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食の革命児  作者: 亜掛千夜
第十九章 無人島開拓編

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第358話 無人島の視察へ3

 嵐が頻発することで人を寄せ付けない3つ目の島を去り、4島目の上空までやってきた。

 こちらは天候にも恵まれ、雨も一粒たりとも降っていないそよ風が吹く静かな海面が広がっている。



「おー、なんか凄い特殊な島だねぇ。それでウリエルちゃん、どれが今回の島なの?」

「ここ一帯の群島全てだそうです。一つ一つはさほど大きくもありませんしね」

「そういうパターンもあるのか」



 四番目の候補となる無人島は、なんと5つの小さな島からなる群島。

 世界の富豪たちはその中の1つとケチ臭いことは言わず、それら5つを1つの島として手配してくれていた。



「ここもまた、なるべくして無人島になってるって感じね」

「まずどうやって上陸するのかっていう話からになりそうだからね」



 愛衣の両親もそう口にしながら、目を丸くし窓の下を覗き込む。

 その島は5つともまさに断崖絶壁。海面から塔のような細長い岩山が上に伸び、海面から船で直接乗り込める場所が360度どこにもない。

 それこそ竜郎たちのように空を自由に飛ぶ術がなければ、島に入るたびに崖登りをするはめになる。

 そうしなくてもいいように文明の利器で何とかするという手は絶対に不可能ではないだろうが、そうするだけで膨大な労力と費用がかかる。大陸からも離れているので、普通は物資の輸送だけでもとんでもない苦労を強いられる。

 それだけのことをして登れるようにし上陸したところで、得られるのは高い場所から見下ろす海の景色だけ。貴重な物や珍しい生き物がいるということもなく、しいて言えば夜は星が綺麗だろうな──くらいのものしかない。

 こんな場所に普通の人は住もうとすら思わないだろう。



「私たちの世界にも、こんなビックリなとこもあったんだねぇ」

「インパクトだけでいえば、今のところダントツかもしれないな」



 しばらくジャンヌの空駕籠の中から見学してから、一番小さい島に上陸する。

 高さは中々のものだが、天辺の広さは狭い。子供でも簡単に一周できてしまいそうだ。



「この小ささ、落ち着きますわね。べたつく海風が少し気になりますけど、静かでとてもいい島ですわ。

 是非(わたくし)のお昼寝スポットにしたいところですの」

「あはは♪ フレイヤちゃんは気に入ったみたいだね♪

 でもフローラちゃんは、もうちょっと植物が沢山ある島がいいかな?」

「この断崖絶壁を利用した鍛錬方法があるかもしれない。ランスロットは、どう思う?」

「うむぅ……兄上よ。我はなんというか、こういう地形を見ているとウズウズしてくるのだ」

「こういうところで暴れたいんすか?」

「いや、違うのだ。普通はない特殊な地形だからこそ、創作意欲がわくというかなんというか……」

「創作意欲……? ああ、あなたの趣味のジオラマのような観点で言っているのですね?」

「そうなのだ! よく分かったな、ミネルヴァよ」



 断崖絶壁の五つの島が海から生えている情景は、これをベースにいろいろと盛って、より現実離れした面白い光景にできるのではないかとランスロットは考えた。



「それじゃあ例えば好きにしていいと言われたら、どんなふうにしたいんだ? ランスロットは」

「我の好きにしていいというのなら……そうだな。ツリーハウスというものを、マスターも知っているだろう?」

「もちろん。ああいうのも秘密基地感があって面白いよな」

「そうなのだ。そこから着想を得て、一つ一つの島に手を入れてツリーハウスならぬアイランドハウスを作り、その全てを長い吊り橋で繋げて行き来できるようにするのだ」

「あー、なんかファンタジー物の森のエルフっぽい住居の島版みたいな感じかな?」

「聞いた感じだと、それっぽいな」



 地球におけるゲームや小説に出てくるエルフの中には、大きな大樹の上に家や施設を作り、木の上でずっと生活するように描かれる場合もある。

 ランスロットはそういった空間を、海から突き出た5つの島でやってみたいと言っているのだ。



「ようは島としてというより、作品としてランスロット君は欲しいということみたいね。

 ならここはアスレチック場みたいにして、子供たちの遊び場みたいにしてもいいかもしれないわ」

「俺らなら上から落ちても平気だしな。俺もちょっと興味が出てきたな。島と島を繋ぐ吊り橋から、海に飛び込みなんかも楽しそうだ」

「あ、仁さん! 私もそれやってみたいかも!」

「ふふん、だろう。愛衣ちゃん。我ながらいい案だと思ったんだ」



 義娘になるであろう愛衣に賛同され、仁は得意げに顎を触り、その彼に竜郎は呆れた視線を投げかける。



「はぁ、大元を辿ればランスロットの案だろうに……。

 まあそれはいいとして、楓や菖蒲だけじゃなく、他の幼竜たちも含めて遊びまわれるアクティブなレジャー専用の島っていうのも一興か」

「質感だけ変えれば、頑丈な竜水晶で作っても雰囲気も壊れませんしね」

「リアもなかなか乗り気になってきているようですの。

 だったら島に囲われた海の中には、わたくしたちが入る逆水槽なんかを置いても面白そうですの」

「逆水槽ちゅうと、うちらが水槽の中に入って中から海中を見る──ちゅうことかいな?」

「その通りですの。上で遊んで疲れたら海の中を見て、ゆっくりくつろぐ癒しの空間。ランスロットはどう思いますの?」

「うむ! 海の中にも部屋や通路を作ったりするのも面白い作品になりそうなのだ」



 奈々の案は島に囲まれた内側の海の部分に、水族館のようなくつろぎスペースを海底に作ったらどうかという物だった。



「なんだか一島だけだった最初期の計画から、どんどん話が進んで膨らんでいくな」

「あはは、まあこれはこれで面白いからいいんじゃない? それにまだ妄想の話をしているだけだしね。

 残りの2島を見たら、やっぱりここだけでいいってなるかもだし」

わたくしにはそうは思えませんわね。どうせ次に行ってもここもああそこも欲しいとなる未来しか見えませんの。

 お昼寝スポットとしては中々に良さそうな場所ですし、わたくしも依存はありませんけど」

「ふふっ、そうね。皆楽しそうだもの、このまま私も全部貰ってしまえばいいと思うわ。

 私たちみたいな存在が、気兼ねなくくつろげる場所が一つだけというのも飽きてしまいそうだし」



 どうみてもこれまでの3島とこの群島の反応からして、開拓したときのことを既に全員想像してしまっている。

 レーラもこの世界を知り尽くそうとする中で、世界中のあちこちに拠点があった方が都合もいいと、全ての島の購入推進派にまわっていた。

 反対派がいるかどうかは別として……。



「確かになが~~い目で見てくと、いずれまたたつろーの眷属だったり、私とたつろーの子供だったり孫だったりって人数も増えてきそうだし、必要になってから増やすより最初に一気に手に入れて手を入れておいた方が効率的なような気もするね」

「まあ百年も消えてればもう俺たちのことを覚えてる人もいないだろうから、普通にまた新しい戸籍を作ってどっかの大陸で暮らしてもいいかもしれないけどな。

 それでもこういう気兼ねなくいられる場所は、沢山あるにこしたことはないか」



 これから竜郎たちはただの人間だったときには想像もしなかった、長い長い時を生きていくことになる。

 それだけの時を生きれば当然仲間や家族も増えてくる。

 そうなったとき秘密の漏洩を気兼ねなく、ありのままの姿で皆がいられる場所を、人が増えても慌てることなく開拓の済みの状態であるというのは、気持ち的にも余裕が出てくるだろうと改めて全ての島を手に入れるメリットを見出した。



「そうなってくると他の2島も早く見たくなってきたな」

「ヒヒーーン(いつでもいけるよー)」

「ありがとう、ジャンヌ。でもその前に、いちおう他のところも見てからにしよう」



 群島の一部である残りの小島4つも見て回り解魔法で調べたが、どれもしっかりと海底と繋がっており島の地盤がスカスカで少し手を加えてだけで崩れそう──なんていうこともないと判明。



「これなら補強もほとんどなくて良さそうですね」

「うむ。それはいいことを聞いたのだ。駄目でも補修すればいいのだろうが、やはり自然のままの部分も生かしたいのだ」

「じゃあここを買うことになったら、ランスロットに完成図案を任せてみようか」

「任せてほしいのだ、マスター。きっといい物を描いてみせるのだ」



 一番乗り気なランスロットが名残惜しそうにジャンヌが背負う空駕籠に乗り込むと、竜郎たち一行は5つ目の島に向かってひとまずその場を去っていった。

次も木曜日更新予定です!

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