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Mr.NO-GOOD´  作者: 慎之介
第五章:島国の漂着者編
58/106

五話

「……はぁ……はぁはぁ……リ……リリム……もう……らめぇ~……」


なんだ……リリムは、もう限界か?


「はぁ……はぁはぁはぁ……そんな……ぶっ続けでなんて……はぁ……無理よ……」


カーラも足腰ガクガクだな……。


う~ん……。


メアリーは……。


「あ……ああ……あの……はぁはぁ……喉が……乾いて……はぁはぁ……少し……休ませて……」


駄目か~……。


俺はまだまだ全然なんだけどな。


「あ……はぁはぁ……あんたのスタミナって……どうなってるのよ……」


最高で、三日三晩フル活動可能です!


仕方ない……。


あれ?


ガチホモ何処行った?


ああ! 来た来た!


「はっはっはっはっはっはっ……」


夏場の犬みたいだな。


う~ん、仕方ない。


俺達は休憩することにした。


****


俺は一人で自動販売機を見つけて、飲み物を全員分購入して戻る。


俺以外の四人はその場で寝ころび、のびている……。


みんなヨレヨレだな。


「……大丈夫か? あの……大変だな~」


「「「誰のせいだぁぁぁぁぁぁ!!」」」


怒られた……。


凄くシンクロで怒られた。


そんな、息切れするほど必死に怒る事ないのに。


う~ん……。


ここは刺激しない方がいいかな……。


「はぁ~……やっと落ち着いてきた。……最悪!」


「レイと旅をするということは……。す~……は~……こう言う事なんですね」


「も~……なんで~? リリム褒めて貰えると思ったのに~……」


俺もそう思いましたけどね……。


ちょっとした興味本位でね……。


その……。


なんて言おう……。


ここは誠意をもって……も殺されるかな?


えへ! やっちゃった! とか言った瞬間殺されそうだしな~。


いや! 心のままに言葉を紡ぐんだ!


「つい……」


ああ……そうなっちゃいます?


もちろん何時も通り、俺の首にはナイフが突きつけられる。


今日は爪と魔道砲がないだけましだな。


って、何この基準?


はぁ~……。


やってらんね~……。


「つい……じゃなくて説明しなさいよ」


ああ……怒ってらっしゃる?


痛い痛い痛い痛い痛い痛い。


切れてるから! 首から血が出てるから!


「そうですよ! なんでモンスターから救った村人に、追いかけられないといけないんですか?」


「リリムも聞きたい~! なんで~?」


ここは素直に説明するか。


「ほら……。俺モンスターに一回吹き飛ばされて、壁突き破っただろ?」


「はい! 少女を守って……。それがなんです?」


あら! 怒ってらっしゃる?


「その壁の向こうに、村の宝物らしきものがあってさ……」


「で?」


あらやだ! 怒ってらっしゃる?


「綺麗だったから少し触っちゃったんだよね……。全部終わった後だったし……。そしたら、警報が……」


痛い痛い痛い痛い痛い痛い。


食い込んでる! 食い込んでるでござるよ……。


「たく……。あんたは……」


やっとひっこめてくれた。


これぇぇ、魔剣の回復なかったら死んでるからね……。


最近ストレスと、肉体的ダメージがハンパない……。


ああ……。


一人旅が懐かしいな。


あれ?


ちょっと目に水分が……。


「はっはっはっはっはっはっ……」


しかし、ゴルバはスタミナないな……。


高々三十キロ全力疾走しただけなのに。


「人狼族は元々、瞬発力側が優れているんです。ゴルバはこれでも持久力がある方なんですよ?」


俺がゴルバを眺めていると、メアリーが解説をしてくれた。


まあ、仕方ないよな。


てか、仕方ないって俺は何回言った?


何故、こんな短い間で色々諦めないといけないだ?


俺これ絶対一人の方がいいって~。


本当に面倒くさいな……。


さてと……。


俺は一人で師匠からもらった地図を確認する。


レーム大陸を出て早一年とちょっと……。


俺の遭難のせいだけど、ほとんど進んでないな。


やっぱりこのまま北に向かうか。


情報通りだと、多分明日には大きな町に着くはず……。


****


おっ! みんな回復したか……。


ん~……。


出発しようよ……。


日が暮れるよ~?


「なんだ? 足が棒か?」


メアリーが手招きしてる……。


隣に座れと?


なんだよ~?


「どうしたんだ?」


痛い痛い痛い痛い痛い痛い……。


地味に痛い……。


死なないけど地味に痛い!


メアリーが頬をつねり、リリムからチェンジしたリリスが耳を引っ張り、カーラが足を踏んでいる。


てか! メアリーこんなキャラだったっけ!?


最初会った時、もっとマシだったよね~?


キャラ崩壊? それともこれが本性なんですか!?


痛い痛い痛い痛い痛い痛い……。


内出血おこすから……。


痛い……痛いって……。


いや、あの……マジで。


いだだだだだっ!


皮膚が裂けて骨が折れる!


「……言いたい事は口に出してくれ」


「よければ覚えておいて下さい……。普通の人間はこんな距離走れないんですよ? こんな事が続くなら、覚悟して下さいね?」


「もう、あんたが一人で動くとろくな事ないんだから、単独行動で死刑よ! いいわね!」


「次、同じ状況になったら……殺す……」


ほうほう……。


つまり……あれ?


これ死亡フラグじゃね!?


だって……。


俺、基本的に逃げるか爆発しかしてないんだよね。


残り爆発オチだけって! 死ぬから!


今まで運がよかっただけで! 爆発って普通死ぬから!


ああ~……。


俺の明日は真っ暗だよ……。


「返事は?」


「いや……でも……」


「へ! ん! じ! は~!」


「……はい」


なんですか~? これは!


んんん?


やっと回復したゴルバが……。


「次は俺も殴る……」


お前は殴り返すわ! アホか!


てか、こいつ絶対従者じゃないって……。


完全にケツ狙ってるだけじゃね~か……。


****


その日の野営は……。


俺が焚き木をひろい、俺が水を汲んで、俺が料理をして、俺が片づけ……。


きっと明日は良い日だ!


だから……負け~んな~俺~……。


「ふっ! ふぅ……はっ!」


『あれじゃな。本当に体力が化け物じみてきたのぉ』


誰が化け物だ! クソジジィ!


『モンスターから村を守り、長距離の全力疾走。そして、家事の後も普通に修練をしているじゃろうが』


普通じゃね~の?


『少なくとも二年前のお前には無理じゃ』


そりゃあ……。


これだけ戦えばレベルも上がるでしょうよ。


『そうじゃなぁ(普通は限界を迎えて、頭打ちになるのじゃがな)』


なんだよ! 含みのある言い方するなよ!


言いたい事あるならなら言えや!


『お前は自分の限界を感じた事は無いのか?』


はぁ~?


そんな事、毎日感じてるよ。


今更何言ってるんだよ?


『何故それでレベルが上がっていくんじゃ?』


それも今更だな~。


ただ単に、限界を突破するよう足掻くだけだろうが。


『(それは壁であって、限界とは言わんのじゃが……)』


ん? どうしたんだろう?


メアリーがテントの中から出てきた。


「眠れないのか? メアリー?」


「少し……」


「他の三人は疲れきって熟睡してるようだがな……」


「そう言うレイは修練を欠かさないんですね……」


「まあ、十年以上続けてきた習慣だからな」


そう言えば、メアリーと初めて会ったのもこんな薄曇りの夜だったな。


俺の修練を、メアリーはずっと眺めていた。


終わるまで……。


なんだ? まだ怒ってるのか?


俺が顔を洗いに河原へ行くと、メアリーもついてくる。


で……隣に座れと?


なんだよ? また嫌がらせですか!?


「私達が初めて会ったのは、こんな夜でしたね」


ん? 眠れないからただ喋りたいだけ?


俺、虐められない?


「そうだな」


「あの時はシグーの攻撃から、ルネを庇って怪我をして……。ルネを担いできた貴方を見た時、本当に怖かったんですよ?」


「そう言えば、俺の血を飲むことすら警戒してたよな」


「ふふふっ……。そうでしたね。あの頃は、人間が嫌いという気持ちよりも、怖いと思っていましたから」


「まぁ、人間からしても同じだったろうよ。それを考えると、お前、その人間をよく仲間にしたな……」


んん?


何故暗くなる?


俺の予想では先祖を信じたんですと、何時も通り笑うと思ったのに。


「あれは……貴方を利用しようと……」


ああ……。


当然そうだよね。


薄々は分かってたよ。


「あの頃の私は……必死で……毎日悔しくて……」


そう言えば泣いてたな……。


まぁ、魔族の運命を背負うって重圧だもんな~。


仕方ないさね。


俺がその立場なら逃げ出しそうだもん! 全速力で!


「そんな私に……貴方は……」


はいいぃぃ!?


泣かないでよ!


何でだよ!?


『……アホ』


誰がアホだ!


「私を守ってくれて……仲間を守ってくれて……兄を救ってくれて……お父様の敵まで……」


あわわわわわ……。


本泣きし始めやがった!


やめて! ちょ! やめてって!


俺悪くないよね?


俺何もしてないもんね~!


「そんな……命をかけて……くれた……貴方を……。私はずっと裏切って……」


えっ!?


なに? なに?


俺、何か騙されてたの!?


どう言う事!?


『……不憫な』


何が!? 何が!? ちょマジで!


『あまりにもお嬢ちゃんが報われんから、わしの推測を言ってやろう!』


何で上からだ!


お願いします! この野郎!


『お前の下心を知らんお嬢ちゃんは、お前を利用しようとした事をこの一年悔やみ続けていたんじゃろう』


あああ~あああ~ああ!


分かった! それでか!


はいはい。


ちゃんと喋れよ!


分かんないから!


『……アホの子じゃ』


黙れ! クソジジィ!


「忘れろ。……あれは、俺がやりたいからやっただけだ。お前は関係ない」


うんっ!


俺、いい事言った!


あれっ!?


メアリー大爆笑?


なんで? なんで腹を抱えてるの!?



「は~……、貴方は本当に……」


何!?


変な事言った!?


慣れてない事言ったから、声が裏返ってたとか!?


「私の心を自由にしてくれるんですね。いともあっさりと……」


ん?


成功?


いける? これ、いける?


なあ、ジジィ?


『…………』


ジジィって!


『…………』


ちぃ!


おっ!


「メアリーは笑ってる方がいいよ。うん」


メアリーの顔が真っ赤に……。


もしや! このタイミングで最終フラグゲット!?


まさかの大正解!?




「ボギッ! メシャ!」


え? 何の音かって?


え~と……。


照れたメアリーに思いっきり叩かれた俺の肋骨が、折れて肺に刺さる音です。


「おふぅ……」


吐血……。


川が俺の血で真っ赤に染まってるよ。


「きゃあああ! レイ!」


きゃぁぁぁじゃなくて……。


お姫様よぉぉぉ。


普通の人間種が、夜のバンパイアに殴られればこうなりますよ。普通は。


「そんな……。どうしよう……」


ジジィ! 助けて~!


なんか、意識が無くなりそう!


てか、死にそう!


俺の命のろうそくが、風前の灯火ぃぃぃぃ!!


『はぁぁぁぁぁ』


早くって! 血が逆流して呼吸できない!


死ぬ!


間違いない! これ!


『なにがじゃ?』


こいつと最後までいくと殺される!


二年以内に殺される! 殺されてしまう!


嫁に殺されてしまう!


『はいはい、面白い』


面白くねぇぇよ!


ダメージがリアルすぎるわ!


「レイ! レイ! レイィィィ!」


死んでない!


「少しは……ごほっ……手加減してくれ」


「ああ……良かったぁぁ……」


いだだだだだ!


抱きつくなぁぁ! そこ折れたとこだから~!


死ぬ!


てか、殺される!


「そこ……まだ、治ってない……」


「あっ……ごめんなさい」


何故……。


何故だぁぁぁぁぁぁぁ!


俺はなんでこの手のイベントで死にかけるんだ!


さっきレベルがどうのこうの言ったばっかりだけど、防御力全く上がってない!


装甲がベニヤ板もしくは、段ボールで出来てる!


『即死ではなかったし、普通の人間よりは多少強靭じゃ』


それ、人間以外の嫁無理だろうが!


同じベッドで寝ただけで、翌朝息を引き取ってるぞ!


なんだよこれぇぇぇ……。


「大丈夫ですか?」


「少し休ませて……」


肺に溜まった血を全て吐き出し、河原でそのまま横になる。


てか、動けない。


****


十分ほどで動けるようになった……。


なったけど、動けねぇぇ!


メアリーが仰向けの俺の太股を枕にして、眠ってしまっている。


俺ぇぇ、砂利で背中ものすごい痛いんだけど……。


仕方ない……。


もう、仕方ないって言いたくない……。


『……不憫じゃ』


俺はそのまま眠ったよ……し! か! た! な! く! ね!


****


翌朝目を覚ますと、涙目のリリムと……。


ああ……ナイフですね。


はい、そうですよ。


カーラに殺されかけましたけど、何か?


朝食を作るのも俺なんだけど、矢を回避しながら作りましたけど、何か?


ええ! 町に着いてホテルにチェックインするとき、ホテルの人に服が血だらけで心配されましたけど、何か?


もう、嫌だ……。


あの三人、加減知らないんだもん。


命がいくつあっても足りないよ……。


「レイよ。出発は明日だが……」


後、ホテルの部屋がガチホモと毎回一緒なのも、もう嫌だ。


てか、明日だがなんだよ!


こいつもいい加減無口すぎる!


「出発は明日の昼間だよ。どうしたんだ?」


「先程陶芸の工房を見つけたんだが……」


「行ってくればいいんじゃないか?」


「お前もどうだ? 精神が統一できるぞ?」


だから! なんでため口!?


てか、お前と一緒は絶対! 嫌!


「遠慮する」


「そうか……」


ゴルバは作業着をかばんにしまい、イソイソと出掛けた。


そう言えばあの作業着のせいで、遭難したんだよなぁ……。


俺の周りは嫌なことだらけだな……。


さて……。


見つからないようにホテルを出ないとな。


一応約束だしなぁぁ……。


しかし、まさかここまで時間がかかるとは……。


****


俺は、ホテルの窓から屋根伝いに町の中心部へ向かう。


そして、目的の店をまわった。


さてっと!


ん!?


なんだ? あの行列は?


町中の大きな建物に、行列が出来ていた。


看板には……。


古代の魔法具展示開始か。


博物館ねぇ……。興味ないな。


それよりも夜のお店の下見を……。


って……マジかよ。


ジジィ!


『……どうした?』


あれ……。


『あのローブは!』


ああ……あの馬鹿共と同じだ。


『まさかこの町も!』


これはつけた方がいいよな。


『うむ』


見た事のある紋章が書かれた白いローブを纏った奴らが、博物館へと入っていく。


俺は、入場料を支払い博物館へと入った。


****


どこだ?


てか……。


お前ら邪魔ぁぁぁぁぁぁ!!


博物館は今日が初日と言う事で、人がすし詰め状態だった。


おおおう……。


苦しい……。


一つの展示物約一分で、波となった人達が動く。


流れに逆らえない!


俺は、展示品なんて興味ないんだよぉぉぉぉぉ!


どけよ! お前ら!


****


…………。


ジジィ、これは?



『これは大昔の魔道砲じゃな』


三十分後、心の折れた俺は、ジジィに古代の魔法具を解説してもらっていた。


だって、動けないんだもん……。


これなら、博物館から奴らが出てくるのを待つべきだった。


まあ、後の祭りですけどね。


これ、なんかキモイね。


『これでも古代の神の偶像じゃ。ほれ、まだ魔力が残っておるじゃろうが』


何に使うんだよ。


こんな気持ち悪い像。


『確か……神事の際に、神と交信する触媒になったはずじゃ』


ん? これ使えば、神と喋れるの?


『いや、実際は雑霊を呼び出す程度の効果しかないはずじゃ』


なんだ……じゃいいや。


へぇぇ……。


これは綺麗だね~……。


『興味がなさそうじゃな。これは……』


いいや……。


どうせ、古代の魔宝石かなんかでしょ?


魔力も残ってるし……。


『その通りじゃ! これが開発された時は画期的で、門外不出の技術と……』


いや、大体分かるからいいよ。


なんでそんなにテンション高いの?


『わしにとっては懐かしいものじゃ。多少は……』


年寄りの昔話長い……。


知らない事はする事ないから聞くけど、それ以外はいいよ……。


『そう言うお前は本当にテンションが低いのぉ。おっ! 次は初めて出版されて魔道書じゃ!』


うざいよ……。


ただの古い魔道書でしょ?


『今より技術的に劣る魔法も多いが、今は禁術となった魔法まで載っておるんじゃぞ?』


どうせ、しょうもない魔法だろ?


『そうじゃな……。お前が欲しがりそうなテンプテーション(誘惑)の魔法も載っておったぞ?』


へ~……どうでも……。


マジですか!?


それって、自分を好きにさせられる魔法だよな!


『うむ。人心を惑わすと言う事で、禁術にした魔法じゃ』


したって……ジジィが指定したのかよ!


もったいない!


『本当に一時的で、たいして役には立たんぞ?』


効果持続時間は?


『……一時間』


十分じゃないか!


『言うと思った。わしは、お前みたいな輩から女性を守るために指定したんじゃ』


余計な事を~……。


『それ以前に、お前は魔法が使えんじゃろうが』


あっ……そっか……。


ジジィと契約してるから、魔力が変質して普通の魔法使えないもんねぇ。


って、全部お前のせいじゃね~か!


『おっ! あれは転移魔方陣の……』


聞いてね~し……。


これ……いつ博物館から出られるんだろ……。


****


ジジィ?


『なんじゃ?』


これはどう言う事?


『お前じゃから仕方がない……』


俺はトイレに行きたかっただけなのに、何故見た事もない場所へ?


『いい加減、現実を直視せんか? 流れに逆らおうとして、立ち入り禁止の部屋へ転がりこんだ上に、迷ったんじゃ』


スタッフルームに、自動転移装置つけるとかってどうよ?


戻ろうとして同じところに入っても、訳のわからない場所に行きつくし……。


誰か……助けて下さい!


もう三十分以上迷ってます!


膀胱が破裂します!


って! ああああ!


あいつら~!


こんなときに!


二十五回目の転移で行きついた場所に、例のローブを着た集団がいた。


こいつら……。


泥棒!


『あれは! 古代の魔法石じゃ!』


「待て!」


「ん? 君は確か……」


ああ?


もしかして前に会った、オリハルコン持ちか!?


「丁度いい! これを一つ試すチャンスだね!」


はぁ!?


何言ってるんだ? こいつ?



うおおお!


ローブの男が魔宝石を一つ地面にたたきつけると、強力な魔力が噴き出してきた!


なんだ!? こいつは!?


『そうか! あれはただの魔宝石ではない! 魔獣の捕獲用じゃ!』


はぁ!?


水晶じゃなかったぞ!


『昔は効率が悪かろうが、宝石に掴えておったのじゃ!』


紫の煙が形をなしいく……。


この感じは……。


『古代の魔人じゃ……』


でかいツノの生えた、ムキムキのおっさんが出てきた。


全身紫だよ……。


趣味わりぃぃな……。


う~ん……。


小便が漏れそうだ……。


「三千年ぶりの復活だ! 小僧! わしの復活の祝いとして……」


あ?


なんかくれるの?


「お前を食ってやろう!」


そうですか~っと。


「では! 行く……ああ?」


魔剣にコアを貫かれた魔人は、塵へと変わる。


「そ……ん……な……」


『アルティアでの苦戦が嘘のようじゃな……』


今更Bランク上位の魔人なんて、本気出せばこんなもんじゃん。


それより……。


『逃げ切られる前に!』


いや! 違う!


『どうした!?』


トイレ~……。


もうマジで無理……。


『まあ……もう、逃げられとるしな。トイレに向かうか……』


うぅぅぅぅぅぅぅんっ!!


****


俺は、若干前かがみで移動を開始する。


あ……あああああ!


『馬鹿者!』


ふ~……。


生きてるって幸せ……。


限界を迎えた俺は、ロッカールームの隅で……。


えへへっ! やっちゃった!


『……まったく』


これが、俺の最大の妥協です。


これ以上は無理だったの!


『ふ~……。しかし……んん!?』


どうした?ジジィ?


『あの……あれじゃ……フラグが立ったぞ』


はぁ? なんの?


『足元を見ろ……。今お前がションベンをかけたそれは、古代の石版じゃ』


はいぃぃぃぃぃぃ!?


あの……これ……。


『うむ』


はうあああ!


部屋に人が入ってきた瞬間、俺は走り出していた。


こういうときに限って、一発で転移に成功するんだ。


悪運よ……今日は有難う……。


俺が、博物館から飛び出すと同時に警報が鳴り始めた。


****


「全く! あの馬鹿は! あれほど一人で出歩くなって言ったのに!」


「次から、レイに首輪でも付けるか?」


「俺が部屋を出た時は、居たんだが……」


「あ! あれはレイじゃないですか?」


「こっちこっち!」


「あら? あの後ろから走ってくるのは……」


「兵隊!?」


「あいつ! またぁぁぁ!?」


俺は、リリス達に進めの手信号を送る。


そして、今日も二十キロほど全力疾走……。


****


はっ……ははははっ……。


パパン……ママン……。


俺、今日そっちに行くかも。


その時は優しくして下さい。


最後までいい事がありませんでした。


えっ? 今?


何故か縛り上げられて、木に吊るされています。


誰にって?


もちろん! 仲間に……。


泣いちゃ駄目だ。泣いちゃ駄目だ。泣いちゃ駄目だ。泣いちゃ駄目だ。泣いちゃ駄目だ。


「あんたはぁぁぁぁ!」


「舌の根も乾かないうちに……。何してたんだ!」


「約束では命を覚悟するはずだが……。いいんだろうなぁ!」


怖いです。


何がって、自分の運のなさ以上に女性が怖いです。


こぉぉぉぉろぉぉぉぉぉさぁぁぁぁぁれぇぇぇぇるぅぅぅぅぅ!!


「さあ! 言いなさい! 何してたの!」


「さぁ、怒りませんから……。言いなさい!」


もう、怒ってるじゃないですか……。


「いや……。少し、買い物して、博物館でトラブルに巻き込まれた……」


あああ!


やめて! やめて!


殺そうとしないで!


「全く! 何を買っていたんだ!」


「これね! くだらない物だったら……」


「これって……」


「いや……あの……約束なんで……」


俺の腰の袋からは、ネックレスとブレスレットとヘアーアクセサリー(髪どめ)。


「これの為に!?」


「あの……やっとお金が出来たから、驚かそうと……」


「馬鹿ね……」


「馬鹿だ……」


「本当に馬鹿ですね……」


そんな笑顔で、馬鹿馬鹿言わないで……。


「腕時計がない……」


お前のなんて買うか! ガチホモが!


「仕方ないですね……」


「まあ……お前が選んだにしては、いいデザインだ」


「今回は許してあげる……」


ふぅぅぅ……。助かった~……。


死ぬかと思った~……。


そして、その晩俺は……。


あれ?


あの……これ!


縛られたままなんですけど!


俺だけ、木に吊るされたままなんですけど!


え!?


許すって殺すことだけ!?


お仕置きは免除不可!?


なんだよこれ~……。


ああ……。


やってらんね~……。

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