第四十九話
「その適応力には感心しますね」
彩の言葉を聞きつつ、俺は地面に落ちていた鬼切を拾う。
土などを払うため軽く振るってから、鞘に納めた。
「ある程度はな。だけど、高校の頃の周りの連中はもっと凄かったんだよ」
あの頃の学年トップ一桁代は全員化け物だったからな。
俺は異能のおかげであの連中にも負けなかったが、彼らの戦いや武器に対するセンスは抜群だった。
特に学年一位の戦闘に対するセンスと武器の扱いの上手さは化け物じみていた。
(俺はそこまで、だからな)
彩の投擲を見て、軽く使える程度には俺のセンスはあるが、刀ありきのただの人間(混血だが)だからな。
素手で全く戦えないこともないが、剣術を応用した動きはできるものの、剣士として戦うよりも劣った実力しか出すことができない。
天才は何をやっても天才だ。
どんな技術も上手く自分のものにして、より発展させ上のステージに行く。
「てか、彩も大概じゃないか。礫を素手でいなすとか」
あれは見ていて引きそうになった。
しかも、ただ礫をいなすだけではなく、そのまま勢いを増した状態で返していたように見える。
「誰でもできますよ」
いや、それはない。
「アレが誰でもできたら、みんな一流の探索者にはなれるわ」
あんなことが常人にもできる世界だったら、その世界で戦いに携わって生き残れる自信はない。
というか、魔人とか怪異とかも生き残れないだろう。
「技術ですから、やれるまで練習すれば、誰でもできます」
「それができないのが常人だ」
彩は至極真面目に言う。
彼女にとっては自分ができることは、他もできるという解釈、いやそういう考えをあえて持つように育っただけか。
何せ、爺さんを見て育っているだからな。
あれを見て育てば、自尊心などそこまで育たないだろう。
「それで、ここでこのまま狩り続けるのか」
術ノ土鬼を狩り続けるのも悪くないが、面倒と言えば面倒である。
割とサクサク狩れるが、いちいち小賢しい攻撃を躱すか防ぐかしないといけないので、面倒であった。
「いいえ、今日は第二十一階層での狩りを主に行いたいと思っています」
「ほう、その心は」
二十一階層にいるのは、近接を重視したパワー系のモンスターだったはずだ。
一人もしくは二人程度ひきつけながら、残りのメンバーで致命傷を与える。
そんな戦い方が主流だったはずで、今の俺が単身でやるには些かきついような気がした。
「今の戦いを見て、より上で戦った方が効率がいいと感じたからです」
「だが、俺はレベル95だぜ」
フィジカルが足りない気がするんだけどな。
高校時代も他と差をつけられたのは、レベルが上げられない分フィジカルに差が出たからだし。
「見た感じでは大丈夫だと思います。パワーでは劣っていますが、鬼切を使った二刀流で戦えば、危なげなく戦えると思いますよ。もし、不安であれば、最初は手伝いましょう」
術ノ小鬼を相手にする時は俺一人でやらせたにもかかわらず、わざわざ言うということは、彩から見てリスク自体はあるわけか。
死のリスクが。
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