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EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~  作者: 青空顎門
終章 電子仕掛けの約束

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118/128

118 後始末

「やはり体があると違いますね」

「……感謝」


 確かめるように体を動かしながら告げるコスモスと丁寧に頭を下げるキリ。

 スタンドアロンの端末に閉じ込められていた二人は今、アテラ達が【コンプレッシブキャリアー】に入れて持ってきていた予備の体を使用していた。

 勿論、個々に特化した調整はなされていないが、バランスのいい性能らしい。


「街の管理システムとの接続も良好です。後は私が引き継ぎます」

「お願いするデス」


 コスモスの言葉に少しホッとしたように返すオネット。

 街の管理をしていたメタが電子頭脳の中に閉じこもれば、当然ながら各所で運用されているシステムもまた停止してしまう。

 そうなれば街全体が混乱に陥ってしまうことは想像に容易い。

 そのため、問題が起きないように今の今までオネットが制御していたのだ。

 とは言え、いつまでもそうしてはいられない。

 なので、諸々のプログラムをメタ以外でも扱えるように再構築した上で、元々この街の管理者だったコスモスに受け渡したのだ。


「後はメタの処理をするだけ」


 抱きかかえたままの球体に視線を落としながらククラが言う。

 未だオネットとの有線接続も維持されたままだ。

 これでメタを封じているとは言え、今後を考えるとこのままではいられない。

 二人共、それだけにかかり切りというのは困る。

 ククラが言っていた通り、解体して管理を容易にする必要がある。


「具体的にはどうするんだ?」


 最も容易なのは、メタの人格を消してしまうことだろう。

 しかし、それはさすがに躊躇われる。

 彼女も最後の最後まで敵対したマグ達の命を奪うつもりはなかったのだから。


「メタが本来持っていた断片(フラグメント)以外をママに取り込んで貰う」

「できるのか?」

「可能」


 マグの問いに簡潔に答えるククラ。

 理解に特化した力を持つ彼女が肯定するからには確かなのだろう。

 野心の断片(フラグメント)を残すのは、下手に奪うと悪影響を受けかねないという判断か。


「周りから少しずつ削り取る」

「最後に残ったメタの人格は、キリが入れられてた端末に突っ込むデスよ」


 ネットワークから切り離されたスタンドアロンのコンピューター。

 受容の判断軸(アクシス)・拡張の断片(フラグメント)を失えば、もはや何もできなくなる。

 存在するのは、急進的な意見を言うだけの(いち)AIだけだ。

 そこまで行けば、廃棄する理由はない。

 むしろ、一個の判断軸として存在した方がいいだろう。

 彼女の意見を採用するかどうかは別にして。


「二人の断片(フラグメント)はどうするんだ?」


 メタの処遇に納得した後、コスモスとキリに視線をやりながらアテラに問う。

 支配の判断軸(アクシス)・掌握の断片(フラグメント)と排斥の判断軸(アクシス)・隠形の断片(フラグメント)

 それらは本来、二人が持っていたものだ。


「勿論、返却します。元の持ち主が最もうまく扱えるでしょうから。ひとところに力が集まるのは色々危険ですし」


 メタを念頭に置いているのだろう。

 勿論、アテラが彼女のように急進的な行動を取るとは思わない。

 しかし、力の独占は危険視される恐れもある。

 必要最小限に留めておくべきだ。


「コスモスは街の管理を行うとして、キリはこれからどうするデス?」

「……報恩」

「私達の手助けをしてくれるデスか」


 キリの短い返答の意図を代弁するオネット。

 認識を阻害する能力は迷宮遺跡を探索する上で役に立つ。

 仲間になってくれるなら非常に助かる。

 別行動をして情報収集するといった役割もできるだろうし。


「よろしく頼む、キリ」


 マグの言葉にキリは真剣な表情で小さく頷いた。


「さて、残る問題は――」


 そうして一通りの説明が終わり、コスモスが新たな話題を切り出そうとする。

 正にその瞬間。

 突如として空間が振動を始めた。

 この感覚は覚えがある。


「ま、また」


 怯えたように、メタの本体を持ったままマグにくっつくククラ。


「ちょっと、何か、揺れが強いわよ!?」

「ね、念のため、シールドを張ります!」


 比較的突発的な出来事に強いフィアとドリィが慌てた様子を見せる。

 それぐらい空間の振動は激しかった。

 地震とは全く別の異質な感覚。

 世界が軋みを上げ、今にも砕け散ってしまいそうな錯覚を抱く。

 余りの異常さに、永遠に続くのではないかと思う程に時間を長く感じたが……。


「お、収まってきたか?」


 やがて揺れが少しずつ小さくなっていく。

 一先ず、今回はまだ大丈夫のようだ。

 しかし、マグ達の頭には確かな危機感が刻み込まれた。

 時空間転移システムの暴走。

 それが間違いなく、この宇宙を滅ぼし得る厄災であることを再認識させられる。


「……どうやら時が迫っているようですね」


 そして硬い口調で告げられるコスモスの言葉。


「早くコアユニットを見つけなければ」


 マグ達はそれに心の底から同意し、互いに顔を見合わせて頷き合った。

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