大根の葉ご飯
拙作をお読みいただき、ブックマーク、評価、感想ありがとうございます。大根の葉の行方まで年末にかければいいなぁなんて言っていましたが、2月も下旬に入ろうとしています。本を読んでいても気にはなっていたんですがやっとスッキリしました。本年もよろしくお願いいたします。
まだかまだかと待っていたがようやく良い感じに育った大根の葉っぱを収穫する日がやってきた。
どんより曇って冷え込む今日は、菜飯と豚汁なのだ。
珍しくわらしさまは、大介君と昨日からお出かけしているけれど、さっきLINEに19:00までには帰ると連絡が来ていたので豚汁は大鍋いっぱい作らねばならぬ。
大根、人参、玉ねぎ、ジャガイモ、サツマイモ、里芋、豚肉を切って本当ならコンニャク、油揚げは下ごしらえするところだけど、そのまま切っちゃう手抜き豚汁だ。だって材料切るだけで結構時間がかかるんだもの。刻んだ材料をだしパックと共に大鍋で煮る。ご飯は一升炊いているから炊きあがるまで菜飯ご飯はおあずけ。
ぐつぐつと材料に火が通るのを待っている間、キッチンに置いてある丸椅子に座って、先日百貨店にある美術館で買ってきた作品集を眺める。
7人の若手作家の絵が展示してあった会場で、オオトリに展示されていた『銅板画家』の入江 明日香さんの作品集だ。他の作家さんもそれぞれ個性的で良かったけど、入江さんの作品だけ群を抜いて1枚1枚の絵にストーリーが見えてくる独特の世界観だったのだ。
作品からの洪水のような情報量におぼれながら暫くその空間で自分も存在している幸せに浸っていた。
後ろ髪をひかれる思いで会場を出ると、他の作家さんよりも沢山のグッズが陳列されていた。あれもこれもと手に取りお土産にするなら、一筆箋とクリアファイルどちらがいいかなぁとキャーキャー騒いでいた私に大介君が
「のり子さんは好きな作家さんでも、相手の方が好きかわからないですよ?」
チクショウ正論だけど、私の友達だったら好きなはず。カハクちゃんや、チコちゃんも喜ぶはず。……でも稲荷様や、近所の田中のおばちゃんや、鈴木夫人はタンスの肥やしにしてしまうかもしれない。
泣く泣く厳選してお買い上げしてきたよ。
その代わり図録や画集は全部ゲットしたもんね。書籍は重たいから本来なら吟味に吟味を重ねるところだけど、大介君が居るからね。
そんな戦利品の画集を舐めるように眺めているうちにあっという間に豚汁の具に火が通った。卵をポトッと落とし卵にして固まってきたらお味噌を溶かして完成です。煮詰まっちゃうと美味しくないから火を止めてちょっと味見。ミャーミャー県の豚汁と言えば赤味噌なんだろうけど、うちはミックス味噌。玉ねぎの甘味とあいまって好きなんだよね。
さてさて、キッチン栽培した大根の葉と、蕪の葉を細かく刻みフライパンで炒め、ゴマ、鰹節、お醤油で味を調えて、後は二人が帰ってきてから混ぜれば今晩のご飯は完成です。
またもや画集を眺めていたら、勢いよくドアが開いて、
「のりちゃんただいま~。」
「ただいまです。」
二人が息切らしてリビングになだれ込んできた。
「のりちゃん、カリフラワーだよ。ブロッコリーと違って白いんだよ!」
両手にカリフラワーの入ったビニール袋を抱えたわらしさまが得意気に見せてくる。かわええなぁ。
「二人ともお帰りなさい。カリフラワーどうしたの?」
「埼玉の畑でボクが採って来たんだよ。」
「えっ?二人で埼玉まで行ってたの?」
「わらしさまのり子さんに早く教えてあげなくちゃ。」
「大介は黙ってろっっ。のりちゃんあのね、丸沼芸術の森に行ってきたんだよ。」
なんか聞いたことがある施設だなぁ。
「その続きはご飯食べながら聞こうかな。」
「うんっ。ボクもお手伝いする。」
早く話したくてソワソワしているわらしさまを尻目に炊きあがったご飯に先ほど炒めていた菜っ葉を混ぜ込む。お醤油の香りが食欲を誘うぜ。
その間大介君は何か布でくるまれたデカイ板を車から降ろしていた。
ダイニングテーブルに出来たご飯を運び終わったわらしさまが、誇らしげにその布を取り払って胸をはっている。
「……これ、入江 明日香の原画じゃない?」
「そうだよ。のりちゃん最近いつもその画集眺めていたからボク直談判して譲ってもらってきたんだ。ね?のりちゃん嬉しい?」
「めちゃくちゃ嬉しいっっ。」
3人で菜飯と、豚汁を食べつつ絵を鑑賞すると言う贅沢な夕飯になったのであった。
相変わらず、わらしさまは規格外な事をしてくれるね。明日は、カリフラワーを夕飯に出してあげよう。ブロッコリーが主流になって私もカリフラワーなんて調理しなくなったから、わらしさまの初めてのカリフラワーの夕飯だ。喜んでくれると嬉しいな。
実際丸沼芸術の森には常設されてません。悪しからず。




