第十六話
第二階層、第三階層ともに軽くモンスターを蹴散らしながら、どんどん先に進んでいく。
どちらの階層のモンスターもそこまで強くはないので、サクッと倒して先を目指していた。
『ここのモンスターはちょっと強いのよね』
そうして第三階層を無事踏破し、第四階層の安全地帯を歩いていた白のワンピース姿のアスカが言う。
この白のワンピースはは昨日のうちにネットで注文したもので、足は裸足のままだ。
少女に裸足のまま歩かせるとか、どんな鬼畜だ!と言われそうなものだが、精霊は地面から一センチ程度宙に浮いているらしく、裸足でも足が汚れないそうだ。
靴を履くよりも、裸足の方が好きだそうなので、好きにさせている。
『ちょっとだけだけどな』
前に探索した東京・第三十八ダンジョン第三階層を徘徊するモンスター、ヘル・ハウンドと強さ自体はあまり変わらない。
『どんなモンスターなの?』
『緑色の肌をした二足歩行の生物』
『それって、もしかして・・・て、来たわね。十メートル先の十字路、右側から来るわよ』
俺も十字路辺りに意識を集中させると、十右側から歩いてくる気配を感じ取れた。
(流石だな)
第四階層からはアスカにサポートを任していたのだが、気配察知ができると言っていただけはある。
俺も軽く気配は探っていたのだが、より早くモンスターを発見していた。
「ふう」
溜まった息を吐きだす。
戦意を徐々に高めつつ、それを感じさせないゆったりとした動きで十字路に向かって歩いていく。
緩慢な動きから強さがあまり感じられないかもしれないが、俺の体からは剣気が溢れてきて、体中を血液が激しく巡っていた。
(いた)
意識が敵の気配を正確に察知し、戦意が一層の高まりを見せる。
十字路の手前で止まると、既に鞘から抜いていた刀を大きく振り上げ、敵が来るタイミングを計っていた。
『今よ』
アスカの念話のタイミングとほぼ同時に、頭蓋が割れる音がした。
どさりと、第四階層を徘徊するモンスター、【ゴブリン】がくずおれる音が、ダンジョンの中で反響する。
『すご、一発ね』
ゴブリンが視界に映った瞬間、俺は振り上げていた刀を一気に下ろし、無防備な頭蓋をたたき割った。
単純な動作であるが、寸分の狂いもなく完璧なタイミングで放たれた一撃は、ゴブリンの上顎まで達している。
一刀のもと屠られたゴブリンの死体が、光の粒子となって消え、ビー玉サイズの魔玉を残す。
(強くなっているな)
技の精度が上がっているのが、明確に感じられた。
筋肉の連動、動きの流れと呼吸のタイミング、剣気と技のバランス、全てが今までのそれを上回っており、技をより高い次元へと昇華させていた。
(やはり、魔人との戦いが良かったか)
魔人との戦いで、剣技の質が一段階上がった気がする。
アスカのサポートありきだが、人型のモンスター相手であれば、それなりの相手であっても一対一で戦えるのではないだろうか。
『じゃあ、先に進むか』
俺は地面に落ちていた魔玉とゴブリンのドロップアイテムである綺麗な赤い石を拾うと、アスカと共に、第四階層の更に奥へと進んでいくのであった。
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