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Mr.NO-GOOD´  作者: 慎之介
第二章:魔法の国の傭兵編
15/106

一話

「お~い! 二○三号室だ!」


「へ~い……」


「返事は、はいだろうが!」


「はいはい……」


「はいは、一回!」


「ふぇ~い……」


ゴスンと俺の耳の奥に、鈍い音が轟く。


「痛!」


俺は、オーナーにモップで頭を思いっきり殴られた。


「お前は、私を舐めてるのか? クビにされたいのか?」


「滅相もない! すぐに準備します!」


「それでいい……。はよ行け!」


「はいぃ!」


俺は、リネン道具を担いで二○三号室に走った。


まだオーナーに殴られた頭が、ズキズキする。


あのぉアマァ……。


いつか、おっぱい鷲掴みにしてやる!


やあ! 皆! 俺! レイ:シモンズ!


しがないホテルの、住み込みリネン係さ!


一時の感情に任せてアルティア聖王国の士官への道を棒に振ったうえに、指名手配された、『ちょっと頭が残念な』十七歳!


誰の頭が残念だ!


ムカつく合の手入れるな、ジジィ!


『間違えておらんじゃろうが。また、空想上の皆? と、喋り出しおってからに……』


確かに馬鹿だったけども……。


あ! 今のは魔剣のクソジジィ!


俺の右腕に寄生している、魔剣の意思なんだそうだ。


一日のうち数時間はこのジジィが、俺の頭の中に住み着いて話しかけてくる。


うぜぇぇ。


『もう少しわしを敬わんか! そして、見えない友達にわしまで紹介するな!』


うっせ、死ね……。


『お前が死ね……』


最近は頭の中で毎日このジジィと、しょうもない会話をしている。


昔は皆に嫌われていて、人と喋らずに一週間過ごす事もあったので……。


『ありがたいじゃろう?』


正直、面倒くさいです。


『こいつは……』


それよりも、あの事件からの経過についてだけども……。


現在ニルフォ共和国の東地区にある、安ホテルの屋根裏で暮らしている。


まあ、平たく言えば住み込みでの下働きです。


うちホテルは値段がびっくりするぐらい安く、宿泊だけでなく休憩するだけの客も来る。


まあ、旅人でもないカップルも来たりするわけですよ。


厚化粧で露出度の高い服を着た女の人なんかも、お得意様だったりします。


俺の実力があれば、ギルドに入って荒稼ぎが出来ると思ったのだが、考えが甘かった。


国籍がないうえに、俺の手配書がいたるところに張り出されていて、自由に動けない。


国の恥になるとでも思われたのか、手配書にはただの人探しとしか書かれていないが、賞金がかけられてます。


手配書以外の何物でもありません。


今居るニルフォ共和国は、西と東で大きく違う顔を持つ。


西地区は商人が多く住み、由緒正しい大きなギルドが多い富裕層の住む町で、東は無法なお尋ね者の多いギルドや富裕層の下請けをしている貧困層の住む町だ。


俺がいるのはもちろん、東地区。


はぁぁぁぁ。


最初に西地区のギルドに行くと、俺の手配書が何枚も貼られていた。


唯一の救いは、俺は友達がいなかったので写真をほとんど撮った事がなく、手配書も手書きの絵だった。


そのおかげで、周囲の人はすぐには気が付かなかったらしい。


それでも、最近は髪を伸ばして帽子を深くかぶり、目元を隠している。


掴まってたまるか! 折角手に入れた自由なんだ! お金貯めて彼女作るんだ!


『またそれか……。架空の友達への説明から、ただの心の叫びになっておるぞ?』


俺は、その為に死の淵から蘇ったんだ!


『そんな目的で回復させた覚えはないんじゃがな……』


うっせえ、ジジィ。


『死ね、ガキ』


……。


まあ、西地区で仕事が見つけられず途方に暮れていたところを、このホテルのオーナーに拾われた。


賃金はあまり良くないが、住む部屋と食事付きだ。


それに、オーナーがなんと美人なんだ。


すぐに跳びついた俺だったが、このオーナー……隙がないし人使いが荒い……。


長年マキシム家で下働きをしていた俺はベッドメイキングもなれたもんだが、週休二日とか言ってたくせに、部屋で休んでると休みでも手伝わされる。


そんな辛い日々を四カ月我慢して、やっとお金が貯まった。


これで、ギルドで働ける!


実は、アドルフ様にもらった憤怒のマスクは目立つので、専門の店に見てもらったら元は数百万ギリはするものだった。


形を変えてもらうにも、二十万ギリは必要と言う事だったんで、この四カ月でその額を貯めた。


これで、顔を隠してギルドの依頼を受けられる。


お金貯めて、西地区に移住するんだ。


「次は三○一号室だ!」


「へ~い……」


ゴツンと鈍い音が、俺の頭から響く。


また、モップで殴られた……。


「はい……」


「宜しい!」


何故俺は、下働きから逃れられないのだろう。


『運命じゃな……』


やってらんね~……。


****


翌日俺は早速依頼しておいたマスクを受け取り、ピアスに戻すと耳につけた。


店のオヤジが、サービスと言う事で嘆きの服をマントに作り変えてくれていた。


ありがたい。たまには俺にも、いい事あるじゃん。


代わりに、ホテルの割引券を要求されたので、オーナーに黙ってくすねておいた券を三枚ほど渡しておいた。


****


期待に胸を膨らませた俺は、東地区でも小さいが堅実な仕事で有名なギルドに行くことにした。


ここは、訳ありの人間でもギルドマスターの目にかなえば雇ってくれるそうだ。


魔剣を出すわけにはいかないので、客の忘れ物の中でもマシな剣を携え、心拍数を上げながら中に入ることにした。


中は酒場のようになっており、見るからに荒くれ者って感じの人間がいっぱいいた。


カウンターの中に、初老のひげをたくわえたおじさんがいる。


「あの……」


「なんだ? 小僧」


「ギルドマスターさんはいますか?」


「何の用だ?」


意外に鋭い目つきをしたおじさんが、俺を睨んでくる。


酒場という場所自体に入った事がなかった俺は、緊張して声が裏返っており、掌から汗が噴き出していた。


「ギルドに登録したいんですけど……」


「ふん……。構わんぞ」


「はい?」


「だから、俺がギルドマスターのザザンだ。フェザーギルドへようこそ、小僧」


おおぅ……。


「えっ? そんなんでいいんですか?」


「なんだ入りたくないのか?」


「いえ! ありがたいんですが……」


驚きから慌て始めた俺に、ザザンさんは笑いかけてくれる。


目つきの鋭さや腕のごつさから、強そうに見えるその人は、意外にいい人っぽい。


「そう、構えるな。お前、ホテルの下働きしてる小僧だろう?」


「はっ……はい」


俺は、まだマスクもマントも装備していない。


剣を持っているだけだ。


「うちは、ギルドと言っても半分はなんでも屋だ。どぶ掃除から屋根の修理、モンスター退治までなんでも請け負っている」


ああ……。


「A~Cクラスの仕事は戦闘もあるが、D~Fクラスはそんな危険もない。小遣い稼ぎにはいいだろう? お前以外の小僧達も、小遣い稼ぎに登録しているぞ」


なるほど、そうなんだ。


「だが、お前のクラスを決めるために、取り敢えずだがテストだけはするぞ。いいな?」


「はっ、はい!」


「ところで、小僧。名前はなんてぇぇんだ?」


「あっ!レイ……レイン! です……」


「ふん……まぁ、偽名でもなんでもかまわねぇ。レインだな?」


ばれてらっしゃる。


「はっ、はい!」


「ついてこい」


ザザンさんについて、店の奥にある母屋らしき場所を抜けると、空が見えた。


そこは、塀で囲まれた訓練場のような場所だった。


屈強な傭兵らしき人達が数人、剣を振っている。


おお! なんか、それっぽいじゃんか!


「おおぉぉい! ノリス! ちょっとこいつのテストしてくれ!」


「うぃ~っす!」


ノリスと呼ばれた長身で色グロのおっさんが、俺の分も木刀を持ってこっちに歩いてきた。


「実戦テストだ。奴はAクラスだから勝てなくてもいいぞ」


「はぁ……」


最高ランクのAか……。


気を抜き過ぎて、恥ずかしい目に合うのだけは嫌だな。


「行くぞ! はぁ!」


ノリスは、俺に木刀を渡すと早速かかって来た。


「はっ! とあ!」


ええぇぇぇ……おっそっ!


所詮は、場末のギルドって事か……。


どうすっかなぁ。


Aクラスの仕事を受けてお金を貯めたいけど、目立つとまずいしな。


正直、CクラスかBクラスでいいんだよなぁ。


ノリスは一生懸命木刀を振ってくれているが、それじゃあいつまでたっても俺には当たらないと思うよぉ。


でも、こいつにわざと叩かれるのも嬉しくないしな。


う~ん……。


あっ! 木刀をわざと弾き飛ばされよう!


それなら痛くないし! 相打ちか負けた的に見えるはずだ!


決めた!


「とあ!」


俺は、ノリスの剣撃に合わせて木刀を手放した。


タイミングばっちり!


「そこまでだ!」


ノリスは、肩で息をしている。


スタミナ不足だな。


高々数分でこれじゃあ駄目だろう。


「お前、Aクラスだ」


はい?


「俺もそれで、いいと思います」


ノリスまで? 何で!?


俺は捨て犬のように訴えかける目をしていたらしい。


「レイン……。お前は、自分で気づいていないのか?」


「何がですか? よくてもBクラスでしょう?」


何が悪いんだよ!


お前の目は節穴だ? うん? えと……節穴か!


「何が不満か知らんが、ノリスの剣をその場から動きもせず片手でさばいて、わざと剣を手放しただろうが……」


ばれてらっしゃる!


芝居するの忘れてた……俺の馬鹿。


必死なふりするべきだった……。


俺は、がっくりとうなだれた。


「どうやら、訳ありらしいな……。どうだ? 訳を話してみないか?」


そう言うと、ザザンさんとノリスは俺を母屋の中へと通した。


そこで、二人とも元罪人で秘密は絶対に守ると喋り出しただけでなく、俺が訳を喋らないとギルドには入れないと言い始めた。


もぉぉぉ……超うざい……。


こんな時に相談したいジジィは、眠ってるし……。


どうする?


はぁ~……喋るか。お金の為だ。


俺は、アルティア王国から指名手配されている事を喋った。


「なるほど……。なら、アルティアからの仕事はレインには回さんようにしてやる。それと、さっき言ってたマスクとマントを見せてくれ」


俺は、言われるがままにマスクとマントを装備した。


「マスターこれなら……」


「そうだな。レイン、これからAクラスの仕事はそのマスクを装備して、Cクラスの仕事は装備せずに受けるのでどうだ?」


「えっ? そうしてくれると助かりますが……。いいんですか?」


「勿論、うちは実力者大歓迎だからな」


やった!


「宜しくお願いします!」


俺が、浮かれているとノリスがコップの酒を飲み干してから、聞いてきた。


「俺は昔酔って相手に大けがさせちまったんだが、お前は何したんだ?」


「えっ? ああ……。あの国って法が厳しいでしょ。ちょっと下法を使っちゃいまして……。そんで、脱獄も……」


「ああ……。あの国なら死罪だな……。秘密は守るよ」


「お願いします」


なんだ、ノリスもいい奴じゃん。


そこで、ザザンさんが会話に割り込んできた。


「Cクラスはレインで受けるとして、Aクラスの偽名はどうするんだ? 住んでる所にちなんでホテルマンにでもするか?」


だっさ! そんなの嫌だ!


「いや~……」


どうすっかなぁ?


「レインにちなんで、ヘイルなんてどうだ?」


おお! ノリスナイス!


「それで!」


「じゃあ、決まりだな」


「はい! 宜しくお願いします」


この日から、火木金土日はホテルのリネン係。


月水はフェザーギルドのレイン兼ヘイルとして働くことになった。


これで野望に一歩近づいた!


『しかし、相変わらず裏表が激しいなぁ。お前は……』


黙れ、ジジィ。


****


「おっ? 珍しいな。出掛けるのか?」


「はい。ギルドで小遣い稼ぎです」


「そうか、まぁ気をつけてな」


「はい!」


水曜日になり、俺は朝からギルドに出向く事にした。


ちなみにオーナーには、俺が借金で夜逃げしたととっさに言ってあるので、このバイトは反対されなかった。


実は、ハーレム目指した資金稼ぎだとは言えないしねぇ。


「おお。来たか」


「ザザンさん、何かいいのありますか?」


「これと、これと……」


ザザンさんは、C~Bクラスの依頼書を数枚出してくれた。


最初としては、これぐらいが妥当かな。


おおっ!


「これ! これにします!」


「そうか、どうする? 休みは今日だけならすぐに向かうか?」


「はい!」


俺はCクラスの依頼書を握り、ザザンさんから借りた馬に乗って隣の村へ急いだ。


おいしい仕事だ!


ターゲットは畑を荒らすゴブリン!


ゴブリンは体長一メートルくらいの子鬼で、DランクどころかEランクのモンスターだ。


魔剣出さなくても倒せる上に、報酬は五万ギリ!


ギルドの取り分引いても、手取りで四万ギリ以上は残る!


一日で四万! おいしいぜぇぇぇ!


その時の俺は、ゴブリンの厄介さを知らなかった。そして、自分の不運をすっかり忘れていた。


「フェザーギルドから来ました。レインです」


「宜しくお願いします」


俺は依頼主である村長のオヤジに挨拶をして、状況を聞いた。


村の外れの洞窟にゴブリンが住み着き、畑の野菜や家畜を食べてしまい困っていると言う事だった。


何度か村の人間で駆除しようとしたそうだが、日ごろは人を襲わない奴等だがこっちから何かすると、集団で飛び掛かってきてけが人が増える一方だそうだ。


まあ、Eランクでもモンスターはモンスターだ。


確か、ゴブリンは夜行性のはず……。


なら、日の高い今のうちに洞窟に行けば一網打尽に出来るな。


「どうぞ……」


村長の家で話を聞いていると、女の子がお茶を出してくれた。


「あっ……、どうも」


「お父さん。この方が?」


「ああ、レインさんだ。アルルも挨拶なさい」


「はじめまして、アルルです」


飾りっ気がない田舎の子と言う印象は受けるが、可愛い子だ。


村長の娘か?


「どうも、レインです」


「娘のためにも宜しくお願いします」


村長親子は、二人で頭を下げてきた。


娘のため?


ああ、確かゴブリンは雌がいないから人間の女をさらって行くんだったな……。


アルルちゃんが狙われてるのか?


ぬう? もしや……ここで、いいとこ見せればアルルフラグが、たっちゃったりするんじゃないですか?


これは思った以上においしい仕事だ。


『相変わらず、下心の塊じゃな……』


起きたのか、ジジィ。


『ふむ、ゴブリンとは良い修業になるのぉ……』


はっ? こんな雑魚がか?


『行ってみればわかる』


まあ、いいや……。


「じゃあ早速、洞窟に向かいますね」


俺は、村長の家から出て馬にまたがる。


「あの、これを……」


出発しようとする俺に、アルルちゃんが何かを手渡してきた。


手編みの組み紐?


「これは?」


「私が作った御守りです。どうか、ご無事で……」


「ありがとう」


おおおおおおおおおお! 待ってたぜ! この展開! それも十七年も!


『五月蠅いのう……』


うひょひょひょ!


『アホガキ……』


「じゃあ、行ってくるよ」


「はい!」


アルルちゃんに見送られながら、俺はゴブリンの巣である洞窟に向かった。


昼前にはその洞窟につけた。


電灯を持って洞窟を進み、ジジィが修行になると言った理由がそこまで行って理解できた。


「キキキィ!」


何百匹いるんだよ! 最悪だ……。


ゴブリン達は、俺の電灯に向かい一斉に飛びかかってきた。


****


「はぁ……はぁ……はぁ……」


俺が、ほとんどのゴブリンを倒した時には、すでに日が沈んでいた。


何時間戦ったんだ?


洞窟はせまいから、剣の振りに制限があるし、数が多いし、電灯が潰されて真っ暗闇の中での戦いだ。


俺が闇の中で戦うすべに長けてたおかげで、なんとかはなったけど……。


これならキマイラ一匹倒すほうが楽だった。


値段はこのせいか……。


ある意味五万じゃ安いくらいだ……ん?


「キキィ!」


やべっ! 岩陰! 二匹逃がした!


この気の緩みがいつも通り、俺に不運をもたらした。


****


俺は急いで、洞窟から飛び出し馬に飛び乗ると、逃げた二匹を追いかける。


奴等、村に向かってやがる!


すでに、村の住民は寝静まっているはずだ。


無防備で弱いとはいえ、モンスターに襲われるのはやばい!


ゴブリン達は、迷わず村長の家へ向かっている。


奴等にも知能はある。俺を村長が雇ったと分かっていて、仕返しでもするつもりか?


何する気だよ! このクソ鬼!


ジジィはまた眠ってるし! ああぁぁ! もう!


****


俺は、村の入り口で馬からおり、気配を消して村長の家に侵入した。


どこだ?


「きゃぁぁぁぁぁぁ!」


二階から、絹を裂くような女性の叫び声。


アルルちゃん!


俺は、悲鳴のした部屋へ飛び込んだ。


アルルちゃんが、二匹のゴブリンに襲われていた。


二匹に、寝間着を乱暴に破られたアルルちゃんは、すでに泣いている。


「はぁ!」


俺は、その二匹を一瞬で斬り捨て、塵へと変える。


「う……うう……う……」


アルルちゃんは、まだ泣いている。まあ、怖かっただろうよ。


でも、まだ何もされてないようだ……良かった。


「だいじょ……」


俺がアルルちゃんに声をかけようとした瞬間、扉が勢いよく開かれ、室内に村長が飛び込んできた。


アルルちゃんはまだ泣き続けている。


おやぁ?


「お前!」


何故だろう、村長はクワを俺に向かい思いっきり振りぬいてきた。


いやいや、死ぬから。


アルルちゃんと俺の間に入った村長は、怒りの形相でクワを構える。


もしやこれは……。


衣服がボロボロで泣いている娘。そこに、剣を持った俺がいる。ゴブリンは塵に変わった後……。


なるほどねぇ。


状況証拠的に、俺! 真っ黒じゃないですか! ちょ! 待って!


「よくも娘を!」


ああ……そうなっちゃいます?


くっそ! どうすりゃいいんだよ!


アルルちゃんは泣きやんでくれないし!


うわっ! 村長が本気でクワ振り回して襲い掛かってくる!


くっそぉぉぉぉぉ!


どうしようもなくなった俺は、二階の窓を突き破って逃げ出した。


だって、村長殴る訳にいかないものぉ。


今日も頑張ったのに~! もぉ~!


****


馬を走らせた俺がホテルに帰りついた時には、深夜になっていた。


深夜と言う事は、俺の休みは終了していた。


うちのホテルは、夜がかき入れ時だ。


ゴブリン退治で体力にきていた俺は、そのまま眠ることなく働くことになったわけで……。


オーナーの鬼……。


「オーナーの悪魔……」


ゴッっと、俺の頭はいい音を響かせる。


鼻の奥から、鉄の臭いがするよ……。


気が付かない間に俺は声を出していたようで、またモップで殴られた。


****


翌日の休憩時間にギルドに行くと、料金は支払われていた。


これが今回の唯一の救いだった。


もうあの村には、気まずくて行けやしない。


あ~あ……。


やってらんね~……。

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