「大体分かりました! つまりフィアは、おとー様やおかー様と一緒に遺跡の探索をすればいいんですね!」


 彼女は機械人形としての処理能力を以って、現状と自分に求められていることを即座に理解したようだった。


「いや、それは、そうしてくれると助かるけど……」

「遺跡探索が危険なことはちゃんと分かっていますか? フィア」


 マグの言葉を引き継ぎ、膝を曲げて視線を合わせながら指を立てて言うアテラ。

 早速母親風を吹かせ始めている。


「分かってます! だからフィアは、おとー様とおかー様を守ります!」


 対してフィアは、当たり前とばかりに間髪容れず答えた。

 その迷いのなさはアテラに似ている。

 人格形成。存在意義。根柢のところに要人警護用人型汎用護衛ロボットとしての意識が組み込まれているのだろう。

 製造目的がそうである限り、性格や関係性を入力しても変わらないようだ。

 そこから逸脱してしまうと、それらに忠実な機械人形であるだけに、下手をすれば彼女のアイデンティティが崩れかねない。

 他の道を考えさせるにしても、多種多様な経験による判断が不可欠に違いない。

 いずれ改めて選択を問うにせよ、この場は彼女の今の意思を尊重する以外ない。

 マグはそう自分を納得させた。


「……じゃあ、頼むな。フィア」

「はい! おとー様!」


 フィアは両手を上げながら返事をし、トテテッとマグに駆け寄って抱き着いた。

 無邪気な笑顔と共に。

 自分のあり方を受け入れられて嬉しかったようだ。


「うむ。それでフィア。汝にはどのような機能がある?」


 そこへクリルが、どこか挑むように問いかける。

 対してフィアは一旦体を離すと、外見不相応の大きな胸を張ってマグ達を見た。


「おとー様、おかー様。見ていて下さい!」


 親に褒めて欲しい子供のように言うと、フィアは両手を目一杯に広げる。

 正にその直後、胸部パーツが観音開きのように中央からぱかっと開く。

 するとジェネレーターのようなものが露出し、急激に回転を始めた。

 かと思えば、それに呼応するようにフィアの周囲に光の膜が発生する。


「そこの人、その銃で撃ってみて下さい!」

「我はクリルだ」


 フィアの要請に自己紹介を交えながら、クリルは先史兵装(PTアーマメント)の銃を手に取る。

 そしてフィアに向けて躊躇いなく引き金を引いた。

 余りに自然な動きで口を挟む間もなかった。

 原炎(アイテール)を束ねたエネルギーの塊が射出され、フィアに迫る。

 しかし、それが彼女を傷つけることはなく、光の膜に阻まれて霧散してしまった。


「これは……光のシールド?」

「はい! これでおとー様とおかー様を守ります!」

「ふむ。さすがは要人警護用人型汎用護衛ロボットか。防御特化という訳だな。範囲や形状は任意に変えられるのか?」

「勿論です!」


 クリルの問いかけに応え、光の膜を伸ばしたり縮めたりするフィア。

 その途中で、彼女は不思議そうな表情を浮かべて首を傾げた。


「どうした?」

「何だか、シールドの効果が仕様より物凄く強くなってるような……」

「それは間違いないか?」

「えっと、はい」


 表情を引き締めて尋ねたクリルに、フィアは戸惑い気味に応じる。

 対してクリルは深く考え込むように腕を組み――。


「……あるいは、フィアは断片(フラグメント)持ちかもしれんな」


 しばらくして、あの謎の単語を含む結論を口にしたのだった。

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