第十九話
ジュウジュウと肉の焼ける音がする。
現在、俺の住んでいる部屋の中では、今回の探索の成功を祝しての焼肉パーティーが行われていた。
「私の初探索を祝して、乾杯~」
「乾杯」
俺はビールの入ったジョッキを、アスカが持っているオレンジジュースの入ったグラスにぶつけ終えると、勢いよく飲んでいく。
ゴクゴクと喉をビールが通り、体の中に流し込まれていった。
「ぷはあ」
(うっま)
三分の一ほど減ったジョッキをテーブルに置き、口元に付いた泡を拭う。
探索で疲れた体にビールが染みわたるようだった。
アスカもゴクゴクとオレンジジュースを飲んでいき、グラスをテーブルに置くと、俺と同じようにプハーと息を吐く。
「やっぱりオレンジジュースは果汁100パーセントに限るわね!」
前にオレンジジュースを出したところ、えらく気に入ったらしく、今回肉を買う時に一リットルのやつを二本買わされた。
(今回はだいぶ稼げたからいいんだけどな)
今回のダンジョン探索で稼げた額は、一万八千五百五十円。
二尾ノ狐の魔玉がかなりの高額で売れたのとゴブリンの魔玉やその他のアイテムもある程度の価格で買い取ってもらったので、ここ最近ではトップクラスの稼ぎを得ることができた。
これはアスカの助けなしでは成し得なかったことであり、とても感謝している。
「焼けたぞ」
ホットプレートの上に置いていた肉が煙を上げながら焼きあがる。
しっかりと火の通った肉を箸で掴むと、何枚かアスカの小皿へと入れていった。
「わあ~、美味しそうね」
精霊であるアスカは焼肉を食べるのは初めてらしく、キラキラとした瞳を焼けた肉へと向けていた。
(初めてなら、それも無理ないか)
食べたことのない美味しそうな食べ物。
心が躍らないわけがない。
「熱いうちに食べろよ」
いつまでも見ていそうだったので、一声かけた後、俺も自身の小皿に焼けた肉を乗せた。
俺はタレのついた肉を頬張り、肉とタレそれぞれの旨味絡めて味わうと、一気にビールで流し込む。
あまりの美味さと、久々に食べた焼肉に対する感動に涙が出そうだった。
(思えばここ最近は、インスタントや冷凍食品、惣菜ばっかだったな)
一人暮らしで自分で飯を作るのが面倒というか、技術は持っているものの、やる気が起きないほどに疲れていたりすることが多く、自炊することはほとんどなかった。
そういった食生活がダメというわけではないが、どうしても偏りがでてしまう。
(焼肉も偏りまくっている料理だが、まあ、いいか)
美味しいし。野菜は後で食べればいい。
俺とアスカは焼けた肉をドンドン口の中に放り込んでいく。
「このタンっていうの、美味しいわね」
サッと焼いたタンをレモン汁の入った小皿に付け、口へと入れるアスカ。
もう焼肉は慣れたようで、焼いて食べ手を一人でこなしている。
「確かにタンも美味いが、カルビとかロースも美味いぞ」
ダンジョンでも直接戦うことも多いからか、俺はカルビやロースなどの食べ応えのある部位を好んでいた。
そうして肉がある程度減ったところで、一旦焼くのを止める。
「焼肉って最高ね!」
小皿の上に残っていた肉を食べ終え、グラスに入ったオレンジジュースを飲みほしたアスカが言う。
「焼肉がお気に召したようで何よりだ」
俺も焼肉は好きだし、またしようと思う。
こうして楽しい焼肉パーティーの時間を過ごすのであった。
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