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EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~  作者: 青空顎門
終章 電子仕掛けの約束

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102/128

102 再確認

 依頼された迷宮遺跡の攻略を済ませたマグ達は、向学の街・学園都市メイアに戻ると真っ直ぐ学園長室へと向かった。

 そして、街の管理者たるローフェに今回得た成果を報告する。


「……まさか、ここで探し求めていた断片(フラグメント)が見つかるとは」


 マグ達が未来の異星を訪れる原因ともなった時空間転移システムの暴走。

 それによって多くの技術が失われた結果、かの装置はある種のオーパーツと化しており、安全に停止させる方法もまた失われてしまっていた。

 今となっては一から地道に理論を再構築していくか、理屈をすっ飛ばして操作方法を知ることができる裏技を利用する以外に暴走をとめる術はない。

 その後者の方法を実現するのに必要となるものの一つ。それこそが今回の迷宮遺跡の最深部で発見した、受容の判断軸(アクシス)・理解の断片(フラグメント)を持つククラだった。

 あるいは、転移の事故によって宇宙のどこかの星で同じように孤立している可能性のある同胞達もまた追い求めていた存在と言えるかもしれない。

 当然、過激な思想を持っている者も狙っている訳で……。


「この件は可能な限り秘匿しておくべきデス」

「それはその通りである。できることなら保護しておきたいところであるが……」


 チラリとククラを見るローフェ。

 その視線を受け、ククラは若干怯えたようにマグに体を寄せて腕に抱き着いた。

 無理矢理引き離されると思ったようだ。


「正直な話、ここも確実に安全とは言えないのデスよ」

「まあ、あくまでも学園都市であるからな。原炎擬装(PTRデバイス)の研究が盛んであるとは言っても、戦闘用の断片(フラグメント)は乏しい」


 個々の戦力として考えるなら、恐らくフィアやドリィの方が上なのだろう。

 オネットの指摘に同意するように告げたローフェは、しばらく考え込むように瞑目してから続けて口を開いた。


「一先ず彼女のことは君達に任せるのである。君達ならば、ガイノイドたる彼女を悪いようにはしないであろうからな」


 マグは当然と首を縦に振った。

 刷り込みとは言え、自分を父と慕っている彼女。

 蔑ろにできるはずもない。


「それよりも問題は……」

「あの空間の振動デスね。ククラは時空間転移システムの暴走が進んで、この宇宙そのものが耐えられなくなってきてると言ってたデスが」


 チラッとククラに視線をやりながらオネットが告げる。


「それは間違いないであろう。こちらの観測装置が示した数値でも、地震の類ではなく転移の予兆に近いものだったとの報告を受けているのである」

「残り時間がなくなってきてる訳デスね」

「うむ。だが、同時に観測結果を分析すれば時空間転移システムのコアユニットの在処をある程度まで絞ることができるそうだとも聞いているのである」


 どうやら悪いことばかりではないようだ。

 怪我の功名といったところか。


「しばらく向学の街・学園都市メイアは分析に注力するのである。そして場所を特定できた暁には、君達には速やかに現地に向かって欲しいのである」

「新しい依頼デスか?」

「そうなる」

「なら、まずは今回の依頼の報酬を受け取ってからデスよ」


 完全にマグ達側の立場から告げている様子のオネット。

 対してローフェは少しバツが悪そうに「そうだったであるな」と頷いた。

 この宇宙の大事である以上、マグとしては断るつもりはない。

 だが、その辺りのケジメはしっかりとつけておかなければならないのも確かだ。

 今この世界での個人的な最終目標でもあるだけに、集中して耳を傾ける。


「人間から電子頭脳へ、電子頭脳から人間への魂の移動。それを主に研究しているのは清適の街・医療都市ポリークである」

「医療都市、ですか……成程……」


 ポスト・ポストアポカリプスとでも言うべき現在。

 それでも医療用の出土品(PTデバイス)のおかげで大概の病や怪我は治すことができると聞く。

 そうなると次に求めるのは不老、あるいは不死だろう。

 それを成し遂げるための方法の一つとして、魂と名づけられた情報群を別の器へと移し替える研究がなされているに違いない。


「場所はこの街から西にしばらく行ったところにある。詳細な位置座標はオネットに送信しておくのである」

「……受け取ったデス。アテラ母様にも送るデスよ」


 ローフェとオネットの言葉を受け、マグはアテラを見た。

 すると、すぐに情報が転送されてきたようで彼女は深く頷く。

 それを確認してから、マグは改めてローフェと向き直った。

 後は……。


「紹介状も用意してくれるはずデスよね?」

「うむ。ここにある。あちらの管理者にも連絡しておくのである」

「ありがとうございます」


 ローフェに頭を下げ、それからオネットと目を合わせて頷き合う。

 必要な情報は得たし、話すべきことも話した。

 一先ずはこんなところだろう。

 空間そのものの揺れは気になるが、観測結果の分析は本職に任せるべきだ。

 だから――。


「では、時空間転移システムのコアユニットが見つかったら教えて下さい。俺達は清適の街・医療都市ポリークに向かいます」


 そうローフェに告げて頭を下げ、それからマグ達は学園長室を出て向学の街・学園都市メイアを後にしたのだった。

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