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食の革命児  作者: 亜掛千夜
第十九章 無人島開拓編

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第367話 火山島2

 温泉はせっかくならと、巨大な旅館の中と敷地内に複数用意することになっている。

 まずは手始めに、屋内の中央奥に設置予定の大浴場に着手していく。



「さすがに身内だけとはいえ、男女は分けておかないとな」

「まぁ何かあるってこともないだろうけど、仁さんとかアーサーくんたちでも偶然裸で出くわしたら気まずいしねぇ」



 たとえ実の父親や自分が生み出した仲間たちであっても、男性に愛衣の裸を見せたくはない。

 ここはしっかりと更衣室の段階から男女で分け、中の浴槽もきっちりと壁で隔たれている作りになっている。



「水着を着て温泉はいるのもなんかアレだし、どうしても混浴したいなら貸し切り申請してもらう感じでいいか」

「部屋ごとに個室風呂も用意する予定だけどね」



 女性用の更衣室を通り、まずはそちら側の浴槽を作り上げる。

 作ったのはオーソドックスな、竜水晶をヒノキ風の見た目にした広い大浴槽。

 子供が浸かっても頭が出るように、風呂枠の内側には一段高い段差を用意。

 大人がそこに座れば半身浴もできる深さに調整してある。

 少し高い場所に設置したヒノキ風の蛇口から、源泉が小さな滝のように流れこむデザインとなっている。

 他にもシャワーやサウナルーム、水風呂も様式美として用意しておいた。



「これならニーナでも、元の大きさで入れそう」

「おうお?」

「そうだぞ。でっかいお風呂だ」

「でっかでっか」



 キャイキャイとはしゃぐ楓と菖蒲はニーナにひとまず任せ、そのまま男性風呂の方も似たような作りで済ませていき、今度は露天風呂に着手する。

 こちらは石を組んで風呂の形にしたように見える、竜水晶製の大風呂を設置。

 上から見下ろすとひょうたん型になっており、くびれの辺りに仕切りを立てて男女を分けているが、お湯は繋がっている状態だ。

 不審者が覗きに来れるような島ではないが、雰囲気作りも兼ねて周囲に柵も立てておいた。

 サウナと水風呂からの外気浴ができるよう、男女両方に寝そべれる椅子も設置しておく。



「ここはとりあえずこんなものでいいか」

「そうだね。まだ石鹸とかはないけど、そっちは別の子たちがやってくれるみたいだし。それじゃあ次行ってみよっか」



 最初の大浴場はとにかくノーマルな、ザ・温泉を意識したデザインで統一されていたが、これからは変わり種の浴槽を設置していくことになっている。



「おっしゃれ~。和風もいいけど、こういうのもいいよね」

「たしかにな。一般開放されてるような場所だったら、カップル層に受けてそうな気がする」



 変わり種その一は、白亜の宮殿のような内装で、中央に円形の大きなお風呂。

 その円形浴場の中央に設置された美麗な大理石調の彫刻から、噴水のようにお湯が湧き出し注がれる形になっている。

 照明から壁まで拘った凝った作りになっており、実に豪華絢爛。真ん中にどかりと腰掛ければ、王様気分が味わえそうな大浴場だ。

 同じようなデザインで統一された、豪華な露天風呂ももちろん隣に作っておいた。


 二人の両親たちは逆に落ち着かないとデザイン案の段階では少し不評だったが、竜郎と愛衣からするとこういうもののほうが目新しく興味を惹かれた。

 菖蒲もデザインに感じるところがあったのか、こちらの浴槽でははしゃぐことなく内装に見入っていた。


 変わり種二つ目は、南国風のプールのような大浴場。外側の露天風呂はジャングルに流れる川に入っているような気持ちが味わえる流れるお湯が循環していたりと、一風変わった作りになっている。

 ウォータースライダーのような遊び要素も、各所に設置されていたりもした。



「どっちかというとここはお風呂っていうより、遊泳プールに近いか」

「子どもたちと水遊びならぬ、お湯遊びがしたいときに来たりするといいかもね」

「ニーナも遊びたい!」

「「あう!」」

「また今度遊びに来ような」



 当然のようにヤシの木などの植物や土も全て竜水晶製のレプリカなため、木によじ登ったり暴れたりしても壊れたり浴槽を汚したりする心配もない。

 ここは子供の遊び場といったイメージが一番強い、そんな大浴場に仕上がった。


 変わり種三つ目は、小さな一人か二人が入れる程度の浴槽が乱立した様々な種類のお風呂が楽しめる空間。

 ジェットバスに電気風呂、アロマ風呂に炭酸風呂。他にも壺風呂や打たせ湯などなど、ありとあらゆる種類を調べここにかき集めた。

 ついで岩盤浴や砂塩風呂などお湯と関わりのない、特殊な形態のものもここでは体験できるようになっている。



「普通のお風呂に飽きたら、ここに来てって感じかな」

「その日の気分で色々選べるのもいいよな。本格的に整備が終わったら、俺も毎日ここに入りに来るかもしれない」

「いいねぇ。もうお家のお風呂なんて、入れなくなっちゃいそうだよ」

「ははっ、言えてるな。部屋も全員泊まっても空きがあるくらいにはあるし、将来的にはここで寝泊まりして過ごすことになるかもしれない」

「お母さんたちが、まさにそれを狙ってそうだよね」



 モヤ子が繋ぐ通路を使えば簡単に自宅と往復できるため、職場と行き来するのも容易いと、既に二人の両親たちは温泉旅館住み込み計画を立てつつある。

 同じ血を引く自分たちも将来的にはそうなるかもと互いに笑い合いながら、変わり種の大浴場づくりは切り上げ、最後にもう一つの風呂づくり建設のために次の場所へと向かった。



「うひゃ~、いい眺め。これを見渡しながら入るお風呂は、とっても気持ちよさそうだね」

「ニーナ、ここが一番好きかも! すっごく開放的で狭苦しくないもん」

「「う~!」」



 最後の一つは、巨大な旅館の屋上を目一杯に利用した大浴場。

 視界を遮る柵もできるだけ廃し、お風呂に浸かりながら島を一望できるようになっている。

 小さな火山も風景の一つとしていい味を出していて、ずっと続いているかのような広い海も悠然と湯に浸かりながら眺められる、なんとも風光明媚ふうこうめいび溢れる贅沢な露天風呂だ。


 また雨が降ったときには透明度が非常に高い竜水晶のドームが展開できるようになっており、そういう日には光をドームに反射させてオーロラのような幻想的な天井に変えたりと、他にも様々なイルミネーション的なギミックが用意されており、自然の美しさ以外もここで楽しめるようになっている。



「これで今、俺と月読ができる火山島の建築は終わりだな」

「────(そうですね)」

「また他にもこういうのが欲しいってなったら、簡単にできるんだよね」

「島丸ごと全部俺たちのものってことだし、増築できるだけの空き地は他にも残ってるからな」

「旅館二号、三号とかいう展開も、いずれありえちゃったして」

「水場はカビとかも発生しやすいから管理が大変そうだが……まぁ、最近のリアの魔力頭脳の発展を見てると、それもなんとかしてしまいそうですらあるからなぁ」



 作るだけなら大した手間はないため、まだまだこの島に建物を設置することはできる。

 いずれは島丸ごと利用したなんちゃって温泉街にしてしまうのも面白いか──などという妄想をふと思い浮かべながら、竜郎は火山島開発に区切りをつけ最後──六つ目の島へと愛衣たちと共に移動を開始した。

年始はいろいろとごたついているため、次週はお休みさせていただきます。

次の更新日は1月11日(木)予定です。それではまた、良いお年を!!

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