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2020年3月17日(火)


 夢、だったのかな。


 今日、神明社(しんめいしゃ)へお参りに行った。

 そうしたら、優星(ゆうせい)くんから突然電話がかかってきた。

 最初、着信を見たときは非通知で、誰からの電話か分からなくて。

 取るのが少し怖かったけど、思い切って出てみたら優星くんだった。

 向こうは名乗らなかったけど、絶対にそうだと思う。


 どうして急に電話なんてかけてきたんだろう。

 しかも、私がちょうど神明社で優星くんのことをお祈りしてた最中に。

 こんな偶然ってある?

 私は、きっと優星くんにはもう二度と声もかけてもらえないと思ってた。実際誕生日にひどい振り方をしてから、優星くんからは一度も連絡がなかったし。

 LINEもブロックされたみたいだったから、きっと電話帳からも消されちゃったんだろうなと思ってた。私もそれでいいと思って気にしないようにしてたけど。


 なのに今日、久しぶりに優星くんの声を聞いたらどうしても我慢できなくて……ダメだって分かってるのに泣いちゃった。

 泣きながら「大好き。会いたい」って言っちゃった。

 でも電話はそのあとすぐに切れて、もう一度かかってくることもなかったから、自分から振ったくせに何言ってんだこいつ、って引かれちゃったのかな。

 きっとそうだよね。だって私が優星くんの立場でもそう思うもの。

 本当に会いに来られたら困るから、結果的にはよかったのかもしれないけど。


 私、また優星くんを傷つけちゃった。


 本当に最低な人間だ。お母さんに愛してもらえなかったのも当然だね。


 ……だけど本当に、どうして突然電話なんてかけてきたんだろう。

 こっちからかけ直して、何かあったの、って聞くべきだった? でも向こうは非通知だったし、ひょっとしたら番号が変わってるかもと思うと踏み切れなくて。(おお)(たき)くんに()けば教えてもらえたかもしれないけど、やっぱり勇気が出なかった。


 一応電話のあと、神明社で一時間くらい待ってみたものの、結果は待ちぼうけ。

 とはいえ冷静になって考えると、来てくれるわけないよね。

 だって優星くんは、私が神明社にいたこと自体知らなかったと思うし。

 もう恋人同士でもないんだから、会いに来る理由もないし。

 頭ではそう分かってるのに、何だか心の中がぐちゃぐちゃだ。

 私って本当に自分勝手でわがままだな。


 ……というわけで今日から日記をつけてみることにしました。日記というよりはたぶん、手記みたいな感じのものになると思うけど。こうして文章にしていけば、少しは気持ちの整理もつくかなと思って。せっかくお気に入りのハンドメイド作家さんからこの手帳を買って、何に使おうかなって悩んでたところだったし。


 もしかして、優星くんカバーの手帳を買った途端に優星くんから電話がかかってきたのは、手記を残しておきなさいっていう神様のお導きだったのかな?

 そうでもないと、ちょっとできすぎてるよね。なんて、いちいちこんな考え方をしちゃうから、私はいつまで経っても浮いてる変な子なんだろうけど。


 だけど付き合ってた二年間、優星くんは私を「普通の子」として見てくれた。そうしてって頼んだわけじゃないのに、ありのままの私を受け入れて「好きだ」って言ってくれた。だから私も優星くんと一緒の間は「普通の子」でいられたんだ。

 生まれて初めて本気で誰かに必要としてもらえて、私はこの世に存在してもいいんだって、やっと思えた。

 それがたまらなく嬉しくて、嬉しくて、泣いちゃうくらい幸せだった。


 なのにどうしてあんなこと言っちゃったんだろ。

 どうして黙っていられなかったんだろ。

 おかげで優星くんを二度も傷つけちゃった。ごめんなさい、優星くん。


 本当にごめんなさい。


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