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3人はまたゾンビの道に沿って進み始めた。
5分も歩かないうちに、ゾンビの群れがたむろしている所までたどり着いた。
「優香かリディさんはこの近くに隠れてるんでしょうか?」
「多分な…。」
エラミルはその群れの規模がそれほど大きくないのを確認し、珪都に攻撃の指図をした。
2人は角から飛び出し、すかさず銃撃を開始した。
音に気付いてこちらに走ってくるが、多少距離があった上、先制攻撃だったのもあって敵はこちらに来るまでに全滅した。
ルーベクは1人で角に残ってガタガタ震えていたが。
「行くぞ、ルーベク。」
エラミルが言い、ルーベクは尚も怯えながら角を出てきた。
エラミルは周囲を見渡し、ゾンビの道も、他の部屋への扉も無いのに気付いた。
「変だな、一体何処に…。」
「エラミルさん、あれ。」
珪都が閉ざされた防火シャッターを指差した。
確かに、この辺りでゾンビの道が途絶えていて、死亡した痕跡も無いのだから、生き残った方が逃げていったのはこのシャッターの先しかない。
だが、そのシャッターを開ける装置は見当たらない。
「向こう側にしか開閉装置がないってことか?」
ルーベクが1人で分析している。
シャッターと言っても壁のようなものだから、銃撃で無理矢理壊して通ることは不可能だ。
「他の道を探すしかないか。」
エラミルが言い、珪都は不服そうな顔をした。
今まで順調だったからか、道が分からなくなった時にそれを探す手間が生じたのは必要以上の負担だった。
3人はそこを通り過ぎて進み始めた。
だが、そうなると一気に道が分からなくなり、3人はさまよい続けた。
よく考えれば、あのシャッターの向こうからまたゾンビの道が続くとは限らない。
もし続いていなければ生存した側を探し出すのは絶望的だった。
しばらく不毛な行軍を続け、敵もいないことで緊張感が次第に解け、疲れだけが残った。
「おい、しばらく休まんか。」
ルーベクが弱音を吐き始めた。
「お前さっきまで死を覚悟してたくせに急にのんきになったな。」
エラミルが鋭く指摘して、大の老人が目に見えてスネた。
だが、このまま歩き続けるのもやはり体力の浪費だし、何より危険である。
――――?
ふと、前方の天井にある通気孔のパネルが動いているのが見えた。
と思っていたら、ググッと押し出されて床に落ちた。
何の緊張感も無かった空間に金属が落下して不協和音がこだまする。
3人が身構える間も無く、その穴からゾンビが産み落とされた虫のようにわらわらと出現した。
「走れ!」
エラミルが叫び、3人は踵を返して走り出した。
最初に通気孔を通って追いかけてきたヤツらが残っていたのか、あるいは通気孔の中も移動できることを学習したのか。
とにかく3人はなるべく距離を取るために走った。
やはり構造が分からない死地をウロウロするのは危険だった。
言うまでもないことを、3人は先ほどまで忘れていた。




