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Dead Planet  作者: 尸音
41/48

5-6

ゾンビ道の先には、大きなエレベーターがあった。



優香が降りていったのは火を見るより明らかだ。


それを更に根拠付けるかのように、エレベーターは降りっぱなしになっていた。


エラミルは迷わず昇降ボタンを押した。



エレベーターが来るまでの数秒が何時間にも感じられるほど、珪都は焦っていた。


焦っていたというより、早く生きている方を確認したい気持ちで落ち着かないといったほうが良いだろうか。


心の奥底で、珪都は優香の生存を願っていた。


エラミルがリディの生存を、それが絶望的であることを確信しても尚、願っているように。



エレベーターが到着し、扉が開くと3人は中に入り、さっさと下へ降りた。




地下の空気は地上のそれよりはるかに冷たく、何となく死を連想させた。



こんな状況でなくても少しは思ったかもしれない。




珪都は身を震わせた。


3人は突き当たりまで来て、左右を確認した後、左側の閉ざされたシャッターの方へ駆け寄った。



早速開閉シャッターを押す。


…が、シャッターはウンともスンとも言わない。



「壊れてんのか?」


「じゃあ、優香は反対の搬出入口の方へ?」


「商品を搬送するための通路だから外へ通じているのはアイツにも分かるハズだ。1人で外に出ても意味がないこともな。」


エラミルが言い、珪都は首をかしげる。


何しろ、ここまで来たら必ず来るべきこちら側のシャッターは開かないのだ。



「じゃあどうするのだ? またさっきみたいに爆破できんのか?」


「もう手榴弾がない。」


「機械壊したら開きますかね?」


「分からんな。もしかしたら、それこそ永久に開かなくなるかもしれないぞ。」




3人がシャッターの前で頭を捻っていると、シャッターが向こう側から思い切り叩かれた。



振動する鉄の板の反響が3人を威嚇する。






と、何十人もの人間が向こうからバシバシとシャッターを連打し始めた。



…人間なのかどうかは定かではないが、そうである可能性はここでは限りなく低い。





3人は再び緊張感を取り戻してシャッターから急いで離れた。



ルーベクは事態の急であるのを確認すると、1人でエレベーターへ駆けていった。




銃をシャッターに向けて目を血走らせていた2人がそれに気付いた時には手遅れだった。





「おい、待て!!」




エラミルが叫ぶ声は閉じていくエレベーターを通り抜けて確かにルーベクに届いただろう。



だが、エレベーターはルーベクを乗せて地上へと戻っていった。



「クソッタレ!!!」



エラミルが叫びながら構えを直す。


もしルーベクが無事に戻ってきたら問答無用でゾンビの餌食にしてやろうと心に決めた。




「どうします? 出てきたら搬出入口の方に後退しながら迎撃するしか…。」


「それしかねえようだな…。お前の射撃技術次第だ。」




珪都はもうゾンビを撃つ事に躊躇をしないようになっていた。


自分達が生き残るため、自分達をあの世へ引きずり込もうとする死を退ける事に、抵抗を感じなかった。











――――――












ルーベクはエレベーターの中で一瞬フルスピードになった鼓動を落ち着けるために2、3度深呼吸した。



「全く、頼まれたとはいえ、あの興味深い花粉を研究するために人体実験をしてきた罰が当たったか…。」


心の中で愚痴りながら、エレベーターが到着してから自分はどうすればいいのだろうと思い返した。



どうせ戻っても怒り狂ったエラミルたちに殺されるか、半殺しにはされるだろうことは目に見えている。


かといってこちらに残っていてもいつまで経っても脱出できないし、襲われた時に反撃する方法がない。




しばらく待って、ヤツらが脱出した後くらいに残ったトラックを頂戴して逃げるか…。



このビルはなかなか大きな商社ビルだ。


配送に向かったままのトラックを差し引いても、1台持っていかれてもうおしまいということはないだろう。




心の声で自分を落ち着かせる。




エレベーターが開いた時、目の前には3体ほどゾンビがいた。


別に待ち構えていたのではない。


ただ、偶然、そこにいた。



ルーベクは青くなって降りのボタンを押した。



扉が閉まるまでに気付かれ、閉じる扉を無理矢理開放された。




誰も助けてくれる者のいない空間に、あまりにむなしく断末魔が響く。



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