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Mr.NO-GOOD´  作者: 慎之介
第六章:啓示の救世主編
72/106

六話

ホテルを抜け出した俺は、町から北へ走る。


目的は謎の集団が住み着いた廃墟……。


多分、白の教団って奴らだろう。


もしかすると、馬鹿の仲間だったりするかも知れん。


てか、出来ればそうであってほしい。


あんな馬鹿ども、早く潰すにこした事はない。


『お前、関係ない情報も集めておったが……』


必要な情報が、必ずその通り手に入るとは限らないだろうが。


ああいう場合は、関係ない情報でも、集めておいて損はないんだよ。


『まさか、あれが真面目だったとは思いもせなんだ……』


だから真面目って言ったじゃん!


確かに、勇者みたいって浮かれてた俺も悪いけども!


真面目にやってたんだよ?


『お前は、どこまで真面目なのかさっぱり分からん』


全部真面目じゃい! ボケ!


それをあいつらは……。


そうだよ!


何でだよ!


俺、なんか物凄く怒られたじゃん!


でも、俺正しかったじゃん!


なんだよ~。


俺一人で、重要な部分全部やってるじゃん!


俺! 約束破ったりしてないじゃんか!


なんで信頼が無いんだよ!


ふざけんなよ~……。


はぁ~……。


やってらんね~……。


****


聞いていた場所に到着したが……。


何も無いな。


廃屋が消えるなんてあり得ない。


となると……。


ふ~ん……。


本当に何処までも予想通りだよ……。


『そうじゃな』


魔力の反響を確認し、廃屋があるらしい地点で気配を消す。


う~ん……。


不可視の結界か、かなり高等な魔法だよな?


『うむ。並みの魔法使いには、ここまでの規模の結界は不可能じゃろう』


やっぱり、馬鹿の仲間の可能性が高いよな~。


一人で来て正解だった。


オリハルコン持ちから四人を守るなんて、正直キツイからな。


しかし……。


『気取られず入るのは、難しいかも知れんな』


魔剣で結界切り裂いたらばれるよね?


どうすっかな~。


うん?


ラッキー! 人の気配だ!


三人か……。


こんな何もないところに来るのは、教団の奴しかいないはず!


これで、入り方が分かるか?


茂みの陰から三人が結界の前に来るのを見つめる。


おいおい……。


ジジィ、あの服装……。


三人が纏っている服装。


それを初めて見たのは、ゲッシー達と町に買い物に行った時だったか?


この大陸のほとんどの町で見かける、ある宗教団体の物だった。


マジですか?


敵って、物凄く大規模じゃないの?


『奴らが悪さをしていると考えて……。今考えられるのは、三パターンかのぉ?』


いや、四パターンだろう?


馬鹿とは関係なく、この支部が暴走しているか、この宗教全体が元々ヤバいか。


もしくは、馬鹿と関係があってこの支部が人をさらってるか……。


『最悪は……』


ああ、馬鹿の団体がデカイ上に真っ黒……。


今回も、最悪の想定で行かないといけないよね~……。


『今回は……いや、今回も最悪じゃろうな』


あああああ……。


メンドくせぇぇぇぇ!


絶対これ面倒な事になるって!


なんか、あれ! あれが欲しい!


『なんじゃ?』


今回の件に詳しい強い仲間とか!


大陸も違うし、この宗教団体を倒す為の勇者とか!


そう言うのが欲しい!


『……アホ』


アホじゃありませ~ん!


『それよりも……あれは……。急げ! 多分、あのあいつらが今出したカードが、解錠の魔法アイテムじゃ!』


ヤバッ!


入れなくなる!


何もないように見える空間に、結界のトンネルが発生した。


俺は急いで三人に見えない速度で、その中へ侵入した。


間に合った~……。


俺が中に入って、すぐにトンネルは消える。


草むらの中に身を潜めた俺は、周囲をうかがう。


結界の中は本当に、只の廃屋が建っているだけだった。


予想外だな、改装ぐらいしてると思ったのに……。


明りも点いてないや。


『気を抜くな』


分かってるよ。


気配を消したまま三人の後をつける。


ははっ……。


俺~、アサシンになれるね。


三メートルくらいしか離れてないのに、全く気付かれないよ。


『お前がその気になれば、何にでもなれるじゃろう』


****


へ~……。


地下への階段か。


厳重だね。


それにしては、門番とかがいないよね?


『あの結界からは、簡単に外には出られないようになっておるのじゃろう……』


なるほど、侵入者は皆殺しってところか?


『そうじゃな……』


地下からあの気持ちの悪い魔力が……。


やっぱ、最悪の方だった~。


くっそ!


何体いやがる?


でも、百もいないな……。


今回は少し楽をさせて貰えるんだろうか?


『期待はせんことじゃ』


ですよね~。


****


「我らのメシアが人類を救うのです! さあ! 皆さん! 共に新世界を築くのです!」


おお~……。


何人いるんだよ。


『二百……いや、三百人はおるようじゃ』


地下には大きな講堂が広がっていた。


そして、壇上には馬鹿の仲間がきているローブを纏った男が、かなり電波な事を大声で言っている。


恥ずかしくないのかな?


アホどもが熱心に祈ってるよ。


祈りってので、何か起こるとでも思ってるのか?


祈りなんて……時間の無駄だろうが……。


『で? どうするんじゃ?』


気配を消したまま情報収集だな。


なにせ、相手の事が全く分かってないからね。


『うむ』


****


俺は、その地下を探索した。


ベッドがビックリするくらい並んだ部屋に、これまた大きな食堂か。


ここで生活してやがるのか……。


どこもかしこもかび臭くて、汚い。


なんか身体に悪そうだな。


『信者を、使い捨て程度にしか思っておらんのかもしれんな』


魔力はさらに足元から感じるから、ここを調べるのは後回しにしよう。


****


更に階段を降りた俺は、ある埃だらけの部屋の中で立ち止まる。


う~ん……。


この部屋は……。


『書庫じゃな。情報が手に入る……無理か?』


字が読めないからね~……。


読めたら、これほど役に立つ場所は無いんだけど……。


う~ん……。


新約聖書ねぇ……。


これさえ読めれば、奴らの目的が分かるのに~……。


って、あれ?


読めるな……。


『読めるのか!?』


うん……。


どう言う事!?


こんな文字見た事ないのに……。


なんだ? 誰にでも読めるように、魔法でもかかってるのか?


いや、魔力は感じない……。


あれ?


でも、こっちの新しい本は読めないよ?


なんで!?


どうなってるの!?


なにこれぇぇぇぇ!?


『落ち着け……。他に読める物は無いのか?』


え~……。


これと、これと……あとこれが読めるな。


なんで!?


『ふ~む……。どうやら古い書物は読めるようじゃな』


形から言って、この新しい本は新約聖書っていうのの、別の言語版だよね?


『うむ。街中で見た文字の形に似ておるな……。ここの布教用と考えて間違いあるまい』


って事は、こっちの古いのは原本か?


う~ん……。


ここで悩んでも仕方ないよな。


中は……。


はっ!?


何じゃこれ!?


電波サイコさんが書いたのか!?


こえ~よ!


だってこれ!


人間が滅亡するって書いてあるぞ!?


封印されていた化け物が復活して、あの世の亡者がはい出して、地獄の門が開く!?


その上、天変地異でこの世は地獄に変わるって……。


こえ~よ!


『終末思想とはそういうものじゃ……』


超こえ~よ!


何だよこれ!?


『残念じゃが、わしには読めん。そこには何を?』


ああ?


え~と……。


地獄から選ばれた人間を救うのが、メシアって奴なんだって。


それ~から……。


なんか世界は何回もこの地獄をループするようになってて、二万年に一度終末が来るらしいよ。


『そのたびにメシアが生まれると?』


言い回しが難しいけど、多分そう言う意味らしいよ。


おっかね~……。


へ~……。


『何じゃ?』


この世界って、四回目の世界なんだって。


三回ほど、これに書いてある事があったらしいよ。


嘘くせ~。


二万年前の情報を誰が知ってるんだよ。


今四回目で、メシアが現れてるって事は……。


『約八万年じゃな……』


そんな昔って、人間に文明とか無いだろう~。


これ絶対嘘じゃん!


『う~む……』


なんだ? ジジィ信じるの?


キモッ!


『う~む……』


あれ? 反応なし?


『お前も知っている通り、わしは五千年の時を超えてきた。そして、まだ普通の人間だったころに人の歴史について、遺跡や地層などを調べた事がある』


もしかしてそれって……。


『うむ。最古の文明は、約一万五千年~二万年とわしは見ておる。さらに言うと、地層からその時代に大きな天変地異があった事も事実じゃ』


マジで!?


じゃあ、これって本当の事!?


ヤベ~じゃん!


世界もうすぐ滅びるじゃん!


『そうとも言えん……。過去に天変地異があり、それを元に書かれているだけかも知れん』


あ……そっか。


あの世や地獄なんて、嘘っぽいもんね~。


それに、八万年前はさすがに文明も何もないよね?


『そう思うんじゃが……』


何!?


まだ何かあるの!?


言っちゃえよ! ここまで来てもったいぶるなよ!


『あのお方が……最初にこの地へ降臨されたのが、確か四万年前じゃ』


師匠が!?


師匠の趣味ってたしか……。


『趣味ではない! ……が、人を救おうとする御方じゃ』


やばくない!?


なんか話しが繋がってない!?


ちょ! やばくない!?


師匠の電話番号知らない?


ちょ! 聞こうよ!


マジで世界を救う奴をボコッたら……ヤバいって!


俺、人類皆殺し犯! とか洒落にならんて!


『あのお方とは、向こうからコンタクトを取っていただけん限り、連絡のしようが無い』


あ~もう! 使えね~!


でも、メシアの仲間ってみんなバカばっかりで、いい事してるとは思えないんだけど……。


やっぱり、妄想で突っ走ってる馬鹿の集団なのか?


『分からん……』


ああ! もう!


どうすりゃいいんだよ~!


俺に選択肢とか止めて下さ~い!


正解する自信がありませ~ん!


ん?


んんんんんんん?


あの……これ……。


ミルフォスじゃね!?


『何じゃ? 何が書いてある?』


地獄の悪魔達と戦う為に、神様が天使を使わすって書いてあるんだけどさ~。


羽がはえてて、黄金の鎧と剣にオーラを纏った人間のような奴って書いてある。


『ミルフォス……そのままじゃな』


やっべ~!


俺マジもんの天使殺してる!


もうヤバい事しちまった後じゃん!


もう取り返し付かないよ!


あの……これぇぇぇぇぇ!


悪魔と戦う奴、いなくなってるぅぅぅぅぅぅ!


てへ! 殺しちゃった! って誤魔化せば……。


ボ……ボコられる。


全人類にボコられる!


ん?


でも、大丈夫かな?


『じゃから! 先に読め!』


なんか、天使が神の意思で悪魔殺した後に、人間へ攻撃してくるんだって。


それを倒すのがメシアになってる。


セーフ!


ようは、メシアが悪魔退治すればいいって事じゃないか!


ギリギリ……セーフ!


『それでいいのか?』


そうでないとヤバいです。


俺の命が!


てか! 俺信じね~!


こんなの信じね~!


『何を根拠に?』


だって、師匠の記述が無いもん!


師匠が関わって、影響が無いなんてあり得ん!


それこそ、悪魔秒殺してもおかしく無いって!


『それはそうじゃな。百パーセント嘘ではないかもしれんが、わしらまでこの宗教に染まる事はあるまい』


さて……。


この本持っていくかな?


相手の目的が分かるかも知れないし……。


『そうじゃな』


次は……やっぱ下か?


下手に戦闘になって、一般人巻き込まないようにしないと……。


メンドクセ~……。


ん?


この本は……。


聖剣誕生? 信徒?


気になるな……。


『確かに……しかし、優先するのは……』


分かってる!


行方不明者の確認が先って事だろ?


でも! これで!


オリハルコンが、どこに行けば買えるか分かるかも~!


『あくまで買う物なのか?』


いや、だって!


選ばれた人間しか使えないとかだったら、俺使えないじゃん!


オリハルコンさえ手に入れれば!


ジジィを捨てて、ついに勇者デビューっすよ!


これは燃えるね!


『ちょ! お前!』


俺は……仲間の為にもお前を倒す! とか言って~!


俺~、超カッコイイ!


チートで魔王ボコッて、姫と結婚して幸せになるんだ!


うん! それいい!


それがいい!


今みたいな痛いの、もう嫌だ!


いちいち死にそうなのは、もう勘弁!


『妄想するのはかまわんが、そううまくいくかのぉ?』


そんなの!


いいじゃない。


妄想するくらい……。


妄想でくらい幸せが欲しいんだよ……。


『悪かった! わしが悪かった! 好きに妄想せい!』


お前の許可などいらん!


妄想は勝手にする!


さて、先に下を見に行くか。


『……こいつは』


****


地下で俺達が見たのは大量に並んだ、バイオポッド……。


クソが……。


『……やはり、あの化け物の材料は生きた人間か』


クソ気分が悪い……。


『人間の……女性だけのようじゃな』


「なんでこんな可愛い子達を犠牲にするんだ! 馬鹿か!?」


これが、世界を救おうとしてる奴のする事か!?


ふざけるな!


こんな救済なんて論外だ!


大を活かすために小を殺すとでも!?


こんなの認めるか!


「認めてたまるか! こんなクソみたいな事!」


『落ち着け!』


「落ちつけるか! 舐めた事しやがって!」


『落ち着かんか!』


「潰す! こんな事潰してやる! 亡者も悪魔も俺が皆殺しにしてやる! だからこいつ等を潰すんだ!」


「人間は、みんな最初女性だったのさ。だから、男性より女性が加工しやすいんだ」


なっ!?


振りかえると、ローブを着た白髪の馬鹿……。


こいつは?


「久し振りだね。博物館以来かな?」


「そうだよ!」


お前には記憶力が無いのか? このクソが!


「今まで何人か、君のようなイレギュラーが発生したけど……。君は何か他と感じが違うんだね?」


はぁ~!?


「何の事だ?」


「あれ? 君は本当に神の啓示を全く受けていないのかい? 驚いたな……」


こいつの言ってる事は、さっぱり分からん!


「君は本当に変わっているね~。仕方ない、説明くらいはしてあげるけど……聞く気はある?」


こいつ……。


本気でイラつかせてくれる……。


『落ち着くんじゃ……』


分かってる……。


情報を頂く……。


その後、殺す!


「話せ……」


「おっ? 聞いてくれるのかい? じゃあ、まず僕達は神に作られた人間なんだよ。その識別は髪の色だ。昔は僕も君のように灰色だったんだよ? そして、神の啓示を受けて……」


確かに思いだせば、変な色じゃなかったけど……。


灰色の髪は、自分以外に見た事がなかった……。


それが証拠!?


「おや? 驚いてるね? 僕達以外にその髪の色の人間は存在しないから、思い当たるだろ? で、続きだけど……」


嘘かどうかは分からない……。


分からないが、俺は情報を手に入れた。


その結果、俺は何処に行っても、嫌われ者の落ちこぼれだって事が分かった。


ったく……。


やってらんね~……。

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