表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/65

第七話 

 


「なんだ、その目」


 アスカの右目が淡く虹色に光っていた。


 闇を連想させる黒い瞳は姿を消しており、美しい虹色へと変貌している。


(嫌ぁな感じがするな)


 虹色に光る右目を見ていると、俺は妙な寒気に襲われた。


 嫌な感覚が身体にまとわりつき、俺が険しい顔をしていると、アスカが右目についてのことを、真剣な表情を浮かべて語り出した。


「右目が気になりますか?って当たり前か。これは精霊眼と言って、様々な因果を読み取ることができる魔眼です」


 因果を読み取る?精霊眼?


 また、おかしなワードが出てきたな。


「・・・」


 勇者だの、契約だの、精霊だの、十分おかしかったが、これも大概である


 ただでさえ理解しがたいことばかりなのに、更に出てくる新しいワードに、俺のパンク気味だった頭が更にかき回された。


「大体のことはこの瞳で見れば、答えが分かる、そんな代物なんです」


 そんな俺に気づいているのかいないのか、説明を続けたアスカ。


(ホントにそんなものあるのか?と言いたくなるぐらい、ヤバそうな能力だな)


「では、一旦解除しますね」


 それだけ言うと、アスカは右目を閉じる。


 じっくりと十秒間目を閉じ続け、再び右目を開けると、虹色の輝きはなくなり、元の真っ黒な瞳に戻っていた。


(あれ?どうして俺は刀を握っていたんだ?)


 ふと、右手を見ると、俺は愛刀の柄を握りしめていた。


(妙な寒気を感じたからか?)


 剣術などの武術や武道、格闘技などの研鑽をしていく過程で、自ずと人間は危機に対して敏感になっていく。


 それは俺においても同じであり、探索者となる前から危機を察知する能力はそれなりに持っていた。


 恐らく、精霊眼は相当危険なモノだったのだろう。


 無意識下で刀を握ることなど、初めての経験だった。


「とりあえず、分かりました。健一さんは私と会うべくして会った、それは間違いないでしょう」


 先程よりも一層真剣な表情で言っているところを見るに、本気でそう思っていることが伝わってくる。


 精霊眼というのが、どれほど正確なものなのか知りはしないが、彼女にとってそれは信憑性のある情報源らしい。


「なあ、アスカ?」


 ここまで来て、俺は選択を迫られている気がした。


 アスカは狂人だと判断し、ここから逃亡することが最も安全な選択だろう。


 普通の人間が知り得ない情報、契約という魅力的で不穏な言葉。


 正直アスカが嘘をついてまで、こんなことをする意味を見出せないため、俺は一連の言葉が本気なのだと思っている。


 このままアスカの事情に深入りすれば、ヤバい世界に足を踏み入れるのは、明白だった。


(止めるべきだ)


 ここで踵を返せば、また普通の生活に戻れるだろう。


 比較的安全で、少し大変ではあるものの、ほどほどに幸せな普通の生活を享受できる。


 それこそが、幸せなことなのかもしれない


(だけど、俺は嫌なんだよな)


 ありふれた会社員として、凡百な探索者として、生きていく。


 そんな生き様が嫌だったのだ。


 もしかしたら、未知の領域に足を踏み入れれば、何か変わるんじゃないか。


 俺はそんなことを期待していた。


 だから、こんな場所に足を向け、わざわざ危険に飛び込んでいったのだろう。


「俺と契約したのには何か理由があるんだろ、それを教えてくれ」


 もう引き返すことができない、俺はそんなことを思いながら、アスカにことの真意を問うのであった。




読んでいただき、ありがとうございます。

この作品の総合評価が100ptを超えました。

皆様のおかげでここまで至ることができ、本当に嬉しいです。

重ねてお礼申し上げます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 何でもかんでも否定しっぱなので、こいつ探索者の何に憧れてこんなんやってるのか不思議になってきた。 ちょっと前の世界からすりゃファンタジーな世界で、更にファンタジーなダンジョンに通ってて…
[気になる点] >澄原さんは私と会うべくして会った 前話までほぼ名前呼びだったのになぜか苗字呼びになっています。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ