指導対局の許可
竹田九段の提案で、宮里女流三冠を急きょ指導対局へと加える話が進みそうになった為、幹事である高田七段は竹田の行動に疑問を投げかけるが竹田の返答は高田七段が予想もしていない事であった。
「私は佐藤梢子さんがどこまで女流最強の本気に通用するかを確かめたいんですよ」
「竹田さん、確かにあの子は素質はあると思いますが、駒落ちとはいえ、手を抜かない事で有名な宮里さんにぶつけるとは一体何を考えているんですか?」
「高田さんも知っているでしょうが、あの子はあの佐藤春秋さんの娘さんなんですよ」
「佐藤春秋さん、あなたが昔お世話になった方ですか、私は佐藤さんが奨励会退会後に三段リーグに上がったから直接の交流はなかったのですが」
竹田が梢子を宮里女流三冠に佐藤春秋の娘だけという理由では納得できてなさそうな高田の表情を見て竹田は更にその真意を話す。
「以前に春秋さんとお話したのですが、娘さんの強い思いで今回の事を許したようですが、やはり不安はあるようでした」
「まさか、あきらめさせる為に宮里さんを?」
「何でしょうね、私にも娘がいますし、春秋さんの気持ちも分かる所はあるんですよ。ましてあの人自身は奨励会を退会してますからね」
竹田も親として春秋の気持ちが分かる事を告げるが、同時にそれだけでもない話もし続ける。
「しかし梢子さんもあのウイナビで牧野さんと対局した事で女流棋士になりたい思いが芽生え、私も林原さんを師匠として紹介しましたから、あきらめろとは言えませんよ」
「それなら何の為に宮里さんを……」
「確かめるのは力だけでなく覚悟もです、女流棋士にはこれ程強い人がいて、それでも挑戦するかというね」
「……、そうですか、竹田さんの言いたい事は分かりましたが、幹事として私がこのような事を認めていいのかとも思います」
竹田の真意を分かったものの、名目上とはいえ、育成が目的の研修会で女流最強を指導対局、しかも手を抜かない気質の宮里を加えていいか迷う高田に竹田が声をかける。
「もし佐渡会長がダメだとおっしゃったら私が説得してみますし、先に連絡してみますね」
そう言って竹田は佐渡会長に自らのスマートフォンで連絡をする。
「もしもし会長、竹田です、実はですね……、あ、そうですか。ありがとうございます」
電話を切ると高田に話した結果を伝えた。
「していいとの事です」
「いいんですか⁉」
「それからこうもおっしゃっていました。『後で棋譜を送って下さい』とね」
佐渡会長も注目する梢子と宮里女流三冠の指導対局。果たしてその将棋とは?




