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第二十二話

 


(まさか、レアアイテムがドロップしたのか?)


 モンスターを倒した際、ごく稀にレアアイテムというものがドロップすることがあった。


 その際には魔玉は手に入らない代わりに、高額で買い取ってもらえる素材が手に入れられるが、確率は統計によると一万分の一と言われている。


まずはお目にかかれない代物だ。


「これ、もしかして凄いものなんですか」


 川崎が小瓶を左右に揺らしながら言う。


「そうだ。だから、一旦動かすの止めような」


 パラライズスライムのものとはいえ、一本当たり二万か三万程度にはなるだろう。


 第一階層だけでの稼ぎとしてはあり得ない金額であった。


(俺の一日の稼ぎを超えられたな)


 川崎はかなりの豪運を持っているのだろう。


 初めて手に入れたのがレアアイテムなんだからな。


 それがどれほどの確率なのか見当もつかない。


「はい。でも、これどうしましょうか」


「そうだなぁ」


 まさかガラスの小瓶などがドロップするとは仮定してなかったのか、困った様子を見せる川崎。


 それは俺も同じで、ガラスの小瓶を入れるための箱や容器などは持っていない。


 中に入っている液体を別の容器に移せればいいのだが、それでは価値が大きく下がるかもしれなかった。


(さて、どうしようか)


 一体どうしたものかと悩んでいると、アスカから念話がかかった。


『私が魔法で何とかするから、それっぽいことを言って』


フンとそっぽを向きながら言うアスカ。


『本当か。アスカも役に立つんだな』


ちょっとした嫌味を込めて言う。


『今までも役に立ってるでしょ!』


『冗談冗談、アスカが役に立ってるのは分かってるって』


 軽い冗談を言ったつもりなのだが、怒らせてしまった。


「川崎、それを貸してくれないか」


『アスカ、ありがとな』


 しっかりとアスカに礼をいいつつ、川崎から小瓶を受け取る。


「とりあえずタオルで巻いて小さめのポケットにでも入れておこう」


 受け取った小瓶をタオルでぐるぐると巻き、ゴムで止めてタオルがほどけないようにすると、リュックのポケットへと入れる。


 これでそれっぽさは演出できたはずだ。


「今日はどうする?このままダンジョンを潜ってみてもいいが」


まだ一体だけだが、別に無理して探索を続ける必要はない。


この場所がどのような空間で、ダンジョンではどういった脅威がいるのか。


その一端でも知ることができている時点で、初めて行う探索は達成しているも同然だった。


「ぜひ、まだまだダンジョンのこと、知りたいですから」


 やる気は十分と、川崎は気合の籠った瞳を俺に向けてくる。


「そうか。川崎がそう言うなら、第二階層に行こう」


 俺の言葉にしっかりと頷いて返事をする川崎。


 川崎が右手に持つ槍から僅かに軋む音がした。


(それにしても、アレはただ運が良かっただけなんだろうか)


 いきなりレアアイテムを手にするなんていうことは、普通起こり得ないし、槍の動きが異常に良かったのも少し気になる。


(注視する必要があるかもな)


 アスカの精霊眼で見てもらえれば一発なのだが、色々と制約もあるし、まだ何かあると決まったわけでもない。


 だが、この世には勇者や魔人なんてわけの分からないモノが存在するのだ。


 なにが起きるか分からない以上、多少は警戒しておく必要があるだろう。


「よし、出発するか」


「はいっ」


 こうして、気合の入った俺たちは第一階層の奥へと進んでいく。


 ちなみに進んでいく過程で、パラライズスライムを狩ったりはしたが、川崎がレアアイテムを落とすことはなかった。





読んでいただき、ありがとうございます。

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[一言] 『本当か。アスカも役に立つんだな』 ちょっとした嫌味を込めて言う。 『今までも役に立ってるでしょ!』 軽い冗談を言ったつもりなのだが、怒らせてしまった。 これが軽い冗談と思うんだ。一緒にパ…
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