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Mr.NO-GOOD´  作者: 慎之介
第八章:魔界と運命編
94/106

二話

わっふ~!


そおい!


う~ん……まあ、こんなもんかな?


新たな大陸で大きな湖を見つけた俺は、食料を確保する。


魚を五十匹ほど手掴んで見ました。


【本当に野生的ですね】


『こいつの人生は、サバイバルそのものじゃからな。たぶん、人類が死滅してもこいつだけは生き残る』


人を人間じゃないみたいに言うの、やめてくれません?


【あなたを人間と認めると、何か他の方に悪いような……】


それひどくない!?


てか、人間じゃないこと固定してるよね?


ジジィィィィ!


若造が最近反抗的だぁぁぁ!


『わしも同意見じゃ』


感じ悪っ!


最低だ! お前ら!


「バシャ……」


おう!?


このザバッ、バシャンって水の音はもしや?


おっ! おおう!?


ふっ……。


ふへへへへっ。


湖、水浴びのような音、そして俺……。


はい! キタこれ!


また、裸が拝めるんじゃね?


『またか。ろくな事にならんぞ?』


【あなたは最低です! 覗きは犯罪なんですよ!】


知ったことか!


てか、覗かないなんて俺じゃない!


いや!


覗かないと死んじまうんだ……。


俺の魂がな!


【最悪ですね……】


『無駄じゃ、若造』


スタンバイ!


俺は、気配を消し体が茂みに隠れるように、伏せたまま音のするほうへ進む。


さ~て……。


俺の唯一といってもいい、幸運の時間が……。


う~ふ~ふ~ふ~ふ~。


『死ね、変態』


変態違う!


おお! 見えてきた!


さて、今日の女の子は~っと。


スレンダーで……。


長い黒髪……。


大きな瞳……。


大きな口……。


体のわりに小さな翼……。


頭から生える二本の角……。


体を覆う頑丈そうなうろこ……。


【あの……】


鉄でも切り裂けそうな爪と牙……。


あれ?


え~……。


女の子じゃなくなくない?


てか、ドラゴンじゃね?


『お前はそんな趣味まであるのか?』


ないわ!


【ギリギリ、メスでしょうか? わかりませんけど】


俺も分からね~……。


てか、何だよ!


久々に、女の子の裸が見えると思ったのにぃぃぃ!


でっかい爬虫類じゃん!


あ~あ……。


やる気なくなった。


【天罰です】


『と、言うよりもそんなにうまい話は早々ないということじゃ』


唯一の俺の幸せぇぇぇぇぇ!


はぁ~……。


やってらんね~……。


ドラゴンって、生き残ってたんだなぁ。


『どうやら、モンスターではないな』


ああ。


【魔力事態は強い様ですね】


でもこの魔力の感じは、獣に近い。


【流石、新大陸という事でしょうか?】


神とかが無理やり作ったドラゴンは見た事あるけど、まさか実在の生物だったとはな……。


『しかし、過去の映像にもいなかったと思えたが……』


まあ、あの記憶も百パーセント全ての記憶って事は無いだろう。


どっかにいたんじゃね?


【獣が魔力で変化したんでしょうかね?】


かもな……。


う~ん。


オオトカゲとかかな?


『まあ、モンスターではないならば気にする必要もあるまい』


まあ、そうだよね。


しかし、水浴びしてるでっかいトカゲか……。


物凄く萎えた……。


****


気分の萎えた俺は、再びの失敗をする。


俺は、自分が気を抜くとろくな事が無いと知っているのに。


頭が悪くて不器用な俺は、気を抜いてしまう。


きっとこんな時でも、師匠は気を抜いたりしないんだろうな。


あの人は本当に完璧だ。


俺みたいに才能のない人間が、夢を見てはいけないんだろうと思う。


それでも、頭の悪い俺はあの人を目指す。


あの究極で完璧な死神を……。


『お前はアホかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』


アホじゃありませぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!


『何故? このタイミングで格好をつける!』


【来ました! 来ましたって!】


分かってるって!


走っていた地面を右足で強く蹴り、自身の走る軌道を変える。


そして、自分に向かってきた炎の球を回避した。


岩がぁぁぁぁぁぁ!


岩がちょっと溶けてるぅぅぅぅぅぅぅ!


当たったら死ぬ!


きっと死ぬ!


絶対死ぬ!


キャァァァァァァァァァァ!


えっ?


何してるかですか?


女の子じゃなかった事で萎えた俺は、気配を消すのをやめてその場を立ち去ろうとしたんだ。


ええ! ドラゴンと目があいましたけど、何か?


そのドラゴンが、走る俺を空から追いかけてきてますけど、何か?


はいはい! そのドラゴンは口から吐いた炎球で俺を殺そうとしてますが、何か~!?


『こんな時に、電波と交信するなぁぁぁぁぁ!』


【早く! 早く!】


****


俺は湖を囲う森を抜けて、広大な平原を疾走していた。


既に十五キロは走っているのにぃぃぃぃ!


まだ追ってくる!


どんだけ殺したいんだよ!


隠れようにも、隠れる場所が無い!


その上、炎の球がいいタイミングで飛んでくるから、トップスピードにものりきれない!


狩られる! 狩られちゃう!


ち……地平線が見える!


この平原はどんだけ長いんだよ!


森の中で、舐めずに全力で逃げるべきだったぁぁぁぁぁ!


しくじったぁぁぁぁぁぁぁ!


嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


****


「ギャア! ギャア! ギャア! ギャア!」


おおう?


俺は、少しだけ大きな岩の後ろに隠れる。


そして、ドラゴンの様子をうかがう。


あれは……キメラ?


『グリフォンじゃな。縄張りなんじゃろう』


ドラゴンは、十匹の鷲の頭と翼をもった獅子の体のモンスターに囲まれていた。


ざまぁぁぁぁぁ!


調子に乗って、俺を追いかけてくるからだ!


相手はモンスターだ!


とっとと自分の縄張りへ帰れ! 馬鹿!


う~ん……。


ドラゴンってのは、プライドでも高いのか?


【生態は分かりませんが、そうかもしれませんね】


圧倒的に不利な状況なのに、ドラゴンは応戦を始めた。


『魔力はドラゴンの方が、少し高いようじゃが』


十対一じゃあ、流石に無理だって。


大人しく帰りなさいよ~!


ほらぁぁぁぁぁ!


いろんな方向からタックルされてるじゃん!


【衝撃波? 風の魔法でしょうか?】


多分な……。


見えないけど、翼を羽ばたかせたらドラゴンが体勢を崩してる。


おお!


やっぱりあの炎の球強いな!


炎の球が直撃したグリフォンが、燃えながら落下する。


地面につく前にその体は、塵へと戻った。


あぶね~。


あんなの当たったら、俺死ぬって。


『あの炎も、魔法のようじゃからな』


しかし……。


やっぱり、駄目みたいだな。


善戦していたドラゴンも、三体を焼き殺した所で地面へと落下した。


上空をグリフォン七匹が旋回している。


うん?


炎が出ないのか……。


ドラゴンは、必死に口を開いているが全く炎が出なくなっていた。


俺に必死になりすぎのせいだ。


【あれだけ乱発すれば、もう出ないでしょうね】


グリフォン達はドラゴンをなぶる様に、上空からのタックルを繰り返す。


「キュ……キュオオオ……」


ドラゴンが初めて鳴き声を発した。


それも、弱弱しくまるで助けを求める様な……。


『またか……』


元は俺のせいだしな……。


【殺されそうだったんですよ?】


まあ、何時もの事だ。


ほいっと!


自分に全力で突っ込んでくるグリフォンに、目を瞑ったドラゴン。


しかし、何故か何時まで経っても痛みも衝撃もないので、恐る恐る目を開く。


その目の前で、グリフォン三匹が三日月状の衝撃波を受けて、塵へと変わって行く。


何が起こったかわからないドラゴンは、残りのグリフォンが塵へと変わるのを只呆然と見つめている。


最後の一匹を塵へと返した俺は、ドラゴンへと近づく。


う~ん……。


『違和感があるか?』


体の出力が上がり過ぎてる。


パワーアップしてるのは有難いけど、これじゃあコントロールするのが難しいな……。


さて、復元じゃなくて回復でいいだろう。


ヘイ! ジジィ!


俺は体内にジジィが作った回復の魔力を、ドラゴンへ流し込んだ。


まあ、これで動く分には問題ないだろう。


「もう、俺を狙ってくるなよ? じゃあな」


****


ドラゴンの怪我の回復を確認した俺は、その場を立ち去ろうと……。


「キュ……キュウ……ちなさい!」


ちなさい?


あれ?


「待ちなさいよ! ちょっと待ってったら!」


え?


あの……はぁ!?


なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁ!


ちょ! あの!


なんじゃいこりゃぁぁぁぁぁぁぁ!


【これは、驚きましたね……】


『体をここまで変化させるか……。魔力とは、無限の可能性があるようじゃな……』


ええ~……。


ちょ! なにこれ?


あ……あれは、俺が前に使ってた仮面とマントみたいに形を変える物かな?


腕にリストバンド巻いてると思ったら、背負うカバンだったのか。


『そのようじゃな……』


「いい! そこを動かないでよ!」


呆然とする俺の前で、三メートルはあったドラゴンが女性に変わっていく。


なんじゃこれ?


体が光って姿を変えるその女性は、耳飾りが光ると同時に服を纏っていた。


光ってて裸が見えね~……。


【そこですか? この状況で?】


「貴方のせいで、かなり時間をロスしました! 責任をとって下さい!」


ええ?


いや……あの……結婚なら喜んでしますけど?


「んっ……っと! まずは、名前を聞こうかな?」


腰まである黒髪をゴムで縛った、白いローブを着たドラゴンもとい女性は俺に名を聞いてきた。


「えっ……え~……レイだ」


平原にパンッ! っと乾いた音が……。


何で!?


俺は、その女性にビンタを食らった!


「私は、サリー。これでチャラにしてあげる! 宜しくね! レイ!」


ええ~……。


何がチャラ?


ええぇぇぇぇ?


なんで殴られたの?


「何よ……。レイは偶然かも知れないけど、私の裸を見たのよ? 助けてくれたのを差し引いて、チャラって事よ! いい?」


納得いかね~……。


せめて人間の姿の裸を……。


「何? 許してあげるって言ってるのに、文句でも?」


「いえ……」


『弱っ!』


【女性の前だと、小動物並みですね】


五月蝿い!


トラウマだっつってるだろうが!


「じゃあ、レイ。貴方は、なんでこんな所にいるの?」


は?


お前もいるじゃんか。


「いや、別に理由はなくて……」


「ふ~ん……。貴方何者?」


はぁ!?


何こいつ?


「いや……あの……人間ですが?」


「よく分かってないみたいね……。種族は本当に人間なのね? 何処から来たの?」


うん?


何か話しが噛み合わない。


「人間だよ。別の大陸から来た。あの、何が言いたいか……」


「なるほど……。貴方はこの大陸の常識を知るべきです! というわけで! ん!」


何?


サリーは両手を伸ばし、俺に何かを……。


何?


「だから! ん!」


「なんですか?」


「私を背負って、さっきの湖まで!」


ええ~……。


何こいつ?


「早くしてよ~! きっと貴方の損にはならないから!」


お前を背負って十五キロ走るって、十分損だと思うんですが?


「貴方は、飛んでる私と同じ速度だったのよ? 背負ってもらった方が早いでしょ?」


「もう一回飛べばいいじゃん……」


「私達は一日に、変身していられる時間が限られてるの! いいから! ん!」


「嫌だよ」


「こんな私と密着出来るのよ? こんなチャンスそうは無いのよ? いいの~?」


おいおいおいおい!


お前は何さまだ!


自分がモテるとでも、美人だとでも思ってるのか!


物凄い美人ですけどね!


舐めんなよ!


そういう自信過剰な女は、好きじゃないんだよ!


****


「きゃぁぁぁぁ! 速い速い! 行け行けぇぇぇぇぇ!」


『情けない……』


【しっかり背負ってるじゃないですか……】


いい匂いがします!


後、背中に何か柔らかい感触がしまぁぁぁぁぁぁす!


「気持ちいいぃぃぃぃぃぃ!」


俺も背中が気持ちいいでぇぇぇぇぇぇすぅ!


『煩悩の塊が……』


調子に乗った俺は、来るのに十分はかかった道のりを三分で駆け抜けました。


【全速力で走るって……】


テンションが上がってしまいました……。


「凄い……。これ全部一人で食べるの?」


「まあ……。焼くけど食べるか?」


「うん! あっ! 私はこのパンを分けるから!」


『パンじゃぁぁぁぁぁぁぁ!』


五月蝿い! 言うと思った!


湖の近くで火をおこし、枝に刺した魚を焼きながらサリーと話をする。


と、言うよりもこの大陸の常識を教えて貰った。


この大陸は、他の大陸から何故か未開の地になっていた。


師匠から貰った地図が無ければ、正直俺も知らなかっただろう。


航海の技術もそれなりに発展しているし、船自体も魔力推進ならば距離的には不可能ではない。


その上で、この大陸の情報はあるのに行き来が出来ない。


理由は簡単で、特殊な海流によって船で行き着くのが難しいのと、棲息するモンスターが先程のグリフォンと同クラスである事だ。


つまり、Aランクモンスターが海にも空にもわんさかいるので、人間では近づけない。


この大陸の情報が伝わっているのは、この大陸側から船の難破などで運よく流れ着いた人間がいるかららしい。


その逆もあるらしく、この百年で三人だけ生きたままたどり着いた人間がいるそうだ。


それから、俺が今いる地区は特にモンスターが多いらしい。


なので、こんな場所を一人で歩いているなんて本来はあり得ないそうだ。


サリーのような竜人族でも、最低五人はいないと通り抜けられないそうだ。


なるほど、他の大陸から来た上にこの地区にいる俺か……。


変だと思うよね~。


分かります。


『それで、この大陸について三日間誰にも出会わなかったのか』


まあ、Aランクモンスターの巣に町を作る物好きなんていないよな。


「やっと理解した? 私は、アイン王国で巫女をしてるんだけど、神託を受けてある場所を目指してるんだけど……」


お前の話が正しいなら、女の子が一人で歩くのって危ないじゃないの?


「もう一つほど、教えてくれないか?」


「何? 何でも聞いて」


「ドラゴンになって水浴びしてたのは何で? それって時間の規制があるんでしょ?」


「あれよ!」


何?


「だって……怖いじゃない……モンスターもいるし、実際に覗かれたし……」


ああ、そう。


「で? レイの事情も教えてくれない? あっ! この魚おいしい」


なんて言うかな……。


もうすぐ悪魔が復活するから、倒しに来たなんて言えないしな……。


う~ん……。


「まあ、ある程度の推測は出来るけどね」


えっ!?


何を知ってるんだ?


巫女って言ってたし……まさか!


「船が難破して、あの戦闘力で貴方だけ生き残ったってことでしょう? この近くの海岸にでも辿り着いた?」


ああ、ただの馬鹿か……。


「違うの?」


「イエ、ソノ通リデツ」


「でしょ~! えへへ……」


ふ~ん……。


【この方は、本当に無邪気に笑いますね】


そうだな……。


「しかし、なんで一人なんだ? この地区危ないんだろ? 目的って何だ?」


「ちょっと訳ありなんだ……」


まあ、言いたくないならいいか……。


「あっ……」


うん?


何するの!?


サリーは俺の両頬を掴み、左右にひっぱていた。


「ふぉい!」


「その顔駄目!」


「ふぁあ?」


何言ってるんだ? こいつ?


放せよ! 馬鹿!


「分かったわよ! 話すから! ね?」


何?


「そんな悲しそうな顔と目をするの止めて。ね?」


いったいこいつは……。


てか、近いんですけど?


軽く馬乗りされてるんですけど?


押し倒していいんでしょうか?


『駄目に決まっとるじゃろうが』


ですよね~。


「私の先代の宮廷巫女だった、イザベラ様に会いに行く所なの。イザベラ様は、宮廷を追放された身なのだから……」


「公式には会いに行けないと? それで一人で行くのか? 危ないじゃないか?」


「でも、会わないといけないの!」


う~ん……。


「巫女ってのは、どんな仕事なんだ?」


「竜神様から神託を受けて人に伝える事と、星の動きで国の吉凶を占うのよ」


もしかして……。


「国の滅亡でも予言しちまったのか?」


「そうなの……。ん? なんで分かったの?」


「何となくな……。その先代の巫女って、どんな人?」


「えっ? 私の先生で……三百年も宮廷巫女をされていた、とっても凄い人なの! 占いの力も飛びぬけてて……」


なるほど、自分もその先代と同じ未来が見えたから、焦って会いに行ってるわけね。


どうすっかな。


『魔界の門が開くのは見たが、正確な出現場所までは分かっておらんからな』


情報収集するつもりだったけど……。


【その先代の巫女さんに会うのが、早い可能性はありますね】


どうする?


「あのさ……。その先代の人って見た目、若かったりする?」


『何をきいとるんじゃ? まさか!』


竜人てのの寿命分からないじゃん。


もしかしたら、綺麗なお姉さんだったりして~……。


それなら迷わず会いに行く!


「いいえ、先生はもう五百歳を超えてるから、見た目は優しそうなおばあちゃんって感じかしら? あ! でも、年齢よりは若く見えるわよ」


ああ……。


萎えた……。


【いちいちそんな事で、やる気をなくさないでください】


大事な事です~!


「あのね? レイがよければ……」


「何?」


「私の護衛を頼めないかな? あ! お金はちゃんと持ってるから」


「そうだな……。まず、俺のひざの上から降りろ。話はそれからだ」


「あ! ごめん! なんか座り心地よくて……」


サリーは舌を出して、照れながら後頭部を掻いている。


う~ん……。


「分かった。一緒に行こう。この大陸の事は何も分からないからな」


「本当! やったぁぁぁ! 本当は一人でかなり不安だったの!」


まあ、そのババァに会えば何か情報が手に入るかもしれないしな……。


【素直に、サリーさんが心配とは言えないんですか?】


違います~!


『こいつの辞書に、心配という言葉はない』


いや! あるよ!


何、勝手に決め付けてるの!


「うふふ! ねえ! レイっていくつ? 私は今年で二十歳なの!」


「えっ? 二十一歳だ」


「レイって、どんな所から来たの? 元々何してたの?」


「えぇぇぇ……。何でそんな事聞く?」


「だって! これから私達は、運命を共にする仲間だよ? お互いに色々知ってなくちゃ!」


なんだこのテンションの高さは?


「まあ、落ち着けよ。ほら、魚もう少し食べるか?」


「うん! ありがとう!」


俺が焼けた魚を差し出すと、サリーはそれに必死に食らいついている。


二十歳よりも若い印象を受けるな……。


「おいしい! で? レイは何してる人だったの?」


「あぁぁ……。ギルドで傭兵やったり、行商人もやってた」


「へぇ~……。喋るのそんなに得意そうじゃないのに、意外……」


こいつ、さっきから……。


【勘のいい子ですね】


「私は、生まれてからずっと宮廷ですごしてたの! だから、外の事あんまり知らないの!ねえ! もっと教えて?」


う……。


こいつ……。


日が沈み、焚火の明りに照らされたサリーの顔は……。


【美人の笑顔とは、なかなかの破壊力ですね……】


喋ってるとガキみたいなのに、黙ると大人びた美人か……。


なんだろう?


こいつから受ける印象って……。


「そうだな……。俺の育った大陸は四つの国があって……」


サリーは俺の話を、目をキラキラさせながら聞いてた。


箱入り娘なのかね~……。


『これだけいい顔をされたら、悪い気はせんじゃろう?』


まあ、否定はしないよ……。


それから、レーム大陸での事を軽く話した。


話したんだけども……。


お腹いっぱいになったとたん、眠りやがった!


ガキか!


さて、修練でもするか。


早くこの体になれないとな……。


「先生……先生……」


うん? 寝言か?


俺がタオルをかけようとすると、眠っているサリーは寝言を呟き始めた。


「先生……行かないで……。私を……一人にしないで」


そう言えば、一人旅だからこの二日ほとんど寝て無かったって言ってたな。


よく見ず知らずの俺の前で、安心して眠ったもんだ。


世間知らずのお嬢ちゃん……。


宮廷巫女ってのは、大変なのかね~?


【かも知れませんね】


サリーの目からは涙がこぼれていた。


これじゃあ、悪戯できね~な。


【するつもりだったんですか?】


まあ、ちょっと……。


「どうすればいいんですか? 助けて……」


悪夢でも見てるのか?


仕方なく俺は、眠るサリーの頭を撫でる。


しかめっ面が、和らいでいく。


何か抱えてるんだろうな~……。


「えへへ……大好き」


うおう!


ドキッとした!


何の夢見てるんだか……。


「レイ……そんな悲しい顔しないで……。私が一緒にいてあげる」


一緒にか……。


『この娘は、勘が鋭い様じゃな……』


かもな……。


ふ~……。


また、巻き込まれたかな?


【かも知れませんね。でも、何時も通りなんでしょう?】


まあ、ほとんどライフワークだからね。


また、色々面倒なのかな~?


ふ~……。


やってらんね~……。

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