第四十七話
「それにしても鬼か~」
俺は刀で攻撃を捌きながら、言う。
弾かれた礫が火花を散らしながら地面に落ちた。
「鬼がどうしたんですか」
迅速に間合いを詰めた彩が術ノ土鬼の腕を斬り落とす。
「ギャヒャア!?」
術ノ土鬼の足元から槍が生える。
彩はバックステップで間合いを取り、今度は俺が回り込むようにして間合いを詰め、その首を刎ねた。
「いや、俺はどんな怪異の混血なのかなぁと」
手と首を失い、光の粒子となる術ノ土鬼。
何かしらの怪異の血を受け継いでいるのは分かっているのだが、それが何なのかは未だに分かっていない。
心を読めるというのはそれなりに限定されているようで、どの妖怪や怪異にもできそうな能力である。
「その辺りは大抵身内には知らされていますが、知らされていない澄原様が知るのは難しいでしょうね。私は親が鬼なので、流石に分かりますし、変化も顕著ですから」
彩は刀を振って、鞘に納める。
既に俺たちが倒した術ノ土鬼の合計は十体を超えた。
「次は二体同時か」
眼前に佇む醜悪な小鬼。
こちらを認識すると、すぐさま攻撃に移してきた。
礫が飛来する。数は七。
避けにくく配慮された間隔で散りばめられており、回避をするのはむしろ隙を生むと判断する。
「ほっ」
刀を手元でくるりと一回転させ、纏めて三つほどの礫を叩き落す。
「はあ!」
彩なんかは素手で礫をいなし、壁に叩きつけていた。
(器用だなぁ)
そのまま礫を術ノ土鬼に返せば、倒せそうなものだけど。
今回は攻撃に加わらないということか?
(それなら、やるしかないな)
「おっと」
軽く首を振って、地面から出てきた槍を回避する。
術ノ土鬼はそのタイミングで、礫が俺に向かって飛ばしてきた。
「はいっと」
それもしっかりと刀で打ち落とす。
面倒だと俺は間合いを詰めに行くが、地面から土の槍が無数に飛び出し、行く手を阻んだ。
(二体同時は結構メンドイな)
攻撃に隙が生まれにくい。
タイミングは既に分かっているんだが、詰めようとしても、もう一体が邪魔をして、なかなか前に出ることができない。
(パターンが存在しているんだろうが、まだわからんな)
とりあえず、鬼切を逆手で抜き、二刀流となる。
(突っ込むか)
前に体重を乗せ、一気に間合いを詰める。
地面から槍が出てきたので、鬼切でまとめて斬り捨て、礫はいつもの刀で叩き落した。
(ほい、到達)
刃が届く間合いにまで近づいたので、鬼切を振るうと、そのイミングで、地面から壁が現れた。
「ギョヘ?」
壁は俺が振るった鬼切により、断ち切られる。
キョトンとした表情をした術ノ土鬼の心臓辺りに刀を刺し入れた。
「ギェヒィ」
(おいおい)
しっかりと心臓を突き刺したはずだが、術ノ土鬼は刀をがっちりと掴んだのだ。
そして、もう一体の術ノ土鬼が礫を間近で放とうとする。
俺は突き刺さった状態の刀を離し、体を横に投げ出した。
「シッ」
目の前を礫が通り過ぎていく。
俺は体勢を立て直し、礫を放ってきた術ノ土鬼に鬼切を投げつけた。
「ギャ!」
グサリと鬼切が突き刺さる。
それを見届けると、俺は心臓に刺していた刀をスライドさせ胸を切り裂き、再び、刀を手中に収めた。
「あっ終わりか」
鬼切を投げた方は既にこと切れている。
最初に刀を刺した方も、今の一撃で地面に倒れており、ピクリとも動かなくなっているのだった。
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