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食の革命児  作者: 亜掛千夜
第二二章 

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第453話 どうするか

 さすがにこれはおかしいと、竜郎たちはむやみに次の行動に移るのではなく、一度立ち止まって考えることにした。



「たつろーのスキルがバグっちゃってるとか?」

「これまでまったく不具合はなかったし、急にアップデートするようなシステムでもないから、その線は薄いと思うけどな」

「世界のシステムですから、神々もそうそう手を入れ直すことはないでしょうからね」

「今は安定しているようですからね」

「そっかぁ。でもそーだよねぇ」



 アーサーやミネルヴァも、システム的な異常説には否定的だ。

 愛衣もとりあえず思い浮かんだことを口にしただけで、その可能性は低いと思っていたため、それ以上の反論もなく受け入れていた。



「もう一度調べてみたが、やっぱり場所が動いてるな。

 人気がない場所っていうのは共通してるみたいだが、かなり離れた場所にもう行っている」

「マスター。もともと移動するような魔物ではないのですか?」

「魔物だから動くことはできるが、こんなありえない移動はできないはずだ。

 【魔物大事典】でざっと、目的の魔物の情報をもう一度読んでみたが、こんな転移じみた動きはありえない」

「ほんなら、第三者によって移動させられる思てえぇんかなぁ」

「それにしては規模が大きすぎる気がしますね。主様、その魔物は簡単に持ち運べるほどの数しか、この世にいないのですか?」

「もしくは大量に一人で持ち運べるくらい、ちっちゃな魔物とか?」

「そんなことはないと思うんだけどな。だったら【魔物大事典】に絶滅しそうだとか、あり得ないくらい小さいとか、そういう情報も記載されているはずだ。

 でもそんなことは一言も書かれていないし、大きさは通常個体で3メートルくらいだ。

 今にも絶滅しそうな数しかいないなんてことも、ないと思っていい」

「3メートルもある巨体を、大量に一瞬で遠くに運べる何かが、我々の目的を邪魔している。そういうことでしょうか」

「嫌な予想だし、どうやってっていう疑問も生まれるが、そう考えるのが自然かもしれないな」



 ありえそうな状況をアーサーが纏めはしたが、その条件を口に出して言われても、いまいちピンとくるようなものではなかった。



「この世界の特殊な何かに、巻き込まれているってことなのかも?」

「ただ一体でいいから、野菜の魔物を手に入れればそれでいいはずなのに……なんでこうなった」

「なぁ主様。その魔物おらんと、絶対に野菜の美味しい魔物は復活させられへんの?」

「ちょっと待ってくれ」



 千子の言葉にそれはそうだと、竜郎はもしその魔物が手に入らなかった場合なら、果たして復活させられるのかを確認してみた。



「………………いや、いけはするな。ただ目的の魔物Xを復活させるために、必要だった魔物Yが手に入らなかった場合、AとB、CとD、EとFを手に入れてから、それらで生み出した魔物の素材を使ってYを生み出して──みたいな感じで、工程がかなり面倒なことになるな」

「それなら、数もちゃんとそれなりにいるはずの魔物Yを直接手に入れたいですね」



 ミネルヴァの言葉に竜郎だけでなく、他の幼竜以外のメンバーも大きく頷いた。



「だからできるなら、さっさと今探している奴を手に入れたいわけなんだが……、皆はどっちが良いと思う?

 このまま謎現象と一緒に目的の魔物を追うか。それともここで早々に見切りをつけて、面倒な工程に移行するか」

「うーん……聞いたうちが言うのもなんやけど、その面倒な方も一から探し直さんとあかんのやろ? しかも複数種も。

 そやったら、このまま謎現象を追うてもええんちゃうかな、思うわ。」

「私もとりあえず、このまま探したいかな。

 同じ面倒なことをするなら、この謎現象を解明してスッキリしたいし」

「私も気になりますね。マスターに面倒事を仕掛けた、その原因を是非究明したいです」



 アーサーはとてもいい笑顔でそう答えていたが、目的の魔物を探す以外の目的が透けて見えた気がした。



「そうですね。私としてもこの現象を解明したいです。とても珍しいことでしょうし、記録に残したいです」

「なら決まりだ。俺もあれは何だったんだろうって、解明しないで思い出してはモヤモヤしたりしそうだしな」

「「あう?」」「「ガァ……」」



 楓と菖蒲は難しいお話は終わったの? と抱っこをせがみ、フレイムとアンドレは人気のない静かな空間が気に入っていたのか、もう移動するのかと少し不満げだ。

 幼竜たちは自由だなぁとそれぞれの頭を撫でると、竜郎たちはこの現象を解明するにはどうするべきか、具体的に話し合っていくことにする。



「今のこの話し合っている時間で移動はしていますか?」

「…………してるな」

「ってことは、ずっと動き回ってるだけで、私たちが近づいたからとか、そういうのは関係ないのかも?」

「ほな、このまましばらく放置しとったら、どんどん動いていくんかいな?」

「そうなりそうだな……。マスター、ひとまず目的の魔物を探すのは一時中断し、小まめに確認して、ルートに共通点や法則がないか調べてみてはいかがでしょうか?」

「ちょっと大変そうだが、それが一番の近道かもな……。一度カルディナ城に戻るか?」

「いえ、対象が忙しなく動き回っているのなら、またここに戻ってくる可能性もあるのではないでしょうか?

 その存在自体は私がずっと現れないか見張り続けますので、主様も今日はここで確認していくのも一つの手かと」

「そっか。戻ってくる可能性もあるんだ。だったら今日は、ここで夜を越すくらいの気持ちで、待っててもいいかもね」

「それもそうか。楓、菖蒲。フレイムにアンドレは、どうする?

 今日はここに泊まりこむことになりそうだが、カルディナ城に一度戻りたいか?」



 どんな答えが返って来るかは予想できたが、一応ちびっこドラゴンたちにも聞いてみた。



「「あう!」」

「「ガァ~~」」



 竜郎が言いたいことは眷属のパスで理解し、四人とも帰らないと意思表示してきた。

 楓と菖蒲はパパとママと一緒と、竜郎と愛衣の足にしがみ付くように抱き着いてくる。

 フレイムとアンドレは、むしろ静かでいいじゃないかと機嫌が良さそうだ。



「なら全員このまま、ここでしばらく過ごすとしよう」

「飽きたら、たつろーの転移でいつでも帰れるしね」

「必要な物もマスターの《無限アイテムフィールド》に、いくらでも入ってしまいますからね。

 さすがはマスター。いついかなる時も準備を怠らない姿勢。感服いたします」

「ただ何でもかんでも入れてるだけだから、感服しなくていいぞ……」



 容量無限でいくらでも入るため、これはいつ使うのだろうというものから、完全にいらないだろうというものまで、竜郎のもったいない精神のままに《無限アイテムフィールド》の中に詰め込まれている。

 ただそのおかげで、何かがないという状況が滅多にないのはありがたいことではあるが、決してアーサーの重たいほどの信頼を受けるほどの事ではない。



「じゃあ適当に組み立て式の家を出しておくか」



 以前に作っておいた、レゴブロックのように組み立てられる外用の部屋を《無限アイテムフィールド》内で必要な部屋分結合させて、そのまま地面に脚部を挿すように沈めて固定する。

 時間にして三秒ほどで、立派な家の完成だ。内部の設備もリアのおかげで充実しているため、この人数でも十分な広さと快適な空間で過ごせるようになっている。



「この辺は人もおらへんし、いくらでも土地は使い放題やなぁ」

「一応警戒されている可能性も考えて、主様の魔法でこれは隠しておいた方がいいかと」

「変な家があるからと、逃げられたら面倒だしな。分かった。呪魔法と闇魔法で完全に俺たちの気配ごと隠しておこう」



 相手が現象なのか生物なのか。それすら分かっていないため、念には念をと竜郎は魔法を使って家ごと自分たちを隠していく。

 あとは数分おきに竜郎が《魔物大事典》で、目的の魔物の生息域を確認し続ける作業をするだけ。

 ミネルヴァはいつ来てもいいようにスキルを全開に使用して、周囲を探り続ける必要があるが、他のメンバーは特にやることもない。

 そして竜郎も愛衣も寝なくても活動し続けられる肉体であるため、今日は寝ないで過ごそうと、皆で組立家の大部屋に集まってボードゲームをして時間を潰していった。

 もちろん竜郎は、分割した思考で小まめに生息域を確認するのも忘れずに行った。

 そうして一日が過ぎ、二日目の朝がやってきた。

次話も木曜日更新予定です!

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