チャレンジ精神
研修会幹事の高田七段に宮里春香女流三冠を梢子にぶつけ彼女の棋力、そして覚悟を見極めたいと言った竹田義男九段は将棋連盟の佐渡会長より許可をもらい、ようやく研修会員達が待つ対局室へと戻って、竹田が呼びかける。
「いやあ、皆さんお待たせしました。高田先生から宮里さんを指導対局に加えるなら佐渡会長に許可をとれと言われましてちょっと連絡していました」
「ちょっと、竹田さん……」
「宮里さん、佐渡会長からお許しが出たので存分に将棋を指してください」
「あ、はい、ありがとうございます」
宮里女流三冠はそう言って、ジェスチャーで竹田に促されて将棋盤の前に座る。
「では、どなたからやりますか?」
「はい、僕やります!」
「お、良い返事ですね」
その少年を見た梢子は驚きを隠せないでいた。
それもそのはずである。彼は1日目の試験で自分を負かした小学生であり、研修会からの奨励会編入が有望な少年であったからだ。
彼の強さの秘密はこのあくなきチャレンジ精神も少なからず関係しており、自分は少し気おくれしているのではないかと感じている。
そんな梢子をよそに、宮里とその少年の指導対局が始まろうとしていた。
「よろしくお願いいします」
宮里と少年の指導対局が始まった頃、将棋会館内でウイナビの取材を受けていた小夜は、その取材がようやく終わりを迎えていた。
「それではこれで取材を終わります。お疲れさまでした」
「ありがとうございました」
そしてウイナビの取材担当者達が会館をあとにし、小夜も帰宅しようとするが、ふと梢子の事が頭によぎり呟いた。
「そういえば、佐藤さん、もう試験終わったのかな」
そう呟いて、研修会の例会が行われている対局室に向かい、対局室に到着すると信じられない事実を目の当たりにする。
「あれは宮里さん!どうして?」
小夜は宮里が指導対局を行っている事実に驚くと同時に、研修会の幹事でないはずの竹田九段の姿も目にし、竹田に声をかける。
「あ、すいません竹田先生……」
「牧野さん?確か今日は取材でしたよね」
「さっき終わって、佐藤さんと朝会ったからどうなっているのか気になって来たんですけど……」
梢子の事が気になり、例会の様子を見に来たものの、宮里女流三冠が指導対局をしている事に理解が追い付かないでいた。
「竹田さんが勧めたんだ。しかも佐渡会長も後押ししてね、私は反対したのに……」
「まあ、もう言いっこなしです。しかし、少々計算が狂ったかもしれません」
「え⁉」
竹田が感じた誤算、果たして?




