期間限定研究会
皇位戦予選の次の対局相手が天馬に決まったことを聞かされた一輝は、順位戦の翌日土曜日に自宅でパソコンを触っていた。
直近の天馬の対局の棋譜から傾向と対策を練り、有力な戦型を導こうとしていた。振り駒で先後が決まるので両方の作戦を用意しなければいけなく一苦労だ。
しかも一緒に研究会をしていた奨励会員の村田を既に天馬に押さえられ、新たな研究仲間を探さないともいけなくなった。
まず一輝は兄弟子の1人である西田に連絡を取る。
「もしもし、一輝か?どうした突然」
「西田さん。実は……」
一輝は次の皇位戦予選の対局相手が天馬であり、現在研究会が休止状態であることを伝えた。
「なるほど、それで俺にVS相手になって欲しいっていうことか」
「はい、お願いできますか?」
「一輝、俺とだけでなくとっておきのメンバーとやって真壁君の鼻をあかしてやれ」
「とっておきのメンバー?」
一輝の疑問をよそに西田は一輝に対して告げる。
「まあ、とりあえずそのメンバーについては俺に任せろ。都合がついたら連絡する」
それから数日が経ち、下校の時間に自宅の最寄り駅に降りると、LINEが来ていたことに気付き、一輝は確認する。
『とりあえずメンバーの都合はついた。次の土曜日に俺んちに来い』
LINEの文を読んだ一輝は返信をする。
『それで、どんなメンバーですか』
『当日のお楽しみ♥』
なんとも気持ちの悪い文面だと感じたが当日を待つこととした。
そして当日、一輝は西田のアパートに向かっていた。
西田のアパートも師匠である諸見里九段の自宅に近い為、一輝にとっては行きやすい場所なのだ。
アパートの到着し、西田の部屋のインターホンを一輝が押すと、ドアの向こうから西田が出てきた。
「おっ、来たな一輝、お前で最後だ」
西田に促され部屋に入って研究会のメンバーを見て一輝は驚愕する。
「黒木さん⁉加瀬さん⁉」
「よう、長谷君」
「お久しぶりです、大盤解説会以来ですか?」
なんと西田が声をかけていたメンバーは一輝と同時期に昇段した黒木修一四段と竜帝戦で対局した加瀬俊哉五段であった。
驚いた一輝は西田に尋ねる。
「西田さん、どうしてこの2人を?」
「研究会ではないが、黒木さんや加瀬さんとは初対局以降何度かVSをしててな」
「そうだったんですか」
「さ、これより期間限定の研究会を始めるぞ」
思わぬ顔ぶれに戸惑う一輝ではあったが、これは強くなるチャンスとばかりに一輝も研究会に臨むこととする。




