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プロローグ

 


 2098年、二十一世紀もあと少しで終わる。


 そんなことを考えながら、俺、澄原(すみばら)健一(けんいち)は午後三時に一つ目の仕事を終え、帰路に着いていた。


 今は電車で座りながらのんびりと読書をしているのだが、現代の電車は昔のように満員電車で、すし詰め状態になることはない。


 それは世界が、社会が大きく変化したことに起因していた。


(それもこれも全部ダンジョンのおかげ?なんだよな)


 2050年、世界中で無数の異空間へと繋がる扉が発生する現象が起きた。


 その異空間は【ダンジョン】と呼称され、内部には通常の生物とは全く違う構造を持った生物、【モンスター】が徘徊している。


 当初はその危険性からダンジョンの調査は軍などの精鋭部隊によって年に数回など僅かにしか行われていなかった。


 しかし、後に【大氾濫】と呼ばれるダンジョン外へのモンスターの氾濫が起きてからはモンスターの駆除を目的として積極的にダンジョンの中に軍隊を送るようになり、現在ではモンスターを狩ることを生業とする【探索者】という職業まで生まれていた。


 今ではメジャーな職業である探索者だが、当初は時代の変化の過程でAIやロボットに仕事を奪われた人々が、生活を送るために新たに作られたという側面を持っている。


 国は仕事がなくなった人に探索者として働いてもらうため、一定の装備品の支給やシステムを整え、探索者となる人々を支援した。


 2000年代前半とは異なり、会社での勤務は僅かな時間で、ダンジョンで探索者として生計を立てていくのが当然となっている。


(ダンジョン探索って言っても、今はだいぶ安全なんだけどな)


 ダンジョン産のモンスターの素材と現代技術を使った服は普通の刃物や弾丸を通さないほどに強力で、それが一般大衆にまで普及されるようになっている。


 当然、探索者が使う服などはもっと丈夫であり、旧式ではあるが二十一世紀初頭で使われたライフルの弾丸ですら威力を完璧に吸収し中の人間に一切ダメージを与えないほどであった。


 こういった衣類のほかに、武器、防具も支給され、更に怪我をした際の保険も手厚い。


(副業として探索者をしていると更に保険も手厚く、税も軽くなるしな)


 現在の探索者は比較的安全でそれなりに稼げるため、専業でやる者もいるにはいるが、専業でやるほどの探索者は危険度の高い狩場で探索を行うことが多いため、死亡率は副業として安全な場所で探索者をやっている者よりも高い。


 俺なんかも子供の頃は探索者一本で生きることを夢見て、いろいろと努力をしていたが、そこへと至る要素が欠けていて諦めざるを得ず、結局はこうして副業で探索者をやっている。


 探索者一本で生きるというのは、並みの人間では至ることのできない領域なので、仕方がないのだが。


(そろそろダンジョンの情報でも集めますか)


 俺は読書を切り上げ、スマホで今日の探索に必要な情報を取得していく。


 ダンジョンの混雑具合は日によって変わり、そうした情報もこうしたスマホで確認することができるのだ。


(東京・第三十八ダンジョンが今日は空いてるな)


 東京には五十三ものダンジョンが存在しており、俺は自宅に近い範囲でできるだけ空いているダンジョンに潜るようにしている。


 それぞれのダンジョンごとの難易度はそこまで変わらないし、近場でかつ空いているダンジョンで探索するのがベストだと、二十年ほど探索者をやっている俺は結論を出していた。


(今日の空き具合だったら、そこそこ狩れるかな)


 東京・第三十八ダンジョンは昔からよく潜っていたので、稼ぎ方やダンジョン探索のコツも熟知している。


 今回は稼げそうだなと、そんなことを考えているうちに下車駅に着いたらしい。


 俺はカバンを持つと少し浮かれた気分で、駅を降りていく。


(さて今日も、もうひと踏ん張りしますか)


 気合を入れ直すと力強い足取りで、住んでるマンションへと歩みを進めるのであった。



読んでいただき、ありがとうございます。

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