Auld Lang Syne
昔は夕方になると、村には『蛍の光』が流れていました。
ああ、あなたたちがよく聞く、三拍子の『別れのワルツ』じゃありませんよ。四拍子のちゃんとした『蛍の光』――"Auld Lang Syne"が――。あの白いのっぽの防災無線から空を渡って、青くそよぐ田の上、葛の上とゆったり流れていったんです。私も歌えますよ。
Should auld acquaintance be forgot, and never brought to mind ?
Should auld acquaintance be forgot, and days o' lang syne?
古き友も古き昔も忘れられ、もう心を過りもしないのか――、そんな意味でしたっけ。
……いまみたいになったのは、平成に入ってからですね。
ああほら、聞こえてきました。
「こちらは、F川小学校、放送室です」
「きょうも」
「僕たち」
「私たちを」
「見守ってくれて」
「ありがとうございます」
……子供も減りましたからね。集団下校もできなくなって、長い登下校の間も、道々誰かが気にして見ていければなりません。あれは、いまから帰りますの放送です。
…………ええ、F川小は廃校になりましたよ。ずっとずっと前に。でも、皆黙って聞いてましたねえ。
狐の悪戯だなんて言いながら懐かしげに――たまには狐も粋なことをするんですよ。
いまだって、こうして墓場にまで聞こえてくるんですから。
Should auld acquaintance be forgot, and never brought to mind ?
Should auld acquaintance be forgot, and days o' lang syne?




