クラスメイトへの指導対局
母の後押しもあり、一輝との指導対局を希望する梢子。隣のテーブルにいる天馬は一輝に何枚落ちにするかを尋ねるが、しばらく考えた一輝はなんと平手を提案する。
思わぬ提案に戸惑う梢子であり、その提案に思わず天馬が異議を唱える。
「ちょっと待て一輝!どこの世界にアマチュアに平手の指導対局を提案するプロ棋士がいるんだ。奨励会でさえ段や級が1つ違うだけで香落ちがあってお前も経験があるだろう!」
天馬は異議を唱えるが、鎌田は一輝の意見を擁護する発言をする。
「まあまあ、落ち着いてください真壁先生、きっと長谷先生には何か考えがあるんですよ」
「鎌田さんまでそんなことを……」
「もちろん、さすがに何のハンデも付けないわけにはいかないと思うので、佐藤さんは持ち時間を30分、切れたら1手30秒で指してもらい、長谷先生には1手10秒というのはどうでしょうか?」
鎌田の提案を聞いて一輝は了承し、更に梢子にも尋ねる。
「そうですね、それでやってみます。佐藤さんもそれでいい?」
「あ、うん」
そう言って梢子は一輝と相対するようにテーブルに座り、一輝は梢子のチェスロックを30分に調整し、自分のを1手10秒に調整した。
それぞれ駒を並べ終えると、先後について一輝から提案される。
「先手は佐藤さんがやるといいよ」
「じゃあ、遠慮なくもらうわ」
梢子が先手と決まり、いよいよ指導対局が始まる。
まず梢子は2六歩と飛車先の歩を突く。それに対し一輝はすぐに3四歩と角道を開ける。
その様子に天馬が違和感を覚え、呟く。
「妙だな」
天馬の呟きが聞こえた鎌田が尋ねる。
「妙というのは?」
「一輝は生粋の居飛車党、先手の時は初手に角道を開けることもありますが、後手では常に8四歩と飛車先の歩を突くんです。まさかあいつ普段やらない振り飛車をしてハンデをつけるつもりか?」
「後手で3四歩で居飛車となると雁木や横歩取り、もしくは一手損角換わりですかね?」
「だけどどれも主導権を握るのは難しいはず。横歩取りならできるかも知れないが」
梢子も角道を開け、7六歩とする。
ここで一輝は8八角成とし、梢子は同銀とする。角交換が成立し、一手損角換わりだ。
「一輝が一手損角換わり?これは一体?」
一輝が初めて指す戦法に梢子はどう対応するのか?




