第四十一話
あの後、日本退魔連合本部を後にした俺たちは川崎家が出資している会社系列のホテルにチェックインをし、取っていた部屋中へと入っていった。
(おっ、届いてるな)
部屋の中には事前に部屋へと送っており、俺たちは軽い荷物だけを運ぶようにしていた。
届いていた荷物を検め、問題がないことを確認する。
(あ、折角だし、さっきの話で気になったことを聞いておくか)
アスカはベットの上で寝転がっており、彩は武器の手入れを始めていた。
「そういえば、彩」
「なんでしょうか」
彩が装備の手入れを止め、こちらに向き直る。
ベッドの上に置かれているのは刀、大振りで片刃のナイフ、投げナイフ、礫、拳銃などなど、本当に多種多様な武器類であった。
「ダンジョンの閉鎖なんだが、あんなことして良かったのか?」
ダンジョンの一部分ではあるものの、探索者の立ち入りを禁止するのだ。
二十階層から三十階層の閉鎖など、そんな簡単にできるものでもないことぐらい分かる。
「良くはないですが、川崎家の権力と精霊の契約者のレベル上げのためという大義名分があれば問題はないですね」
川崎家の権力、凄いな。
それに精霊の契約者も。
「精霊の契約者ってそんなに凄い扱いなんだな」
こんな扱いだったら、何かしらとっとと退魔に携わってる連中に接触しておくべきだったのかもしれない。
(いや、接触の仕方は分からないから、無理か)
「今の時代だからこそですがね、日本退魔連合が澄原様という存在に肯定的だったからです。本来、精霊の契約者は勇者の一族がなるはずですから」
もし、日本退魔連合とその勇者の一族がどっぷりつかっていたら、ダメだったかもしれないのか。
「勇者の一族は日本には一つしかありませんし、権力もまずまずの連中ですから、日本退魔連合も精霊様の方を優先したのでしょう」
彩はアスカの方を見て言う。
何にせよ、良かった。
こうやってサポートしてもらいながら、レベル上げができるのだ。
それが地獄であろうとも、探索者としてより上を目指す俺にとって、助かることに変わりはない。
「あと、探索者協会と日本退魔連合って、もしかして、かなり深い関係なのか」
探索者協会と日本退魔連合が深い仲でなければ、閉鎖などはできないので、半ば答えが出ているようなものだが。
はたして、答えはその通りだった。
「はい、その通りですよ。そもそも探索者協会の重役は、日本における退魔の関係者がほとんどです」
「そこまでか」
ずぶずぶだな。
「そもそも、日本で主にダンジョンへの調査を行ったのは退魔師ですからね」
「ほ~ん」
少し吟味する。
(ああ、そういうことか)
探索者の多くは武器術を修めた者たちだ。
それは銃火器は最初こそ使えるが、徐々に弾丸が有効でないモンスターが出始める。
そうなってくると、高レベルの探索者が剣や刀などの武器を使ってする攻撃の方が、より効果的なのだ。
「元々怪異と戦っていて、ノウハウが蓄積されてますからね。退魔師は怪異を滅ぼすため、優秀な遺伝子を取り込んで、脈々と受け継いでいる者たちです。異能を持った者たちも含めて、彼らがダンジョンという空間では適任でしたから」
有名なスポーツ選手とかも、親がスポーツ選手だったとかはよく聞く話だしな。
それと同じようなことだろう。
「そして、結果を残した者たちが適当な地位にいると」
「そういうことです」
はあ、そんな背景があったとはな。
ホント、知らないことばかりだ。
「さて、おしゃべりはこのぐらいにして、準備をしましょう。この後はダンジョン探索が待っているのですから」
そう言うと、彩は武器の手入れを再開する。
俺もダンジョンで命を奪われないため、刀の手入れを始めるのであった。
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