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座敷童が小豆ご飯に飽きたと言っています。  作者: ヴぃc
番外編その2
93/93

イチジクの天ぷら

拙作をお読みいただき、ブックマーク、評価、感想、誤字脱字報告ありがとうございます。夏の疲れが蓄積してくる頃でしょうがどうぞご自愛ください。

 くそ暑い8月が終わったと思ったのに、9月も引き続き殺人的に暑い。それに輪をかけてウィルス危機の為、のりちゃんを気分転換にどこにも連れて行けない。のりちゃんのお腹の中には新しい命がスクスクと育っているから尚更慎重になる。大介もオロオロしながらのりちゃんの後ろを憑いて(そりゃあもう背後霊の様だヨ)回っているから更にのりちゃんは暑苦しそうだ。

 ボクはのりちゃんに嫌われたくないから、くっつきたいのをガマンして適度な距離を保っている。ボクはいい旦那さんだ(エア旦那とか言うなヨ)。

 お昼寝しちゃうのりちゃんは、夜行性になってしまい、ボク等が秘密の会談をしている時間も起きているからコッソリ暗躍することが難しくなってきた。そうは言っても、ボクはのりちゃんの幸せの為には全力投球をするんだ。

 そんな密会のカモフラージュは大介担当だ。大介にコントローラー持たせていたら、ゲームで夜更かしをしていると、のりちゃんは勘違いしてくれる。アクションゲームが苦手なのりちゃんは、基本イベント集合して狩りや討伐に行くゲームの時は別行動で、本を読んだり、編み物をしていたりする。のりちゃんのお腹はぽってり膨らんできていて、新しい家族の誕生を今か今かと皆で待ち望んでいる。だからこそ、この大事な時に、のりちゃんへ毛ほどの厄災さえも払いのける為に『チームわらし』は24時間体制でのりちゃんを警護している。

 今日は、そんなボク等に強力な助っ人を召還した。

 只今27時。のりちゃんのおばぁちゃんが輪廻転生をすると、ひと時のお別れを口にした時、ボクはしばらくの間立ち直れなかった。だって、おばぁちゃんが安心したらもっとのりちゃんが笑ってくれると思ったのに、ボクはのりちゃんを大泣きさせてしまった。もう二度とのりちゃんに悲しい思いをさせないんだ。と決意も新たに、のりちゃんの新しい家族を守る為に、アマビエを呼んだ。

 いなりの作った鳥居から音もなく現れたアマビエは、令和にその恰好!?とビビるような出で立ちだった。

 グレイの髪の毛に所々に細い青い筋が入りコテでゆる巻きした長い髪をひるがえし、肩と腹をむき出しの露出が多い服でくねくねと歩いてくる肘にイチジクをわんさか盛った場違いなカゴバックを下げていた。


「わらし、あ~し。超忙しいんだけど、呼びつけたからにはそれ相応の事して貰わないと割に合わないんだけど。」

「そんなに沢山のイチジクを持って来てどの口が言う。」


 ボクが答えるより先にかはくちゃんが、突っ込みを入れた。


「かはくは黙っていてよっっ。」


 キッとにらみつけるアマビエの目じりは不自然なくらいに跳ね上がったアイラインが引かれている。


「どうせ、その熟れていないイチジクの処分に困っているんでしょ。」


 かはくちゃんだったら、熟れる前にもいだイチジクだって甘くできそうなのに凄い塩対応だ。


「うるさいなぁ。このパンデミック中に熱中症まで重なって、あ~し引っ張りだこなのに、ギャラが熟れてないイチジクってどこのブラックだよ。もう踏んだり蹴ったりだから、呼ばれたついでに噂の、のり子さんにこのイチジクを何とかして貰おうと思ったってバチは当たらないでしょっっ。」

「のりこちゃんは、絶不調だからあんたが呼ばれたんだよ。そんな妊婦さんに鞭を打つような仕打ちは許せない。」


 今日のかはくちゃんはいつも以上に好戦的。かはくちゃんとアマビエって仲悪かったっけ?

 やいのやいの騒ぐ二人の声で、ソファーでウトウトしていたのりちゃんが目を覚ました。

 山盛りのイチジクを見て、大喜びしている。


「のりちゃん、そのイチジク甘くないらしいよ。」

「熟れてないイチジクは加熱すれば甘くなるよ。ジャムやコンポートもいいけど、天ぷらが食べたいなぁ。」 


 ニコニコとこんな明け方に天ぷらが食べたいと言うのりちゃんの方にグリンと首を向ける2人。モチロン、どんな味かボクも気になる。

 油を揚げるのは気持ち悪くなるかもしれないからなぁ、でも食べたいなぁとつぶやくのりちゃんにシュッとボクは手を挙げた。


「のりちゃん、ボク揚げ係やるよっっ。」

「それじゃぁ、私が衣付けるね。」


 にっこり笑ってくれたのりちゃんにボクは俄然やる気が出た。

 皮ごと縦4等分に切ったイチジクに、チーズ、シソ、生ハムをぐるりと巻いて爪楊枝で仮止め(天ぷら上級者は爪楊枝なしでもイケると思う)をしたら、コツの要らないてんぷら粉をお水でだまが無くなるまで溶いて衣を付ける。

 のりちゃんが衣を付けたイチジクをボクが揚げていく。どれも生で食べれる素材だから衣がさくっとしたらさっさと油をきる。

 いつの間にかボイスチャットしながらゲームをしていたはずのいなりや、チコちゃんも集合していた。

 誰でも失敗なくサクサクの衣で天ぷらが揚げられる魔法の粉を作ってくれた人、ノーベル賞ものだと思うマジでありがとう。

 明け方近くに、甘じょっぱいトロトロのイチジクの天ぷらをわいわい食べて解散となったダイニングテーブルには、アマビエのブロマイドが置いてあった。

 これだけ送ってもらえば良かったなと思いつつ、のりちゃんがニコニコしていたから結果オーライだよね。

アマビエの絵姿を持っていると、病魔退散になるそうです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です(^_^ゞ 遂にアマビエ登場。 今年になって知名度が急上昇の妖怪だから、例年になく忙しいのも頷けるってモノですよね(笑) [一言] 天ぷら粉を溶くときに炭酸水も入れると更に…
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