第十八話
(戦うのにも慣れてきたな)
本日、相手をするのは三度目となる二尾ノ狐を、一刀両断しながらそう思う。
最初こそ、その小さな体と速さに苦戦を強いられていたが、よく観察しながら戦ってみたところ、攻撃に一定のパターンがあることを発見した。
これは大体のモンスターに共通している点なのだが、それが二、三戦交えて、しっかりと認識できたのである。
(目も慣れたしな)
人は戦っていく内に、少しずつ目が慣れていく。
速さに対応できるようになってきたのは、それが理由だ。
ゴブリンとの戦闘では相手に何もさせずに一撃で終わらせていたので技のキレは上昇したが、目はあまり慣れていなかった。
これは二尾ノ狐と一度戦った後に解決していた。
『二尾ノ狐の魔玉ってパラライズスライムのものに比べると、だいぶ大きいわね』
倒された二尾ノ狐がいつも通り光の粒子となって消えると、探索者の生活費となる魔玉と二尾ノ狐のしっぽというアイテムが地面に残る。
俺が魔玉を手に取ると、近づいてきたアスカはそれをまじまじと見つめて、そう言った。
『そりゃあ、今までのモンスターの中で狩ったモンスターよりも遥かに厄介だからな』
二尾ノ狐が撃ってくるあの炎を顔にでも当てられたら、レベル76程度しかない俺は大惨事になる。
近接で戦う能力はヘル・ハウンドとは大きく差はなく、むしろ二尾ノ狐の方が劣っていると言えるが、遠距離の攻撃手段を持っている二尾の狐は戦う上で、その厄介さが数段上がるのだ。
最初に炎を放って様子を見てくる個体や初めに戦ったように自爆するようにして炎を当ててくるものなど、ヘル・ハウンドとは戦う際に気を付けなければならない点が違うため、戦う側はその分神経を使わなくてはならない。
そのためか、二尾ノ狐の魔玉はビー玉サイズよりも若干大きくなっていた。
(顔面を防護する装備もあるにはあるんだが、使い勝手がなぁ)
顔に怪我を負わないようにするための装備も普通に売られているのだが、それを付けると視界が狭くなりやすい上、固めすぎて動きが阻害されてしまうので、使わない者も多く、俺も使ったことはない。
(それにしても、意外といけるもんだな)
二尾ノ狐を三匹ほど狩った頃辺りから、狩りの効率はグンと上昇した。
それはアスカのサポートなく俺が動けるようになったからなのだが、とてつもなく強いモンスターではないものの、こうしてしっかりと狩れるようになったのは嬉しい。
刀は刃渡りが槍などよりも長いので、デカい相手に効かせやすいが、小さい相手にはむしろ槍の方が向いていたりする。
(あと二十匹ほど狩って、今日は終了か)
軽く刀を振り感覚を確かめた俺はアスカと共に、更なる狩りを行うため第五階層の奥へと向かうのであった。
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