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リディと優香は途中で適当な部屋に逃げ込んだ。
あまりにも敵が多く、ほとんど追い詰められた状態に陥ったのでまだ退避できるうちに退避したのだ。
部屋は広めのオフィスといった感じで、机やパソコンがたくさん配置されていた。
そして例のごとく、書類や分厚いファイル、血痕がほとんど床の模様のように均等に、たくさんぶちまけられていた。
「参ったな……。」
リディが苦しそうな表情をして机に腰かけ、息を整えている。
優香にはリディがどう苦しいのかが分かった。自分も今同じ苦しみを味わっているから。
休む間も無く全ての神経を集中させ続ける精神的疲労。
その見た目への表れ方が何故リディの方が大きいのかは分からなかったが。
優香は今まで使っていたハンドガンからマガジンを抜き、残弾を確認した。
―――が、もう2発しか残っていない。
ベストのポケットに入れてあったマガジンは既に底をついている。
あとはサブマシンガンしかないが、それこそ構えたことすらない銃だ。
扱えるようになるまで敵が待ってくれるハズもない。
マガジンを銃に込め直した後、優香も大きく息を抜きながら床に座り込んだ。
急にリディがこちらを向いて聞いてきた。
「私はもう弾がそんなに残ってない。アンタは?」
「ハンドガンはあと2発しか…。サブマシンガンの方はまだ使ったことがないです。」
「そうか…。それも練習させとくんだったね。」
リディが後悔しているような、申し訳なさそうな表情をしながら正面を向き直す。
優香は一旦ハンドガンをホルスターに戻し、サブマシンガンを構えてみた。
見よう見まねのため、全く安定していない。
だが、リディはそれを見てももう指導する元気さえ残っていないらしかった。
優香も自分のぎこちなさに気付いていない訳ではなく、ああでもないこうでもないと、1人で試行錯誤を繰り返す。
リディはそんな優香を眺めながら、また軍人時代を思い出していた。
今では鉛筆を使うように扱える銃火器だが、もちろん初めての時は優香と同じことをしていた。
慣れるのはリディの方がよっぽど早かったが。
リディは不意に立ち上がり、優香に近付いていって無言で優香の姿勢を修正していった。
優香も成すがままになり、リディが離れたとき、優香は綺麗なフォームで銃を構えていた。
「しばらくそのまま歩き回ってみな。」
リディが言うと、優香は頷きながら歩き出した。上半身を動かさず、足だけで動く感じだ。
まだ不自然なところはあるが、そこはもう実戦の中で自分の撃ちやすいように、自分で修正していく他はない。
そのうち勝手にきちんとしたフォームが身に付くはずだ。
そこで、リディは優香の近くの机の影からぬっと立ち上がる人影を発見した。
一目でそれはゾンビだと認識し、リディは迷わず射撃した。
銃声で優香もゾンビに気付いたが、その時にはそれは死体へと成り果てていた。
驚嘆しながらリディの方を振り向いた優香の表情が、今度は驚愕へと変わった。
それでリディが異変に気付いた時、耳元で咆哮がした。




