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第四十四話

 

 チリチリとした空気が俺と術ノ土鬼を中心に周囲に広がっていく。


「来ます」


 彩の無感情な声がダンジョン内で反響する。


 俺は意識を末端まで尖らせ、攻撃を見逃すまいと目を見開いた。


「グギャ」


 術ノ土鬼が奇怪な声を出したかと思うと、直径三十センチほどの黒い礫が宙に生まれる。


 礫はこちらに照準を合わせると、間もなく弾丸のように飛んできた。


 空気を切り裂いて飛来した礫を、俺は体をズラして躱す。


 礫は強烈な勢いのまま真っ直ぐと地面に激突し、そのまま地面に埋まった。


「ちっ」


 間髪入れず、俺の周囲の地面から槍が生えてきた。


 だが、わずかに槍同士の距離が開いており、数は増やせないが攻撃の方向性は変えられるらしい。


 俺は余分に空いた槍と槍の隙間を、縫うように体をよじらせることで回避する。


「ゲェハハ」


 汚い声で嗤う、術ノ土鬼。


 コイツは俺が躱す姿を見て、嗤っているらしい。


「はっ、殺す」


 頭に血が上っていた俺は鼻で笑い、壮絶な笑みを浮かべた。


「ゲハァ」


 宙に二つの礫が生まれ、射出される。


 再び飛来する礫の一つを今度は避けるのではなく、刀で弾いた。


 絶妙なさじ加減で弾かれた礫は、術ノ土鬼に飛んでいったが、突如発生した土の壁によって防がれる。


「ゲヒ?」


 しかし、術ノ小鬼の視界が自身で作り出した土の壁によって狭まる。


 好機と捉えた俺はより強度の増した身体能力をフルに使い、山を駆ける鹿のように一気に距離を詰めていく。


「ゲヒャ」


 間合いを詰めていく際に、地面から槍が伸びてきたものの、俺は刀で切り払うことに成功する。


(固いな)


 槍はなかなかの硬度を持っており、斬り捨てるのに若干の間が生まれた。


「もう、慣れた」


 だが、そんなのはおくびにも出さず、余裕の笑みを浮かべて近づいていく。


 一度目で殺せなかった時点でもう、攻撃は俺には有効ではない、そう心の中で言いながら。


(目はいいからな)


 動けるのは別だが、異能が使えれば基本的には攻撃は通じない。


読めるのだから当然だ。


どんなに相手が速くとも、来ると分かっている場所に刀を突き出せばいいだけなのだから。


(あの爺さんは別だがな)


 例外は八雲の爺さんの一撃ぐらいだ。


 速さは認識しても意味がないぐらいのものだし、動きも無駄がなく殺しに使うとこを鑑みるに、完璧と評せる。


 倒すのは骨が折れるだろう。


「死ね」


 距離が一メートルを切ろうという時、俺は小鬼の首を刈り取らんと身体全体を使って刀を振るうが、すんでのところで土の壁に邪魔される。


 更に壁から槍が伸び、俺は回避をせざるを得なかった。


(強いな)


 今の一撃で決めきれなかったのは、正直想定外だ。


 これまで戦ってきたモンスターは刃の圏内に入れば大抵は殺れた。


 勿論、その過程は強ければ強いほど大変ではあるがな。


「面倒なことこの上ないな」


 いつの間にか発生した礫が俺の刀によって弾かれ、地面に落ちる。


 続いて、礫が五発宙に浮いたかと思うと、避ける隙間をなくすように飛んできた。


 更に、地面から()()の槍が生える。


(マジか)


 想定外の槍の数。


 更に全ての攻撃が絶妙に躱しづらい位置を狙って、なされている。


 俺は当たりそうな二発の礫を弾いたが、槍を全て躱すことはできない。


「ギェヒャ」


 術ノ小鬼が喜色満面の笑みを浮かべる。


 槍の一本が胸を貫くかと思われたが、


「よく見ろ」


 俺の左手は腰に差してある脇差、【鬼切】に添えられていた。


 居合の要領で抜き放つ。


 一筋の閃光となった斬撃は、土でできた槍を容易く切り裂いた。


「グギャ!?」


 まさか防がれるとは思っていなかったのだろう。


 術ノ小鬼が驚いた表情をした。


(これも決まった動きなんだよな)


 俺の異能はモンスターには働かない。


 こいつの感情は読めないし、分かるのは殺意があるということだけだ。


 俺は再び接近する。


「グギャア」


 地面から壁が伸びるが、俺は冷静に鬼切を振るう。


「ギェア!?」


 壁を真っ二つに切り裂いた直後、俺は右手に持った愛刀を振るった。


 術ノ小鬼の喉がぱっくりと割れ、血が噴き出す。


「ふっ」


 最後に苦し紛れに飛ばしてきた礫を鬼切で弾いた。


 そして、刀を振り、血を落とす。


 ちょうど礫が地面を跳ねるタイミングで、術ノ小鬼は光の粒子となって消えるのであった。







読んでいただき、ありがとうございます。

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