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Mr.NO-GOOD´  作者: 慎之介
第六章:啓示の救世主編
69/106

三話

「……と言う事なのだが」


「分かりました! では、調べてみます!」


「そ! そうか! では、頼んだぞ!」


「お任せを!」


う~ん……。


何かいいねぇ! こういうの!


「どうしたの? あんた……」


「何が?」


「だって……ねえ?」


「そうですね……。何か気持ち悪い」


なんですかぁぁ!?


「うん~。リリムもそう思う~」


なんですかぁぁ!?


「だよね~。私も……」


お前等!


人に向かって気持ち悪いとか、言っていいと思ってるのか!


最悪だよ! こいつ等!


一回好きとか言ったくせにぃぃ!


なんだ? 倦怠期で離婚したい奥さんか? お前等は!


言ってみなさいよ!


もう、俺の事好きでも何でも無くなってるだろう!


はぁ~……。


やってらんね~……。


「ねえ? 何が目的?」


「別に、目的なんてね~よ」


「なんか悪い物でも食べたの?」


「なんだ? 何が気に入らないんだ? 世話になった、マルカ国王の頼みを聞いて何が悪い?」


「だって~……。レイなんかおかしいよ~?」


「だから! 何がだよ!」


「レイは何時もやる気がなさそうなのに……。何故今回に限って、そんなにやる気があるんですか?」


ああ……。


そう言う事か……。


う~ん……。


言えない……。


王様から直接依頼を受けるなんて、なんか旅の勇者になったみたいで嬉しかったなんて……。


なんかまた色々言われる。


「ただ、久し振りに普通の仕事が出来るからってだけだ」


嘘なんですけどね。


「そうなの? う~ん……」


「まあ、いいです。どの道、王の申し出はむげに出来ませんし」


「そうね。じゃあ、まずどうする?」


なんか、これから冒険アドベンチャーの予感が!


テンションが上がってまいりましたぁぁぁぁぁ!!


これこそ!


これこそ俺が求めていたものだ!


女に、財宝に、伝説の武器!


俺~、勇者になれるんじゃね?


やっふぅぅぅぅぅぅぅ!!


「ねえ? どうするの?」


「まずは情報収集だ! 行くぞ!」


「やっぱり、変ですね」


「リリム、やっぱり気持ち悪い……」


「さあ! 行くぞ!」


「分かったわよ! ちょっと待ちなさいよ!」


****


でも……広い町だな……。


どうするか……。


やっぱり無難に、行くべきだよな。


「情報収集だし、別行動にしよう」


「そうですね……。でも! レイは一人にしませんよ!」


ええ~……。


「そうよ! あんたを一人にすると、ろくな事が無いんだから!」


ええ~……。


「じゃあ、どうするんだ?」


「三人と二人で二組に分かれましょう。これで効率は倍です。集合は、今が十三時ですから……十八時にここに集合で」


「分かった! じゃあ、出発!」


痛い痛い痛い……。


腕を曲がらない方に引っ張るな! 


何!?


「まだどう分かれるか決めてないでしょうが!」


そうだった……。


「どうする? 取り敢えず、俺とゴルバチームに分かれるか?」


「じゃあ~……リリムはレイと行く~!」


「なっ! 勝手に決めないでよ!」


「そうです! ここはじゃんけんです!」


「え~……」


「え~じゃないです! いいですか? 最初は……」


う~ん……。


「なあ、ゴルバ?」


「なんだ?」


「あれはいつ決まるんだ?」


「…………」


喋りなさいよ!


俺の目の前で、三人のあいこが続いている。


理由は簡単で、三人が凄い速さで相手に合わせて手を変えている。


同速度だな……。


これ~……。


永遠に終わらないんじゃね?


高々チーム分けで、そこまで本気出すなよ。


どんだけ負けず嫌いなんだよ。


「ゴルバ。リリムの手を頼む」


「了解した」


といや!


「なっ!?」


「何するんですか?」


俺がカーラとメアリーの手を掴み、ゴルバがリリムの手を掴んだ。


「埒があかん! 今出してるので決着だ」


「え~……。リリム負けてる~……」


「我慢しろよ……」


「まだ勝負はついてないです!」


「駄目!」


「ま……まあ、私はいいわよ」


勝ったカーラだけが賛成してくれたので……。


「じゃあ! 十八時な!」


「あっ!」


「レイ~!」


カーラを抱えて緊急脱出!


もう付き合いきれん!


さてと……。


「さすがに、この時間から酒場は開いてないよな~」


「ちょ! いいから降ろしなさいよ! もういいでしょ!」


ちっ!


合法セクハラタイム終了か……。


カーラは、相変わらずスベスベの肌してて気持ちよかったのに……。


「ふ~……。じゃあ、どうするの? 使用人の家は聞いてきてるけど……」


「まずは、そこから周るか。それと、兵隊の家は?」


「ああ、そのメモはメアリーが持ってるから周ってくれると思うわ」


「了解。じゃあ、行くか」


「そうね」


こうして俺達は、情報収集を開始した。


最初は使用人達の家から……。


そして、関係があると思える場所を周ってみる事にした。


****


最後に、十七時から開店し始めた酒場を周った。


「で?」


「北の廃屋に山賊かもしれないが、謎の集団が住み着いたそうだ」


おお!


なんかそれっぽい!


それっぽいぞ! 山賊を退治すれば次のイベントが来るのか?


「あんたは何を聞いてるのよ!」


「いや……それっぽい事」


「どう考えても今回の件と関係ないでしょうが! 行くわよ!」


ぬう!


俺の冒険が……。


まあ、次の奴に聞くかな……。


二人で酒場の客に、片っ端から聞き込みをした。


「ふ~……。なかなかいい情報が聞けないわね~。レイは……」


「それで?」


「何でも、その洞窟には伝説の武器が眠っているそうだ」


「なるほど!」


痛っ!


誰だ! 俺様の頭を殴るなんて!


「あんたは~……。何を聞いてるの! 関係ないでしょうが!」


怒らりた……。


「いや……。ちゃんと目的の事も聞いたんだぞ。他の事聞くくらい……」


いっ……たっ!


何回も頭を殴るな! 馬鹿になる!


「全くあんたは……」


約束の時間まで、まだ二十分ほどあるな。


「もうこの酒場で聞けそうな事は無いって。とりあえず、少し休憩しないか?」


「そうね……。他を周る時間もないだろうし」


俺達は席に付き、飲み物を注文した。


しかし……。


「酒場でお前と二人か……。なんか懐かしいな」


「そうね……。あれから二年も経つのよね」


「そうだな。でも、あの時は驚いたよ」


殺されると思ってね……。


「あの時は必死だったの……。どうしてもあんたが死んでると思えなくて……」


「まぁ、実際に生きてたしな。しかし、よく生きてるかも分からない俺を半年も捜したよな~」


「だって……」


う~ん……。


やっぱりカーラは、ビックリするくらいの美人だ。


それにお姫様だし……。


なんで、俺と旅をしてるんだ?


俺なんかより条件のいい男なんて、幾らでもいるだろうに……。


「王族の礼儀ってやつか? 生まれた時から色々背負ってるってのも、大変なんだな~」


「違っ! あれは……。その……」


「ん? 何? 詫びと礼の為に追いかけてきたんだろ?」


「それもあるけど! でも……」


んん?


なんで真っ赤になって口ごもるんだ?


訳が判らんな。


あっ!


「あのね……」


「おおい! こっちだ!」


「あら? レイ?」


メアリー達が酒場に入ってきたので、呼び寄せた。


「なんだ? ここに聞き込みか? 俺達が終わらせちまったぞ?」


「そうなんですか。ここを最後に帰ろうと思ってたんですけど、都合がよかったですね」


「そうだな」


あれ?


カーラが変な顔してる。


「どうしたんだ? カーラ?」


「なっ! なんでもないわよ!」


ふ~……、変な奴。


まあ、いいや。


「で? そっちはどうだった?」


「あら? ここで打ち合わせをしますか?」


「疲れただろう? ここで、休憩がてらでどうだ?」


「リリム、賛成~!」


「そうしましょうか……」


****


軽食と三人の飲み物を注文し、聞いた情報をまとめる。


「じゃあ、まず兵士の家族からですが、業務に関わる事で家族も認識していませんでした。情報はほとんど得られませんでしたが、失踪当日も、何時も通り帰ると言い残したそうですから、遠出はしていないと思います」


「使用人側は、共通点はみんな何か悩みを持ってた事ね。借金とか、家族関係とか理由はいろいろだけど」


「北の廃墟に山賊かなんかが住み着いたそうだ」


「俺達が聞いた情報だと、兵士たちは皆夜間いなくなっているようだ」


「使用人達が、いなくなる一週間前くらいから感じが変わったそうよ。ふっきれた様な顔になってたそうだけど……」


「西の大陸にある洞窟には、伝説の武器があるそう……」


あの……痛いです。


ナイフと爪をひっこめて下さい。


「レイは何を聞き込んでるんですか!」


「あんた本当にそんな情報しかなかったの!?」


「いや……その……」


「お前は今回の依頼内容を理解してるのか?」


あっ! 馬鹿にされた!


「分かってるよ! 城の使用人が次々に失踪して、その調査に向かった兵士もいなくなってるんだろ?」


痛い痛い痛い……。


「じゃあ、なんでその情報を聞いてないの!」


山賊退治とか、伝説の武器の方がそれっぽいじゃん。


なんて言うと、このナイフと爪が首に突き刺さるんですね?


分かります。


止めなさいよぉぉぉぉぉぉぉって!


確実に急所を狙うとかって、どうよ?


殺そうとしてる、以外の意味があるなら教えなさいよ~!


「いや……なんか、みんな宗教にはまったらしいよ?」


「最初からそれを言いなさいよ! 馬鹿じゃないの?」


馬鹿じゃありませ~ん!


「全く……貴方は、何処まで本気なのか分からないですね……。」


ある種、全部本気なんだけどね。


でも! 言いませんよ~!


せっかく引っ込めてくれたナイフと爪が、次は刺さるはずだからね!


「じゃあ、その宗教について調べるのが早そうね」


「そうですね。明日はそれを重点的に……」


****


「おお! こりゃあ、とびきりの美人が三人もいるぞ!」


「おい! ね~ちゃん! 俺達と飲まね~か?」


俺が酒場にいると、チンピラにほぼ間違いなくからまれるな。


五人か……。


殺されるぞ?


「結構です! 出来れば大事な話をしていますから、話しかけないでくれませんか?」


「おっ! 気が強いね~……。へへっ……」


普通の人間ってのは魔力を感知できないから、怖いもの知らずだよね~。


「いいから、向こうに行きなさいよ!」


「いいじゃね~か。そんな奴らほっといて俺達と遊ぼうぜ~」


「こっちも気が強いな……。俺は強い女を従わせるのが好きなんだ」


「おいおい! また全員が楽しむ前に壊すなよ~」


ああ……馬鹿だこいつ等。


二人がキレそうになってるじゃんか。


この二人めちゃめちゃ強いんだぞ?


「こんなヤサ男二人より、俺達の方が絶対楽しめるって! なっ!」


え~と、ゴルバは……。


腕組んで目を瞑ってるよ……。


こいつ使えね~……。


また、俺が止めるのか……。


「まあ、二人とも落ち着けよ」


「レイ! あんたは、また~!」


「悔しくないんですか?」


「それより、ここが殺人現場にならないかが心配だ」


「へへへっ! この兄ちゃんの方が、聞きわけがいいじゃないか!」


「顔がいい奴ってのは、実力が無いって決まってるんだよ!」


「ちげぇぇねぇ! さあ! こっち来いよ!」


馬鹿が、お前等を守ろうとしてるのに~。


「こんな奴と旅してたら、命がいくつあったも足りないぞ?」


「俺達が、お前等を守ってやるからよ~! なっ?」


「あんた達ね~!」


「こんな奴に女が守れるわけないって! なあ!」


「へへへっ! その通りだ! 俺達がいい思いさせてやっからよ~!」



ああ……なるほど、死にたいのか。



『殺すでないぞ』


ジジィは、俺の感情の高ぶりで起きてきたようだ。


「レイ!?」


「あの……」


今にも男達に跳びかかりそうだった、カーラとメアリーが俺の全身から立ち上る真っ黒いオーラに気付き、動きを止める。


「な!? なんだこいつ?」


「なんだ~? やろうってのか?」


「へへへっ! かかってこ……」


五人いた男の二人が、その場に倒れ込む。


「はっ? 何を……」


さらに二人も崩れ落ちた。


「え? え? なんだこりゃ?」


「……お前……なんて言った?」


「くっそ! 舐めるなよ!」


俺は人間では回避不能な速度で、両腕をへし折る。


「ぎゃああああ! なんだ? なにが!」


「何を守れないって?」


さらに片足の骨を踏み砕いた。


「ああああ! 足が! 俺の手がぁぁぁぁ!!」


「……俺は質問をしている」


「やめっ! やめてくれ! あがああ!」


男の髪を掴み、顔を持ち上げた。


「俺に何が守れないんだ?」


「ひぃぃぃ!」


既に、男は涙と涎を垂れ流して戦意を失っているが……。


「答えろ……」


俺はさらに肋骨を砕く。


一本……一本……。


「ああああ……。助けて……」


さあ、恐怖して死んでいけ……。


「ちょ! レイ!」


「やめて! 死んじゃう! 死んじゃうって!」


「もういい! もう……」


男をいたぶる俺を、仲間達が必死で押さえていた。


ちっ……。


『……やりすぎじゃ』


通報により酒場へ飛び込んできた兵士たちに、メアリー達が事情を話している。


俺はただ、その光景をうなだれた様に椅子へ座り、眺めていた。


****


気まずい雰囲気のまま、俺達は無言で宿泊しているホテルへ帰った。


今回のホテルは一人一部屋になっている。


部屋の中で、くすぶったままの俺は修練をした。


気分が悪い……。


くっそ……。


何も言わないのか、ジジィ?


『人とは愚かなものじゃ……。今のお前にわしが言える事はなにも無い……』


そうかよ……。


くっそ……。


苛立って眠れん……。


それが、その日最大の苦しみになるとは思いもしなかった……。


全く……。


やってらんね~……。

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