聖女の力と聖剣エクステリア
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ヤバい秘薬でスピードアップしたイーサンの乗る五番艦。フェイ達はどうする!?
「そ、そんな! どうやったらこんな速度が出るんだ!」
タイラーギルド長が悲鳴のような声を出すのも無理はない。スピードを上げた五番艦は無茶苦茶な速度で大王烏賊の住処へと向かっていく。反対に、俺達の船は早くもスピードが緩み始めている。
(無理もない。こっちだって無茶な速度だったんだからな……)
だが、このままでは……
「イーサン……」
タイラーギルド長から歯軋りと共に悲鳴のような声が漏れる。それを見たリィナは伝声管に飛びついた!
「みんな! あとちょっとだから頑張って! 〔ピュアウィッシュ〕!」
突如船底から歓声が上がる。疲労が完全回復したことに対する驚きのせいだろうか。回復魔法を疲労回復に使うなんて普通はしないからな。
(それに目視出来ない相手に回復魔法をかけるなんて……)
事前に相手の居場所などを知っていたことに加え、相手が移動していない等々といった条件が満たされているからなのだろうが、誰にでも出来ることじゃない。
「みんな、力を貸して! 〔白陽の加護〕!」
スキルまで!?
(そうか! 〔白陽の加護〕はパーティ単位じゃなくて、エリア内の味方にかけるバフだからか)
まあ、その分、他のスキルよりは効果は薄い──あくまでも「聖女」のスキルの中ではだ──だから……
「うぉぉぉ! これなら!」
「リィナちゃん、ありがとう! 力がみなぎるぜ!」
やはり効果は十分過ぎるみたいだな。
ゴォォォ!
俺達の船が五番艦を猛追する! が……
「あ、あれはなんだ!?」
もう少しで追い付くというところで、五番艦の後ろに船を楽に飲み込めるくらいの大きな何かが、現れた。
(烏賊? いや、大王烏賊か!)
大きすぎて一瞬判然としなかったが、目の前にあるねは烏賊の足。ヤツめ! 何かを察して住処から出てきやがったな!
「よ、避けられない!」
操舵手が悲鳴を上げる。くそっ……どうするか……
「任せなさい、〔剣鬼開放〕!」
魔剣から立ち上った紫のオーラはレイアではなく、舟そのものに吸い込まれる! すると、船の速力があがり、船は辛くも大王烏賊の足から逃れることが出来た。
「一体何が……」
タイラーギルド長は何があったのか分からないといった感じで頭を振る。まあ、直撃するかと思っていたものが突然回避できたんだからそうなるよな。
「まだ終わっていない! 全員気を引き締めるんだ! 大王烏賊はまだ来るぞ!」
俺がそう叫んだ次の瞬間、剣に眩い光を纏わせたイーサンが大王烏賊に飛びかかった!
※
(公認勇者イーサン視点)
イビルの秘薬によるスピードアップで相手を引き離した俺達だったが、奴らはそこからさらに速力を上げて追いかけてきた!
(馬、馬鹿な! 俺よりも効果が高い秘薬を持っているというのか!?)
有り得ない! 奴め、どんな汚い手を!? いや、これはまやかしか……
「イーサン、このままではすぐに追いつかれる! どうするんだ!?」
仲間の一人がそう叫ぶが……うるさいな。今、忙しいんだよ!
(まやかしだとしたら現実は今……)
ザッパーン!
突然、奴らの船の前に巨大な何かが現れ、進路を塞ぐ。ありゃ何だ?
「大王烏賊!? 何でこんな場所で!」
あ、言われりゃ烏賊の足みたいだな。いや、そんなことより……
(チャンスだ!)
俺は聖剣エクステリアを抜き放った!
「でりゃゃゃ!」
勇者である俺が聖剣から放つ全力の斬撃! 下手すれば大王烏賊の足は真っ二つに……
読んで頂きありがとうございました! 次話は来週月曜日の朝7時に投稿します!
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