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玉子
とんでもない危険物がやってくる!
それは、小さな男の子の姿をしていた。
その手で大切に運ばれているものこそ・・・
特売の玉子、ワンパック88円!
お、落とさないで!
レジから、固唾を飲んで見守る。
あぁ、よたよたと危なかしい。
頑張って、あと少し、ほらもうちょい。
やった、ついにやり遂げたね!
「すっごく、良く頑張りました、偉かったね」
ああ、笑顔がまばゆい。
男の子は、とても嬉しそうに、声まで弾ませて。
「あのね、ぼく、おひとりさまなの!」
−第百八話−
ドラゴン。
その息吹は、生きとし生けるものを滅ぼすという。
赤い竜は火を。
青い竜は雷を。
黒い竜は強酸を。
そして、緑の竜は・・・
「玉子の特売で、お一人様、ワンパック限りなんだよ、ちょっと協力して」
「ねえ、そのことなんだけれど」
「ん、なに?」
「どうも特売日は、昨日だったみたいだよ」
「ちぃ、せっかく連れてきたっていうのに、君ってば、ちっとも役に立たないな」
「おいっ、こらっ!」
息をするように毒を吐く。




