第3章 迷索 ~Quest~
準備ができた4人は建物の中へ入った。
自動ドアはさすがに動かなかったが、千切れた誰かの腕がひっかかって隙間があったので力ずくで抉じ開けた。
中に入ると受付のような空間だった。
正面が受付になっていて、両方の壁にはどこかへと通じる扉がある。
それまで冷たい雰囲気を少しでも温かくしていたと思われるささやかな植木は、人間の血で染まって無残に倒れていた。
珪都と優香は油断無く銃を未開の扉の方へと向けている。
「…早速分かれ道か。二手に分かれよう。」
リディが言った。
「そうだな。組み合わせはどうする?」
「私とユカ、エラミルとケイトでいいだろう。」
「……なるほど。了解。」
2人の間では、銃の腕前がリディ>エラミル、珪都>優香という不等式が成り立っており、リディが優香に、エラミルが珪都につくことで戦力を平等にするという暗黙の意図があった。
だが、珪都と優香には単に性別で分けたようにしか思えず、また、それについて突っ込んで聞くつもりも無かったので、ペアはすぐに決まった。
「俺とケイトは左側へ行ってくる。」
「じゃあ私らはこっちだ。」
「通信機が無いからな…。何かあったらここで落ち合おう。何か見つけても最初は手をつけずにここに来て相手を待つ。良いな?」
「ああ。」
珪都と優香が見ている前で話がトントン拍子で進んでいく。
珪都はエラミルに、優香はリディに、先導されるままそれぞれの死地へと赴いた。
――――――
「ケイト、さっきまでとは違って、ここでは確実に頭を撃ってしとめろ。距離は近いし、相手は向かってくるんだ。落ち着いて狙えば難しい事じゃない。」
「はい。」
エラミルがアドバイスした。
2人は扉の前に来ると、エラミルがノブに手をかけて珪都を見た。
珪都もエラミルに視線を送る。
エラミルは体で呼吸をしてカウントを始めた。
―――――3
―――――2
―――――1
扉が勢いよく開け放たれ、エラミルと珪都は任務を開始した。




