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Dead Planet  作者: 尸音
44/48

6-2

3人は両開きの扉の鍵を内側から開けた後にそこを開放し、そこから荷物を搬入し始めた。



やってみて気付いたが、エラミルが開けた方は荷物の積み込みには向いていない。


つまり、この大扉は荷物運搬専用の通路だった訳だ。



珪都と優香は1つずつ運ぶが、エラミルは3つほど重ねて同時に運んだ。




宇宙船の貨物室には全く物が置いてなかったが、別の星にさえ行ければ助かる事を考えると、それほどたくさんの荷物は必要ない。


と言っても1番近い星にどれほどかかるか分からないため、なるべく多めに積み込んでおくことにした。



また、同じ棚の同じ位置から順に積み込んでいくと中身が全部同じになってしまうために色んな場所から少しずつ抜き取ってくる手間も生じたが、生還を目の前にした3人の気にする所ではなかった。



ゾンビにエレベーターを使うほどの知性が無いと考えれば、ヤツらが侵入してくるとすればシャッターの奥の搬出入口からしかない。


だが、もしヤツらが入ってきたらすぐに飛び立てばいい。


入り口から宇宙船の位置までは距離があるから、走ってくるまでに扉を閉めてしまえば安全に出船できる。








何もかも万全だった。








数時間、1体の死体も見ずに3人は積み込みを完了した。


およそ2~3週間分の水と食料を積み込んだから、いくら何でも餓死の心配は無い。



「よし、あとは飛び立つだけだ。」


「芳樹を迎えに行くのが先ですよ!」


珪都が力強く念を押したが、エラミルは「分かってる」と珪都をなだめた。




この大型の宇宙船は恐らく惑星間貿易用だったのだろう。


貨物スペースだけが広く、人が乗る部分は簡素そのものだった。


その分操縦に手間取る事も無い。



だが、乗り込むと鍵が無かった。



鍵が無ければ出発できない。




「お前らはここで待ってろ。」


「え、エラミルさん何処へ?」


優香が久々に心配そうな顔をして聞いた。


「この船の鍵を探してくるだけだ。多分、さっき倉庫から出てきたあの中に運転手がいると思う。」



2人は鍵が見つからなかった場合を心配してか、エラミルの身の安全を心配してか、あるいはその両方を心配して眉をハの字に曲げた。



だが、エラミルは先ほどの交戦中、何人か同じ服装をしているゾンビがいるのに気付いていた。


それがここの従業員だとすれば、その中にこの船の運転手がいても不思議ではない。


それに、これほど無難な輸送用宇宙船なら、1人だけが運転するという事もないハズ。



つまり、複数人が鍵を持っているかもしれない。




エラミルは走って死体の確認に向かった。









――――――









先ほどまで元気に動き回っていた死体のうち、同じ服装のゾンビのポケットだけを手前から順に探っていく。



死体―――特に、ここまで腐敗の進んだ―――に触るのはいただけなかったが、もうすぐシャワーを浴びて服を着替えられると思えば苦しくなかった。


もう血と汗でベタベタの軍服を身にまとうのはごめんだ。



脱出したらもう軍には戻らずに別の星で静かに暮らそう。






……どうせ、リディももういない。







チャリッ



手ごたえを感じ、急いでポケットから抜き取ったそれは確かに宇宙船用のキーだった。




「よしっ…!」


エラミルはそれを強く握り締め、高鳴る鼓動をどうにか抑えながら倉庫へと走った。














丁字路に差し掛かった時、何かが横から飛び掛かってきた。













――――――













「鍵、あるかな。」


優香がうつむいて言う。



「大丈夫、あるに決まってる。」


珪都もなぐさめながら心のどこかで鍵が見つからなかった時のことを考えていた。




確かに、鍵が見つからなくても最悪トラックでここは脱出できる。



だが、宇宙船でなければこの星からは出られない。




結果的に、延命できただけで振り出しに戻ることになる。




1度生還を確信してしまった今、それを覆された時を想像すると身震いするほど恐ろしかった。










―――2人のネガティヴ思考が引き金になったかのように、不意に、エラミルの悲鳴が聞こえた。










それは広い倉庫に響き渡り、珪都たちの耳にも容易に届いた。




「エラミルさん!!!!」





2人はさきほどとは違う理由で鼓動を高鳴らせながらエラミルの元へ急いだ。




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