第160話 ヴィント国とのこれから
体調を崩してしまったので、いつもと比べてかなり短いです(汗
すいません。
無事に契約も済ませると、いいものを食べさせてくれたお礼にと、もともとグレウスが個人的に所有していた宝飾品をサンプルとしてくれることになった。
一度は断ったものの、受け取らなければ素直に返してくれそうになかったのだ。
グレウスはおもむろに、2メートル以上ありそうな豪華な装飾箱を目の前に置いた。
『この箱でっかすぎて、古代の王様のミイラとか入ってそうだね』
『竜からしたら小箱でも、俺たちからしたら豪華な棺に見えてくるよな』
見返りを求めていたわけではなかったが、ただで竜郎たちでも貴重な食材を食べてしまったというのは、イフィゲニア帝国から一国を任される王の矜持が許さないとのこと。
実際はタダより高いものはない精神な部分が大きかったのだが。
「中を見ても?」
「ああ、それはもうタツロウのものだ。箱も含めて好きにしてくれ」
そういうことなら遠慮なくと、竜郎は箱のフタを持ち上げる。
システムのない竜郎ならば自力で開けるのは不可能なほど、重量感のある蓋が垂直に開き、中に入っているものが目に飛び込んできた。
「箱もそうですが、中身もおっきいですの」
「あたしらサイズじゃないっすからねぇ」
奈々とアテナが思わずそう言葉を漏らす視線の先には、14メートルサイズの竜──そう例えば目の前にいる竜王のような存在が腕に嵌める装飾品が。
形状は数珠に近い。いくつもの角が丸い四角形に、すべて違う文様が刻まれた最高純度のヴィント鉱石を連ねたもの。
元の素材もあって煌びやかだが、民族系の装飾品のようで主張が激しすぎず素人目に観ても趣味がいい。
ただ大きすぎて《真体化》したジャンヌなどでなければ、身に着けることもできないのだけが難点ではあるが。
「もの凄く良さそうな物なのですが、ほんとうに貰ってもいいんですか?」
「ああ、かまわない。一度もつけることなく、しまったままになっていたもの。先ほどの礼なんだ。好きなように使ってくれ」
「分かりました。それでは、ありがたく頂戴させていただきます」
ここでまた問答するわけにもいかないので、素直に頷き《無限アイテムフィールド》に収納しておいた。
それからまた、今度はヴィータとアヴィー2人と王族たちが戯れる時間を設けたり、竜郎たちの近況などの世間話に花を咲かせたりと、なんだかんだとかなりの時間をそこで過ごしてしまった。
「ああ、もうこんな時間か……。名残惜しいが、今日はこれまでにさせてもらってもいいか? タツロウ」
「はい。今日は、いろいろ話せてよかったです。では例の件も」
「ああ、任せておいてくれ。こちらとしても、そのほうが助かるからな」
例の件とは、この国に自由に立ち入れるようにイシュタルの許可も含めて相談してくれるというもの。
この件に関してはイシュタルの了承は得られていて、あとは竜王たちがそれでいいというのならという状況らしいので、あとは帝国と王国側で処理をしてもらうだけ。
いちいち正規のルートで、大仰に皇族関係者を連れて渡っていくのも時間と労力がかかる。
竜郎たちもあちこちに行ったり来たりしているので、それはさすがに面倒だし通いたいとは思わない。
そうなってくれば、ヴィータたちも顔を見せに来ることもできないので、そちらとも親交を深めていくのも難しい。
それに王国と取引するのに、転移系の行動ができないというのも手間。
そういうこともあって、この王城がある付近に空いている土地を用意してもらい、竜郎たちが自由に出入りできる場所を作ってもいい、ということにしようと内々で話を通したというわけである。
「これで、こちらも行動しやすくなります。それでは──また」
「──ああ、また会おう」
もっとゆっくりヴィント王国観光もしたかったが、ウィルアラーデを連れまわすにも限度がある。
なのでそちらは竜郎たちが許可を得た国の中の範囲にはなるが、出入りが楽になったころにでも、ペーメー自らが案内をしてくれるとも約束もしてくれた。
なのであとはもう帰るのみ。改めてグレウスはウィルアラーデに大仰な挨拶をしたところで、竜郎たちは再び空路から正規の手順を踏んで出国し、カルディナ城へと帰るのであった。
次話は金曜更新です。




