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一歩の重さ  作者: burazu
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盤上では……

 与田美咲女流二級と佐藤梢子アマのウイナビ女子オープン1回戦2局目の対局は佐藤梢子アマの勝利で終わった。


 控室で対局を観戦していた一輝、そしてその対局を解説していた竹田義男九段はある違和感を抱いていた。


「竹田先生、あの佐藤さんていう人、僕にはただのアマチュアには思えません」

「そうですね、私もそう思いますよ、だからこそ不思議です。何故奨励会や研修会にも入っていないか」


 一輝と竹田が佐藤梢子について話していると鎌田美緒女帝が話に加わる。


「将棋の強い人でもプロの世界に興味のない方はいますし、さほど不思議ではないのでは?」

「彼女がアマチュアの大会だけに出ていたらそうでしょうけど、実際は女流棋戦のウイナビ女子に出ているわけで、全く興味が無いとは言えないでしょう」


 竹田の意見に一輝が賛同する。


「僕も竹田先生と同意見です。それにこの人はアマチュアの大会が未出場なのにいきなりウイナビに出ているんですよ」


 一輝の言葉を聞いて鎌田は自分の推論を述べる。


「そうすると何かしらの事情で今までアマチュアの大会に出れず、一般募集で出場できるウイナビ女子に初めて出たのかも知れませんね」


 女流棋戦の一部はアマチュアの出場も認められているが、参加資格としてアマチュア大会での優勝等の実績が必要になるものがほとんどだが、ウイナビ女子は予備予選はあるものの、多くのアマチュアに一般募集という形で門戸が開かれている為、出場は比較的しやすいのだ。


「まあ、難しい話はこれくらいにして我々もお昼にしましょうか」

「竹田先生が話を振って来たんじゃないですか」

「おやおや、私は将棋の感想を聞いただけなのに、長谷さんが勝手に話を拡げたんじゃないんですか?それに私達が付き合ったわけですよ」

「え、ええ?僕のせい?」


 竹田の冗談っぽい言い回しに戸惑う一輝を見て鎌田が竹田に言葉を発する。


「もう、竹田先生、あまり長谷先生をいじめちゃだめですよ。まだ高校生なんですから」

「そうですね、私としたことが大人げなかったですね。ただ……」


 次の瞬間一見穏やかな表情ながらも目つきは少しだが鋭くして一輝に言葉を発する。


「盤上ではおじさんも高校生もない。1人の棋士として扱わせてもらいますよ」

「もちろんです、竹田先生と対局できる日を楽しみにしてます」

「ま、僕は引退するまであなたと対局せずに済むのがいいんですけどね」


 変幻自在に竹田義男九段。彼と対局する日を心より願っている一輝であった。

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