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一歩の重さ  作者: burazu
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師匠の威厳

 指導対局が終了すると思われたその時、突如一輝の師匠である諸見里武夫九段が登場し、一輝との師弟対局が行われる事となり一輝、小夜、そして諸見里は現在対局準備をしている教室まで移動している。その途中で一輝は諸見里に尋ねた。


「あの師匠、師匠が勝手に約束した指導対局をこういう形で岸本さん達がフォローしてくれたのに、どうして今度は公開対局をする事にしたんですか?それも俺に黙って」

「あれから佐渡さんに頼んでな、このままではわしは単なる口を滑らした酔っ払いになると思って、いわばこれはわしの名誉回復の為なんだ」

「名誉回復?」

「そうだ、お前との公開対局に勝てば少しは名誉も回復できるし、師匠としての威厳も取り戻せるかもしれんからな」


 酔っ払っておかしな事を口走った名誉を将棋で勝ったからといって取り返せるわけではないだろうと思いながらも一輝は諸見里の言葉を聞きながら歩き、ようやく対局するであろう教室に着いた。


「ここが対局の準備がしてある教室です」


 案内した教員の言葉を受けて中に入ると、すでに将棋盤、そして駒箱、チェスクロックも置いてあり、いつでも将棋が可能な状態であった。


 そして一輝と諸見里は盤の前へ、小夜は記録係をする為に、チェスクロックの前へ座る。


 両者が盤の前へと座ると、体育館に残っている、岸本と山西がこの将棋についての解説をするという事を児童に告げ、さらに一輝達の様子を実況していた。


「それじゃあここからは解説を岸本五段、聞き手を私、山西でお送りします。岸本五段よろしくお願いします」

「はいよろしくお願いします」

「まずは対局者のお2人が何をしていらっしゃるかの解説をお願いします」

「まず両対局者は駒を順番に並べていますね、お、どうやら振り駒をするようです」


 岸本と山西が教室の様子を解説していると記録係の小夜が振り駒をする。教室の音声は聞こえないが、振り駒を終えると画面が将棋盤に切り替わり、先手後手が決まったので、それを岸本が解説する。


「どうやら先手は長谷四段に決まったようですね」

「先生、その理由を児童の皆さんに説明をしていただけますか」

「諸見里先生は九段、長谷先生は四段、よって諸見里先生の方が格上で王将を持って将棋をするので、上の画面の駒が後手なので、長谷四段が先手です」


 岸本の解説を聞いて、児童の1人が手を挙げて、岸本が発言を促すと質問をする。


「格上って事は諸見里先生の方が強いんですか?」

「そうですね、我々も長谷四段が師匠である諸見里九段とどこまで戦えるかは楽しみでもありますね」


 非公式戦とはいえ、多くの人間が目にする中、一輝と諸見里の初の真剣勝負が今始まろうとしている。

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