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EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~  作者: 青空顎門
終章 電子仕掛けの約束

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111/128

111 タイムリミット

『成程。魂の移動、ですか。それが本当に可能なのであれば、確かに人間を機人にすることも不可能ではありませんね』

『……同意』


 マグがメタに拉致されてから三日弱。

 その間、マグはコスモスやキリと話をして何とか気を紛らわせていた。

 狭い容器に閉じ込められ、そうする以外には何もできることがない状態。

 しかし、アテラ達と離れ離れになってしまっている状況であるだけに、最初は呑気に二人と雑談などしていられるような気分ではなかったが……。

 さすがにそれが何十時間と続くとさすがに退屈に耐えられなくなってくる。

 長時間、ほとんど身動きを取れずにいるストレスもあるから尚更のことだ。

 そんなこんなで、まず二人の来歴などを聞き、途中からはマグがこの未来異星世界を訪れてからのことを振り返ったりしていた。

 時折、マグ達の行動の裏側でメタがどういった言動を取っていたかなどの補足をコスモスに入れて貰いながら。


「しかし、君は本当に興味深いね。そこまでして機人と一緒になろうだなんて」


 そうした三人の会話に、メタは普通の顔をして入ってくる。

 マグを監視するようにずっと傍にいたのだからそうしても不思議ではないと言えば不思議ではないのだが、その度に当然ながら会話の流れはとまってしまう。

 正直なところ、今は不愉快さしかない。


『……厚顔』


 キリもコスモスも同意見のようだが、メタはそんな雰囲気を意に介さない。


「何、心配はいらないよ。私の目的が果たされたら、その世界で望むがままにするといい。私は別に、君の願いを妨げるものではないからね」


 彼女はフレンドリーな態度のまま言葉を続ける。

 対してコスモスが嘆息の音を発してから、仕方なくといった様子で口を開いた。


『時空間転移システムの制御に失敗すれば世界ごと破壊されてしまう可能性があるというのに、よく言えたものですね』

「相変わらず保守的だね。コスモス」


 そんな彼女に友人の駄目なところを指摘するように苦笑しながら言うメタ。

 実際のところ、秩序の街・多迷宮都市ラヴィリアの管理者だったコスモスは変化を嫌い、一定の形を維持し続ける運営方針を掲げていたらしい。

 過ぎたるは猶及ばざるが如し。

 ある程度の技術水準で留め、その範疇で波風のない生活を送る。

 それが人間の幸福を保つ方法だからと、本来はそのために牧歌的で中世ヨーロッパ的な街を作ろうとしていたらしいのだが……。

 近くに迷宮遺跡が多数存在するという立地だったが故にASHギルドを作らざるを得ず、付随してJRPGもどきに成り果ててしまったらしい。

 メタが彼女から管理者の立場を奪ってから、悪ノリした部分もあるようだが。

 それはともかくとして。


『貴方が先鋭的過ぎるのです。それ程のリスクと天秤にかける話ですか。それは』

「当たり前じゃないか。人間にとって最大最高の幸福を。そのためならば、たとえ茨の道であっても踏み越えていくだけさ」


 コスモスの真剣極まりない問いかけに、メタはまるで単純で簡単なことであるかのように僅かな逡巡もなく告げる。


『……茨に致死性の毒があれば、踏み越えることなどできませんよ』

「大丈夫さ。私達機人が先陣を切り、鋼鉄の足で道を作るからね」


 互いに確固たる信念を宿したガイノイド。

 どこまで行っても平行線だ。

 故に、こうして相手の断片(フラグメント)を奪い、ネットワークから切り離した端末に閉じ込めることでしか意見を封殺することはできないに違いない。

 メタもまた。

 自由にできる体が存在する限り、己の考えに従って行動し続けるのだろう。

 彼女を抑え込むには、完膚なきまでに破壊し尽くすか、今のコスモスやキリと同じ状態に追い込む以外にない訳だ。


「さて、そろそろタイムリミットだね」


 メタの言葉に視線を動かすと、容器の透明な蓋に表示されていた時刻は彼女が指定した時間を刻もうとしていた。


「もし彼女達が不埒なことを考えているなら、ここからが最も警戒すべき時間だ」


 来ないという可能性はマグを含め、メタもまた僅かたりとも考えていない。

 あるとすれば、ククラを差し出さずにマグを奪い返そうとすること。

 しかし、メタはそれをさしたる脅威と捉えてはいないようだった。


『アテラ……』


 迫る時を肌で感じ、もどかしい気持ちを吐き出すように呟く。

 そんな中。恐らく監視装置か何かで得た情報を基に判断したのだろう。


「おや。来たみたいだね。……やっぱり、素直にククラを渡す気はないみたいだ」


 彼女はそう、何ら気負った様子もなく告げたのだった。

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